番外編 翔
中一の春、その日僕はいつも通り、好物である購買のあんぱんを買いに列に並んでいた。
「すみません、あんぱんとミルクティーください。」
「あいよ。350円ね」
あぁー僕であんぱん売り切れかー、とか思っていた。まさかこの購買での出会いが、将来の親友との出会いとも知らずに。
「いやあちゃー、売れちまったかぁ」
列の後ろから、そんな声が聞こえる。僕のことかな?
「君もあんぱん好きなの?」
僕はクラス一の陽キャになりそうなそいつに、そう声をかけた。
当時の僕は翔のことをただの陽キャだとしか思ってなくて、そんなに僕にとって大事な親友になるなんて思ってもいなかった。
「いや、そうなんだけど。ごめんね、聞こえちゃったか。」
半分食べない?屋上で。
「いいのか?じゃあ代金は半分払うから食わしてくれ!」
「別に代金はいいよ、大したことないし」
陽キャに媚びでも売っておけばいいと思っていた。ただそれだけだった。
「いやそれじゃ俺の心が許さねぇ、ってもんだよ。一緒に食べよ」
こうして僕たちは屋上に上がった。
「そういえばさ、俺たち同じクラスだったのに全然喋れてなかったよな。」
分けたパンの片方を受け取りながら、翔はいった。
「そうだね」
「なぁ橘くんってコミュ力あるでしょ。俺がみたらわかるんだよ。なんでコミュ力高いのに友達増やさないの?友達って多ければ多いほど楽しいよ」
それを聞いて、やっぱりただの陽キャだなと思った。別に僕は陽キャは嫌いでも好きでもない。どうでもいい。
「別にたくさん友達作ったら作ったで、後でめんどくさいし。数人仲のいい親友がいれば、僕はいいかな」
「じゃあ遥希くん。君小学校の時に何かトラブルあったでしょ。俺だからわかる」
僕は翔の口からその言葉を聞いて、ハッとした。なんでお前が僕の過去について知っているんだよ。
「なんでわかるの?」
翔から僕への呼び名が名前呼びになったことも気にせず、聞いた。
「ぼくも、僕も同じだからさ。ちょっと前の僕と、遥希は同じ目をしている」
こいつは、危険だ、とも思ったが、賭けてみようとも思った。翔に。それから僕は自分の小学校での隼人とのトラブルや、彩那との恋愛のことを全て話した。翔は真剣に聞いてくれた。
「そうか、じゃあ僕の話も聞いてくれるかな」
「僕は昔は、こんなに積極的な性格じゃなかったんだよ。見た目も違った。そんなある日に数少ない友達だと思っていたやつが、僕の悪口を言っていたのを聞いてね。すごく悲しくなったんだ。それが悔しくて、イメチェンしたらモテたから、そいつの好きな人を彼女にした。まぁ別れたけどね。」
そうだったんだ、形は違えど、翔は同じ思いを背負っていることを知った。だから親友になることにした。
「翔、僕と親友になってよ!」
「おう、遥希!」
これが俺と遥希の、初めての出会い。ここから遊びに行ったり他にも一緒に過ごしたりして、仲良くなって今に繋がる。




