第一話 復帰
世間は学校に行かないことをどう思うだろうか。
僕、橘遥希は中学時代、あまり学校に行っていなかった経験がある。
だから僕は人に特に害がないから不登校に問題はないと思う。
でも咲野先生に色々取り計らってもらったり、
夏姉ちゃんや樹に相談したりして高校には行くことにした。
「いってきまーす」
入学式の朝、家のドアを開けた瞬間
長らく続いたモノクロの世界に色が戻った。
今までは夜にジャージを着て公園でジョギングをした後コンビニで週刊誌とカフェオレを買って帰るくらいしか外に出なかったので目に映る色はいつもモノクロだったのだ。
中学校時代を思い出しながら歩く通学路はすごく色鮮やかに思えた。
夜に見た時はなにも心に響かなかった景色、川沿いの桜並木のピンク、雲ひとつない青い空、空から感じる熱と日差し。
中学校の入学式の時は母と、小学校の入学式の時は両親とこの道を歩いたんだよな。
その時その時の心配や緊張など様々な想いと大きくなった背が、僕の歴史が動いていっていることを教えてくれる。
「おーい、遥く〜ん!」
「夏姉ちゃん!?」
「遥くん、夏姉ちゃんじゃなくて夏先輩でしょ!学校に私と同じ苗字の人たくさんいるから、みんな私のことは夏って呼ぶの!」
この人なつっこい感じの可愛い人は、僕の一つ年上の幼馴染で姉のような存在だ。名前は佐藤夏、ちなみに普段はコンタクトをしていて、メガネをかけた姿もまた可愛い。
「あーそうか、忘れてた。でもなんで夏姉、じゃないや夏先輩ここにいるの?今日入学式だから僕の学年しかいないはずだよね?」
「もう、遥くんには前言ったじゃん。私生徒会長だから入学式の時挨拶するしその時会えるねって、ひどいよ遥くん」
「ごめん忘れてた。そういえば言ってたね」
「何その反応、お姉ちゃん泣いちゃうよ!」
「ごめんなさい!」
「まぁ謝ればいいでしょう!許してあげます、あっ!それよりのんびりしてると遅刻しちゃうよ、はやく学校行こう」
夏姉ちゃんがそう言って僕の手を引いて走り出した。
学校の近くまで行くと人が結構いた。夏姉ちゃんは校門の前まで行くと話し始めた。
「私先生と打ち合わせあるから、遥くんはアリーナ行って席座ってて」
「わかった。」
席に着くとまわりには高校入学組ばかりで話せる人がいなかった。
アナウンスが流れた。
「これより第49回入学式を始めます。」
入学式が始まった。
校長先生の話長そうだから嫌だなと思いつつ
どこか懐かしい気持ちになってきた。
夏姉ちゃんが話し始めた。
やたら僕にアイコンタクトしてきた。
そんなこともあり、入学式が終わって僕は一人で帰宅した。
夕食の時、父さんに今日のことを話した。
「入学式よかったよ」
「そうか、それは良かった」
「明日の始業式も行くよ」
「無理するなよ」
「うん」
何気ない会話だったけど今日は良かったな。
その夜はぐっすり眠れた。
始業式の朝、今日は外に出たら翔がいた。
「遥希、また学校に来てくれるんだな、ありがとう」
「おっ、おう」
この子の名前は新田翔、僕の中学時代からの親友で中学サッカー部元キャプテン、そして中等部元生徒会副会長だ、生徒の間でも人気で彼女がいる。
僕たちは歩きながら話し始めた。
「なぁ俺たち同じクラスだといいな」
「そうだね、僕も同じクラスがいい!」
「そうだ!遥希がせっかく学校復帰したんだから、せっかくなら集められるだけの友達と高校入学組も集めて、遥希の復帰祝いと高校入学組との親睦会も兼ねて俺んちでパーティしようぜ!」
「うん、翔がやってくれるって言うんなら断るわけにも行かないかな」
「じゃあ決まりだな!早速今週の日曜で、親にも言っとく。後メンバーも集めておく。主役が風邪引くなよ!」
「わかった。体調整えておく。」
そんなことを話していたらあっという間に学校に着いた。
校門の前まで来て翔が独り言を言った。
「ちぇ、もう着いちゃったのかよせっかくの遥希との時間が」
そう言われるのも僕は嬉しく感じた。
「遥希!はやくアリーナ行こうぜ!」
「うん!」
僕の学校は始業式の時、アリーナの入り口でクラス名簿を配っている。
その名簿に僕の高校生活がかかっていると言っても過言ではない。
名簿をもらった時、僕が喜ぶのと同時に翔が叫んだ。
「よっしゃ!今年は遥希と一緒だな、最高だぜ!」
「うん!僕もすごい最高!」
名簿を握りしめてアリーナの中の椅子に座る。
すると左隣から聞き覚えのある声がした。
「遥希!久しぶり!私だよ、覚えてる?」
「桜!もちろん覚えてるよ!なにしろ僕の中学時代で一番仲の良かった女子だからね!」
この子の名前は本田桜、顔立ちもスタイルも良く、おまけに身長も高いので女子からも男子から人気である。でもなぜか彼氏はいないらしい。
中学の時の部活は女子バスケ部。
「えっへん!そんなに言われると照れますな〜」
「よう本田、よくも俺と遥希の時間を邪魔したな、でもまぁお前が遥希のことを好きなのに免じて許してやるよ、今年は同じクラスで良かったな」
「んなっ何言ってんのよ。男の子としてじゃなくて人として好きなだけだからね!同じクラスだったのは良かったけど」
「ふ〜ん、どうだか」
そこでアナウンスが流れた。
「もうすぐ始業式が始まるので生徒の皆さんは座ってください」
そのアナウンスが流れて2人が静かになった。
始業式が始まり、校長が挨拶して生徒会長が挨拶してその他色々あり、始業式が終わった。
その後は担任発表があった。
「1年3組の担任は、咲野先生です。」
咲と言いかけたところで歓声が上がった。
「やったー」
「最高ー」
とまぁ無理もないだろう、咲野先生人気だし、と思った。
「今年マジで最高だな、遥希!」
「やったわね、遥希!」
「そうだね、翔、桜!」
満面の笑みを浮かべた僕のクラスの生徒たちが教室へ向かう。
「遥希、席、隣だといいな!」
「そうだね。」
「そこ、移動中は静かにしてくださいね」
「はーいすいませーん」
階段を登っていった先に教室があった。
席に座ると先生が出席をとり始めた。
どんどん聞き覚えのある名前が呼ばれていく。
出席をとり終わるとまた先生が言った。
「ではみなさん、自己紹介をしてください。名前と好きなことや物と何か一言、言ってください。」
僕の番が回ってきた。
「橘遥希です。好きな物は購買のあんぱんです。中学の時あんまり学校行けてなかったんですけど高校は行くので仲良くしてください。一年間よろしくお願いします。」
僕の自己紹介が終わると翔とか中学の友達が他の人の時よりめちゃくちゃ拍手してきた。ちょっと照れくさかった。
僕の何人か後に翔が自己紹介していた。
「新田翔です。好きなことはサッカーです。最近嬉しかったことは親友の遥希と会えたことです。一年間よろしくお願いします。」
みんなが微笑んで僕の方を見る。
ちょっと顔が赤くなっちゃった。
僕って照れやすいのかな。
また何人か後に桜の番になった。
「本田桜です!好きなことはお菓子作りです。一年間よろしくお願いします。」
隣の席の桜にひっそりと言ってみた。
「へー桜ってお菓子作り好きなんだ。僕今知らなかったな。」
そしたらなんか桜の顔が赤くなった気がしたけど気のせいかな?
みんなの自己紹介が終わったところで一旦休み時間になった。
すると突然教室の入り口から僕を呼ぶ声がした。
「あのー、橘遥希くんっていますかー?」
振り返ると僕は目を疑った。
そこには僕が恋愛が怖くなった原因である初恋の好きな人がいたからである。
僕は思った。
えぇなんで中学にはいなかったのに、そうか高入生か、そう考えているときには、とっさにトイレに逃げようとした。
だが足が遅いのですぐに彩那に捕まってしまった。
「どうして逃げるの」
「逃げてなんかないよ」
「嘘でしょ」
嘘が顔にでるのを憎みたい。
「嘘だけどさ、なんでこの高校にいるわけ?」
「あなたについてきたのよ、」
「えぇ!?」
「なんてね。たまたま受かってきたとこが同じだったのよ」
「ふーん、じゃあなんで僕を探しにきたの?」
「名簿にあなたの名前があってもしかしたらって思ったからよ。」
「なるほど、これからどうするんですか。ずっと腕掴まれてても困るんですけど」
「挨拶しにきただけよ。お久しぶり、これからもよろしく」
「よっ、よろしくお願いします。」
「それじゃ」
そう言って去っていった。
その現場を見ていた夏姉、夏先輩がこっちにきて言った。
「あの女の子、誰?」
「あの子は夏先輩に前相談した初恋の人で」
「で、なんなの?」
「なんなのって?」
「だからあの子がなんでこの学校にいるのか聞いてんのよ」
「なんかたまたま受験してきたのがここだったんだって」
「ふ〜ん、ふふ〜ん、今日買い物付き合って」
「うんまぁいいけど」
「じゃあ決まりね。3時にスーパーにきて」
「わかった」
でもなんでスーパーなんだろう。
読んでいただきありがとうございます。
初投稿です。誤字など修正点がありましたら教えてください。
投稿頻度は一週間に数話投稿しようと思っています。
今後とも「恋愛拒否主義の僕、高校でなぜかヒロインに囲まれる」をよろしくお願いします。




