第十五話 幸せ
「なぁそういえばさっきのババ抜き結局誰が負けたんだ?」
「あぁあれか、負けたのはな、隼人だ。」
「じゃあ隼人の好きな人後で公開ってこと?」
「まぁそうなるだろうな、本人も約束は守るって言ってたし」
でも結局みんなの恋バナを聞くことになりそうだけど。
あれ?僕ってそういえばダンス踊れたっけ?
翔と会場に向かいながらふと、僕は思った。実はうちの学校では中学の方でダンスを教えるんだが、僕は中学時代に学校にあまりいっていない。ということはダンスも高校に入ってから授業でほんの少しやったくらいしかないのでほぼ未経験者、なので彩那さんはダンスをやったことがないかもしれないから、僕もそれを言い訳に断れる、ということなのだ!いやー先生もお人が悪いですなー。
だが、物事はそう上手くいかない。先生方がまず、生徒全体に向かって簡単にダンスの仕方を教えたので、できないという言い訳は聞かなくなった。そして第二に練習の時間を作られた。そこでダンスのできるやつが踊るのを見ることもできる。そして第三に、一番恐れていたことが起きたからだ。これで僕は詰みました。
「なぁ遥希!彩那さんは彼女とのことだが、一緒に踊らないのか?」
翔め、後でお仕置きだな、ったくみんなの前で僕が今一番言われたら困ることを大声で言いやがって。
「あはは、こういうのってやっぱ僕から言わないといけないのかなぁー」
「そりゃーそうだろ、ほら言ってこい!」
背中を押しながら翔は思っていた。ごめんな遥希、別にしたかったわけじゃないんだけどこれをしたら俺とあいつの仲直りを必ず成功させるって彩那さんが言うから。
「翔も優衣と踊れよー!」
すまない、優衣と仲直りしたらこの埋め合わせはするからー。
ということで無事に踊らなくてはいけない状況になってしまいましたとさ、うぅ。
「僕と踊っていただけませんか」
そう言ってひざをついて手を伸ばす。なんで僕がこんなオシャレなことしてんだろうと思う。そう思った瞬間に先生の言葉が頭に浮かんだ。
「俺もお前みたいに、昔は初心だったんだぜ。」
あの先生も昔はあんなにはっちゃけてなかったんだろうか。
そんなことを考えていたら誰の声かと思うほどに透き通った声が聞こえてきた。
「えぇ、喜んで」
僕の手を取って微笑むその人はとても彩那には見えなかった。
「でも踊れるの?遥希」
「ちょっとなら、ワルツでしょ、彩那は?」
「私は教養があるから、ワルツくらいできるわ!」
この人はやはりすごい高貴な家の人なのだろうか。
「でもまさか高校で再開して一月も経たずにこんなふうになるなんて思ってなかったな。小学校の頃には特に。」
「そうね、でも私は、ずっと昔から望んでいた気がするわ。遥希とこんなふうに踊ることができる日を迎えることを」
そうだったのか、こんなにも僕の人生は素晴らしいものだったのか。面倒なことばかりで、疲れることばかりで、嫌だ嫌だと思って狭い部屋にこもっていたのが嘘だったみたいに今夜はすごく楽しい。いつぶりだろう、こんな感覚になったのは、もう覚えてないほど遠くにあった出来事みたいだ。
だってほら、こんなにきらびやかで綺麗な星々が舞い散る星空の下、燃えるキャンプファイヤーの赤、その周りを初恋の人と踊っている。今夜だけは幸せに今までやこれからを忘れて、ただ目の前を見ていたい。この瞬間をずっと忘れないと目に焼き付けて、苦しい時は思い出そう。頑張ってみるか!
……一方その頃森先生は……
「ふっ、いい顔してんじゃねーか、学校に来なくなる直前とは顔色が違うな!青春してんじゃん。まじで俺にも彼女できねーかなー」
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