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第十話 思い出

「ついたー!空気うめー」

「いやカレー作りの時も美味かっただろ。カレーと空気」

「そうだな、そうだけど言い忘れてたなーって思って」

「ふ、そうか」

 僕たちは今やっと宿泊施設に着いた。施設の外見は地味だが、汚らしくはない。施設の周りには虫や木なんかの緑があり、普段暮らしてる都会とは違い、だいぶエンジョイできそうだ。

「生徒は各々の部屋に手持ちではない方の荷物を置いてきてください。10分後に集合場所に集まってください」

 先生にそう言われて、僕は翔と一緒に部屋にむかう。

「そういえば僕って翔以外知らないやつなんだっけ?」

「まぁそうだね、大丈夫だって!」

「はぁ我が親友は病み上がりの親友になんて仕打ちを……」

「それはごめんって、でも大丈夫!遥希コミュ強だし、俺もいるし。高校入学組に生徒会選挙の時に俺に票を入れてもらわないといけないからさ、手伝ってくれよ、友達作り」

 翔はたまに、策略をすごいめぐらせている。すごいよな、翔は。

 部屋に着くと、高校入学組の三人がいた。

「よう!翔」

「おっす!隼人」

「えっと隣の子の名前は確か……そうだ!思い出した!橘遥希くんだよね」

「そうだよ、えっと、みんなで自己紹介する?」

「まぁでも集合場所に行かないといけないし、次の部屋で会ったときか食事の時はどうかな?」

「じゃあそうしようぜ」

 ということで僕たちは集合場所に向かった。

 

「全員クラスごとに整列してください」

 僕たちが合図で整列すると主任の先生が前に立って話し始めた。

「えぇー今日、つまり1日目の予定を今から説明します」

「まずこれから私たちは、バスに乗って旧箱根港まで行きます。そこから生徒の皆さんは少し歩いて箱根関所まで行ってもらいます。芦ノ湖の景色は綺麗なので、ぜひ堪能してください。班行動はカレー作りの時の班でお願いします。何かあったらスマホで先生に連絡してください」

「箱根関所に着いたら見学、参拝をしてもらい、バスに乗って帰ってきてもらいます。そのあとは入浴、食事、レクリエーション、キャンプファイヤーなどをします。ではみなさんバスに移動してください」

 相変わらずこの人は説明が簡潔だなと思った。几帳面で頭はいいんだが。

 

「スゲー!絵でも描きたくなっちゃうなぁ」

 バスから見える景色も綺麗だったが、バスを降りた瞬間、もっと綺麗な景色だったので、思わず声が出てしまった。空を写す美しい芦ノ湖の湖面、周りに見える豊かな緑に包まれた山々、天気がめちゃくちゃいいわけでもないので、さすがに富士山は見えなかったが、まさに絶景であった。平日なのに人が多いのも納得である。

「遥希ったらはしゃぎすぎよ」

「そうだな」

「ちなみに時間帯や天気によって湖面の色が変わるんだぜ」

「へー翔物知りだなー」

「それほどでもないぜ、じゃあ班行動開始だな!」

 翔の言葉でクラスのみんなが各々の班に散り始めた。やっぱり翔の影響力はすごいな。

 僕たちの班も集まっていざ歩き出した時に学年で一人二人くらいはやりそうなことが起きた。

「いたっ」

「彩那、大丈夫か?」

 そう、この時からおそらく、僕のラブコメは始まってたんだと今思う。この時の僕は思っていた。

 こんな状況で足挫いて歩けなかった時、僕がラブコメの主人公だったらおぶったりするんだろうなぁ、と

 ただそうなることは僕以外わかっていたのだろう。

「大丈夫、歩け……ないかも」

「でも困ったなぁ先生もいないし、電話するか、誰かがおぶる、あぁそうだ、ここには彩那さんの彼氏殿がいるではあーりませんか」

「なんてわざとらしい演技だ、翔くんには大根役者という称号をあげよう、なーんてまぁ僕は彼氏だからね。きちんとおんぶしますよ」

「それでこそかけるだぜ!」

「グッド!じゃねーんだよ」

「まぁここは若いお二人に任せましてー、我々三人は先に行くとしますか。よっご両人!熱いよ、熱いよ」

「覚えてろよ、翔」

「ちょっと翔ー私はそんなに年齢言ってないんですけどー」

「まぁ細かいことは気にしない気にしない」

「じゃあ後でね、彩那ちゃん。遥希さん、彩那ちゃんをよろしくね!」

 と言って三人ともいなくなってしまった。

「まったく、彩那、あいつらひどいよな。まぁ乗れよ」

「あ、ありがとう」

 ちょっと照れている顔が可愛かった。

「よいしょっと」

 長い間家にこもっていたせいか、少しきつかった。

「でも、本当にいいの?人の目もあるし」

「それは言わないで欲しかった」

「ご、ごめんあと私重いし」

「ぜーんぜん重くない、軽い軽い!」

「遥希って優しいよね、昔からそうだった」

「彩那ぐらいだよ、僕のこと優しいとか言ってくれるのは」

「みんな口に出してないだけだよ」

「そうなのかなー、自分のこと僕はどうしようもないやつだと思っているけど、自分のこと優しいとか思ったことないや」

「そんなことないよ、たとえ遥希がそう思っていても自然とみんな遥希の周りに集まってくるじゃん、遥希友達たくさんいるでしょ。それが証拠」

 僕はそう言われた瞬間、ハッとした。自分の知らなかった自分に気づいた気がした。思えば昔から彩那は人を見る目があった気がする。僕も話すたびに、新しい自分を見つけられている気がする。これからもそうなのかな。


 そんなことを考えていたら目が塞がれた。何が起きた?

「だーれだ?」

「危ないよ、彩那」

「せいかーい」

「遥希ってほっぺぷにぷにしてるねー」

「何してんだよ、やめてくれよー」

 この人は人格がいくつかあるんだろうか、普段のこの人とは全然違う、めちゃくちゃかわいい。いつもこんなだったらいいのになー。そうこうしていたら関所の集合場所に着いた。


「おーい、橘大丈夫か」

「はい、翔に置いていかれましたが、足を挫いた彼女をおぶって歩くことくらいできました」

「何言ってんだ、新田は先生に教えてくれたんだぞ。京極さん、足は大丈夫ですか」

「遥希そっと下ろして」

「わかった」

「あぁおぶってもらっていたので治ったみたいです」

「そうか、そうかよかった。怪我があったらどうしようかと思ったよ」

 なんで先生はこんなに気を使うんだ?ていうか治るタイミングバッチリすぎだろ、本当に怪我してたのか。いや、疑うのは良くないか。そこに翔が合流した。

「おーい、遥希ー」



読んでくださりありがとうございます。

十話まで来ました。総PV570いきました。ありがとうございます!

応援よろしくお願いします。

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