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第二十八話 おじさん……

 バスは、駐車して止まった。

 僕の想像とは違って、建物がたくさんある場所でもなく、周りに緑の木々や、うまい空気のたくさんあるところに、そこそこでかいお土産屋さんが、あった。

 

 バスから生徒たちが蟻の行列みたいにどんどん降りていく。僕はいつも行列に割って入るのが嫌だから、自分よりも後ろの人が全員降りてから、バスを降りることにしている。今は僕が通路側の席なので、窓側の桜に「早く降りないの?」と言われたくないと、少し焦ってしまう。自分に対する自信のなさが、こういうところで、出てきてしまうことに、なんというか……ちょっぴり、悲しい。


「ねぇ、遥希?まだ降りないの?」

「えっ?」


 僕はそう言われた瞬間にビクッ!としてしまった。はぁ、なんと意気地のないことだ。そしてなんでこういうときに限って言って欲しくないことを言っちゃうんだ。


「あはは、もうちょっと座ってたいっていう感じ?」


 また、まただ。桜に対しても、偽の感情と笑顔を貼り付けて、接してしまう。本音で話せる人なんて、僕にはいるんだろうか。


「遥希、やめてよ。」


「えっ?何を?」

 僕、何か気に触ることいったかな?


「私の前では、本音で話してよ。私だって、色々苦労してるから、わかるの。遥希が少しでも座ってたいっていう思いは嘘だって。私は、もっと遥希に、楽になって、肩に力を入れずにいれる相手でありたいの、だから、やめて。」


 いつにも増して、桜の顔は、マジの顔をしていた。桜のそんな鋭い、人に願うような目は、見たことなかった。でも長いまつげや、潤った肌は、桜の言葉と共に、僕の記憶に焼きついた。


 そして、僕は小学校以来閉ざして、隠していた自分の一部に、気がついた。

 まるで、足りなかったたくさんのピースのうちの一つを、誰かにはめてもらった、そんな感覚だ。


「ありがとう、桜。僕はやっと、気がついたよ。」

「うん、良かった。」


 あぁ、なんだか高校きてから、閉ざしていたあの頃と違う、学びを得て、変わっていくことができている気がする。ありがとう、桜。


「おい、遥希、団体行動を乱すな、もうみんな買ってるぞ。それに遥希、お前一体何人彼女いんだよ。羨ましい、」


「ごめん、森セン。すぐ降りるよ。それと、今んとこ彼女は彩那(仮)一人だから、安心してくれ。」


 そうか、良かったな。本田。


「え、えぇ。まぁ」


「おいおい、もうそれって」


「ストーップ!先生、それ以上はアウトです。おじさんには。」


「お、おじさん…………」


 おー、おーっと桜さん。これはめちゃくちゃやりすぎな一撃。森センは、口から魂が抜けております。


「あ、先生、すみません。ちがうんです。これは、ええっとぉ…………」


「わかってはいるんだが、いざ言われるときついなー。もういいよ、本田、お前俺の科目の成績1な、いや、マイナスだ。」


「まぁまぁ森セン、もう降りようよ。僕が慰めてあげるから。」


「ありがとう、遥希ぃー」

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