第三話 成長
急に手を掴まれ、びっくりした僕が振り向くと夏姉ちゃんが真っ赤な顔をして目の前に立っていた。まるで星空に魔法でもかけられたかのように。
「もう少し遥くんと一緒にいたい!ちょっとだけ、ダメかな」
そんなことをそんな表情で言われて断れる奴はこの世のどこにもいないだろう。
「いいよ、座ろう」
そうして僕はベンチに座り、夏姉ちゃんと話し始めた。
「あのさ、遥くんってさ大きくなったよね。小学生くらいまではさ、結構やんちゃな男の子でよく怪我もして喧嘩もして、私がよく面倒を見ててさ。」
「そっだったね。懐かしいよ、夏姉ちゃんにはよくお世話になってた。」
「ところでさ、小学生の時に遥くんの初恋の相談に乗ったことあったじゃん」
「あの時私、寂しかったんだよ。どんな時も私が支えて大事にして、大好きだった、私の知っている遥くんが変わっていっちゃう気がして」
その時僕はハッとした。知らなかった、知ろうともしなかった。僕は一番近くでこんなにも僕を大事にしてくれていた人の、夏姉ちゃんの気持ちを考えれば良かった。
なんて僕は子供なんだろう。
「ねぇ遥くん、まだあの子のこと、好きなの?」
夏姉ちゃんが僕がずっと封印していた思いに触れた気がした。
「わかんない」
「じゃあ私のことは好き?」
「夏姉ちゃんのことは……好きだけど」
「遥くん、浮気者だね、初恋の子の事がまだ好きかもしれないのに私の事好きなんて」
「まぁいいんだけどね。」
「いやだって嘘は僕下手だからすぐバレちゃうし」
「あとなんで中学には来なかったの?」
僕はそれを聞かれた瞬間、具合が悪くなった。
「うぅ……答えたくない。でも理由は一つじゃない。」
「まぁいいけど、何か困ったら言ってね。私遥くん大好きだから。」
「なっ!」
その瞬間僕のポケットの中でスマホが鳴った。
そしたら夏姉ちゃんが走って家に帰っていった。
さっきの好きはどっちの好きなんだろ。
一方夏姉ちゃんの心はというと。
もう遥くん、気づいてよ。でもそこも可愛いー、その時後ろから声がした。
「待ってよ姉ちゃん」
「えぇ奏、ついてきてたの」
「うん!遥兄とのイチャイチャもバッチリ見てた。」
「お母さんに言ってやろー」
「もーう、奏ったらー」
その頃僕は電話に出た。
「よう!学校行ったんだって、遥ちゃん。」
その声の主は氷室樹、小学校時代の友達で、今は別の学校だが月に一回ほど会っている。まぁ簡単に言うと僕の幼馴染だ。
「てかなんで知ってんだよ。」
「彩那から聞いたんだよ、俺があいつに遥ちゃんの行ってる学校教えたからね」
えっ、てかじゃあ今日彩那が言ってたことってガチなんじゃ……
僕は少し体が冷えた気がした。
「んで電話の用件はなんだ」
「いや今度また会わないかなって思って、俺んちにこいよ。」
「いつ?」
「ニ週間後の日曜とか?」
「まぁその日でいいや、色々聞くことがあるから覚悟しろよ。」
「ひぃーこわ、んじゃあその日にな。じゃあねー」
「おい、まだ話は」
って、相変わらずマイペースな奴だ。
はぁ今日は色々なことがあった。
光り輝く星空を見ていたら、疲れも吹き飛んでしまいそうで、世の中や人の想いはこの星空よりも広いのかもしれない。そんなことすら思えてしまった。
あの学校に行かなかった日々がとても狭かったと振り返る。
その日は家に帰ってゆっくり眠った。
次の日の朝、僕は昨日貸してもらった奏の服を持って学校へ向かった。
僕が玄関から出て思ったことは自然に朝学校に通っていることだ。
以前は昼間に外なんてほとんど出なかったのに。
なぜだろう。この青空が、あの入道雲がこんなにも綺麗だなんて忘れていた。
学校に着くと翔が僕のところへ来た。
「遥希、やっと遥希が復帰したのを祝おうの会の日程が決まったんだ。」
「いつ?」
「今週の日曜だ。」
「何人ぐらいくるの?」
「10人くらいかな」
「おっけー、いくよ。」
こうして日曜日に行くことになったがこの会にまさかあいつがくるとはこの時の僕は思いもしなかった。
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