影の世界
◾転校初日は休み時間や昼休みは明智さんに校内を案内してもらった。一つだけ不審な事に気がついた。
「おかしい」
「おかいし?何が?」
「あぁーなんでもない!こっちの話!」
「そう、ここは食堂よ。結構な生徒が利用しているわ」
「そっ、そうなんだ(何故なんだ?この異様な妖力はバット)」
『なんでしょうクラウド様』
「(おかしすぎるでしょ。何故中はこんなに妖力充満してるの?)」
『そうですね。ですが、配下の者は不審な点は見つけておりません』
「(本当にどうなっての?この学園、あっバットこの二枚の認定書、調べてほしい)」
『承知しました』
◾明智さんにわからないように陰にいるバットに二枚の認定書渡した。その後も明智さんに連れられ案内されたものの妖力のよの字も見つからない上に幽霊もいない。こんな場所あり得なかった。
◾放課後になりクラウドは理事長室で理事長と合っていた。
「クラウド君、どうでしたか?」
「不可思議すぎて、何処から言ったらいいかわかりませんが、この校舎は勿論案内された施設や教室は異常です」
「異常と言うと?」
「妖力や、幽霊だらけでいつ上級の妖怪が産まれてもおかしくない所や、全く何も感じない場所がありすぎです」
「それの何がおかしいの?」
「本来、この学園の規模と、敷地面積なら少なくとも均等に妖力や幽霊なんかが確認できる筈、なのに場所的に散らばり過ぎてて何故こんな奇怪な事になってるのか、僕にはわかりません。だからこれからある妖怪に合ってきます」
「妖怪ですか」
「はい、人で言うなら探偵や記者に近いですね。そう言う情報にたけた知り合いの妖怪がいるんです。そいつに聞けば何かわかるかもしれません」
「そうですか、よろしくお願いします」
「はい任せて下さい」
◾その日の夕日が沈んで直ぐ、クラウドの肉体は人から妖怪へと変わった。家の地下室で妖力を込めてある呪文を唱える。すると地下室に扉が現れ、その扉を潜ると、そこは大阪の難波の用な町並みが目に飛び込んできた。少し違うのは幽霊や妖怪しかいない点で特におかしな場所ではない。
◾ここは幽霊と妖怪だけが住み、陰陽師やエクソシスト達は影の世界と呼んでいる。主に幽霊も妖怪も影の世界から人の居る世界に行き、悪さや恐れられたりしていた。
◾暫く歩いて、駅の地下階段の用な場所から地下へ降りていく。
「おや、これは珍しいお客さんだ」
◾突然目の前にカラス羽が舞ったかと思うと、杖をついた老婆が現れた。
「久しぶりだな、烏天狗の婆さん」
「そうですね。貴方が父であるロードを越える前でしたね。最後に会ったのは、してなに用で?」
「あんたならわかるだろ。マスター、悟に会いに来た。ここを通してくれ、代償は、妖怪通貨で五千でどうだ?」
「ヒッヒッヒッ、ロードの奴と違い羽振りがいいですね。良いでしょう。前払いでお願いしますよ」
「わかってる」
◾懐から水晶をだして、そこに少し妖力を流すと水晶から老婆に何かが流れていく。五分程で流れは止まった。
「確かに、五千受け取りました。ではごゆっくり」
◾老婆はその場から消え、およそ地下とは思えない高層ビルや建物が立ち並ぶ一本道が姿を表した。
◾歩いて三件目の建物の中に入った。
◾人で言うとそこばバーで、カウンターにはバーテンダーの服をきた男がたっていた。クラウドは席に座り注文をする。
「ミルクオレ、カフェインありで」
「おい、ガキ、ここは御前が来る場所じゃねぇーぞ」
◾男がキレてクラウドに食って掛かったが、鼻で笑い"妖怪は数年会ってないと、これだから困る"そう言うと男は何かを思い出した用で態度が一変する。
「御前、クラウドか?」
「思い出してくれたな、マスター、いや悟」
「まさか、御前が来るなんてな!こりゃいい、酒だ!!恵酒持ってこい!」
◾隣にいた女妖怪にそう言うと女妖怪は慌てて酒を準備し出した。
「悟、俺は妖怪なら成人年齢で御前より若いが、人で言うなら未成年だ。酒は飲めんぞ」
「いいさ!俺が飲む、御前が来た祝いだ!」
「なんの祝いだよ。変わらないなお前は」
「御前はすっかり見違えたな、わからなかったぞ」
「だろうな、妖怪は容姿と妖力は成長はしないが、俺は違うからな」
「で、何しに来たんだクラウド、御前さんがこっちに来るなんて珍しいじゃねぇーか」
「悟、言わなくても能力でわかるだろ。察しろ」
◾悟は酒を飲みクラウドを見つめ、再度酒を飲み続けた。
「なるほどな、悪いなクラウド、俺は御前さんの要望には答えられそうにない」
「何?情報屋のあんたが何故だ?」
「それはな、あんたが通いだした場所は今此方じゃ、地獄門って言われる場所なんだ」
「物騒な名だな、どういう意味だ?」
「なんでも、地獄門に行くと、妖怪は必ず死に地獄へ送られるらしい」
「本当か?」
「地獄へ送られるかどうかは不明だが、妖怪が死ぬのは事実だ。俺も地獄門の情報は今言った妖怪が死ぬ位しかわからん」
「そうか、あんたがわからないとなると困ったな、どうするか」
◾クラウドが酒と同じタイミングで出されたミルクオレを飲み考えていると、悟が一枚の名刺をコップの横に置いた。
「これは?」
「覚えてるか、これはサリーの名刺だ」
◾サリー、このバーで働いてサキュバスで子供頃ここに来ると直ぐに抱きついてきた女である。
「覚えるが、このサリーの名刺がどうした?」
「行って見るといい。サリーのやつなら地獄門の情報を持ってるかも知れないぜ」
「!?」
◾話を詳しく聞くと、何年か前にここを辞め独自で情報屋をしつつ、この名刺のキャバクラで副業として働いているんだそうだ。
「アイツが情報屋にねぇ~信憑性はあるのか?」
「ある、サリーは今俺を越えた情報屋だ」
「悟がそこまで言うなんてな」
◾名刺の裏を見ると、顔が厳しくなる。
「悟、ここって…」
「御前さんが苦手な場所かもな、行くかいかないかは御前さんが決めな」
◾ミルクオレを飲み干した。
「はぁー、仕方がない。行ってみるよ。じゃあまた機会があれば来るわ」
「あぁまたな」
◾名刺の裏に書かれた場所、それは幽霊と妖怪の中でも美貌が優れた者だけが滞在、勤務する事が許される。人で言うなは一種の風俗街に近い場所だ。特徴は影の世界でも女しか住んでない数少ない場所でもある。それ故に、通り掛かるだけで中級、下級妖怪なら誘惑され店に入り逃れられず、金が尽きるまで放してはくれない。最悪命を落とすのだ。
◾店を出て、一本道を更に奥へと進むと、店や建物の色合いが徐々に変わってくる。フローラルな香水の匂いもしてくる。
「相変わらず、ここは臭うな、それに」
◾女妖怪達が鼻を伸ばした男妖怪を次々と店に引き連れて入っていくのが見える。
「御愁傷様、さて、サリーの名刺の店はと」
◾名刺を見ながら店を探していると、誰かとぶつかり謝るも絡まれる。
「おいおい、そっちからぶつかってきていい度胸じゃねぇ~か」
「あーこれだから、此処はめんどくせぇー」
◾普通に歩いているとなると上級の妖怪か、クラウドと同じ位の妖力を持っている者だった。そして例外なく、此処に来るような妖怪は柄が特に悪い。
◾見た目から鬼の妖怪のようだ。クラウドから漂う微かな人の匂いで、半妖だと言うのがバレ、妖怪達の間で侮辱の意味で生なりと呼ばれていた。
「生なりがこんな場所でなんよ用だ!とっとと失せな!」
「用が住んだらな、じゃあな」
「待て!!」
「なんだよ」
「俺様は失せろと言ったんだぞ!!なめてるのか貴様!!」
「頭痛いわ。鬼は妖力がある分、自分の評価が高すぎる。だから半妖を必ず舐めて掛かる。少しは酒呑童子を見習って欲しいもんだ」
「何言ってやがる!!死ね!!生なり風情が!!」
◾その鬼と配下らしい鬼達とクラウドの乱闘が始まった。
◾それを和式の旅館の二階から見ていた女妖怪達が賭けを初めた。何か騒がしいから外が見える女妖怪達が賭けをしてる部屋に女妖怪が入ってくる。
「どうしたの皆、なんか騒がしいけど?」
「サリー、なんか、百鬼組の鬼達と生なりが乱闘始めたのよ!!」
「百鬼組の鬼と生なりが?」
◾状況が分からず、窓に近づき下を見た。その瞬間心が温かくなる感じがした。笑みを浮かべ、今のレートを聞き、全員が一文無しになるように生なりの方に賭けた。
「いいのサリーそんなに賭けて?」
「いいわよ。百鬼組の連中、いや、下いる刃牙がいても、あの人には勝てないから」
「知り合いなの?」
「まぁあね」
「面白いじゃないか、私も生なりに賭けさせて貰おうかね」
◾すると、尻尾が九本の狐の妖怪が部屋に入ってきた。
『女将さん!!』
◾女妖怪が弁明しようとする。
「いいよ。こんな場所だ。道楽は少ないだろう。サリー。あの生なり、勝てるんだろうね?」
「安心していいよ。女将さん。鬼であの人に勝てるのは、酒を飲んだ酒呑童子だけ、いいえ、酒呑童子でも勝てないですから、損はさせないよ!」
「ふーん。サリーがそこまで言うとは、どうやら面白い坊やの用だ」
◾乱闘が始まり三分、悟の店を出て四十分は経過している。徐々に妖力が高くなるのを実感していた。全ての攻撃を交わし、今の妖力で鬼達が死なず、気絶もしくは膝をつく加減を考え、実行に移す。先ずは一体、建物にぶつかり気絶、服が破れ腹ににえた後が残る。
「やっば、加減したのに強すぎるのか、ならもう少し弱めに」
◾二体、三体、四体、五体、次々と一発で気絶させていき、絡んできた鬼だけが残った。
「後はお前だけか」
「お前、何者だ!?」
「お前の言った通り生なりだが?」
「ふざけやがって!!」
◾鬼は背の倍は有りそうな刀を妖力で作り出した。
「その刀…なるほど、お前ら百鬼の配下か、道理で荒っぽいと思った」
「死ねぇぇーー」
◾交わす素振りは見せず、拳を作り妖力を込めて勝負した。振り下ろされた刀は、拳とぶっかった瞬間砕け散り、鬼の顔面をとらえ高く上に殴り飛ばした。降ってきた鬼は意識はあるが、立てる状態ではなかった。
◾二階で見ていた女妖怪達は驚きを隠せなかった。
〖嘘〗
「勝負ありだね。皆ごめんねぇ~。これ全部貰ってくねぇ~、女将さんの取り分は、皆の給料から引いてくれる?」
「構わないよ。行ってきな、行きたいんだろ?」
「うん。じゃあ行ってきます~!」
◾窓からクラウドに向けてサリーが飛び降りる。
「こんな…この俺様が」
「流石鬼だ、頑丈なこって、でも動けないだろ。ん?」
「ク、ラ、ウ、ドぉ~!!」
◾降ってきたサリーをギリギリの所で交わし、サリーは宙で一回転して着地した。
「信じられない!!こんな美少女のハグを避けるなんて!!」
「お前ねぇー相変わらずだな、それに、自分で美少女言うな」
「だって事実だも~ん」
◾倒れてる鬼はサリーを知ってるみたいだ。
「サリー、お前」
「久しぶりね、刃牙、あんたもとんでもない人に喧嘩を売ったもんね」
「その…生なりと…知り合いか?」
「まぁね。生きてた事を感謝するのね。それと言っておくけど、ボスの百鬼にこの事を言っても怒られるのはあんただから、覚えておきなさい」
「どういう意味だ?」
「あんたも知ってる筈よ。ある妖怪と安倍晴明の末永の陰陽師との間に生まれた。妖怪の私達からしたら禁断の生なりの事を……」
「!?まさか、その男は!?」
「そう、この人、クラウドこそ、その禁断の生なり、母は安倍晴明の血を濃く受け継いだ天才陰陽師、父は吸血鬼にして、ヴァンパイヤの王唯一伯爵を名乗る事を許された、初代ヴァンパイヤ伯爵、ロード◯ジーク◯ナイトの実の息子、ロード◯クラウド◯安倍、現在妖怪の間でも三本の指に入る実力者よ」
「この男が……百鬼様が、絶対に敵にするなと……言っていた……生なりだとは……」
「当然よね。百鬼でもクラウドに勝てないしね。と言うか、百鬼はクラウドに負けてるし、正式な殺しあいでね」
「あの…百鬼様が…」
「嘘だと思うなら、幹部連中にでも聞いてみたら?百鬼に直接聞くとしたら、命を落とす覚悟するのね。最悪、クラウドの名前を出した瞬間殺されるか、良くて半殺しになるでしょうね。幹部連中ならまだ優しいから首を締められる程度で住むと思うわよ」
「百鬼の奴、俺との闘いトラウマにでもなってるのか?」
「トラウマって言うか、百鬼はプライドが高いから、クラウドのとの闘いが忘れられないのよ。百鬼の全力に対して、クラウドは半分も力出してなかったでしょ」
「そうだな、当時はまだ完璧に妖力の制御が出来なかったからな、加減はしたさ、いくら妖怪同士の闘いが殺し合いだとしてもな」
「それが鬼でも力をもち自信のあった百鬼に忘れられない傷をおわせたのよ。だから百鬼はクラウドに負けてから、ヴァンパイア一族に絶対手を出すなって決めたらしいよ」
「なるほどな、にしも酒呑童子と違って百鬼は配下の育成には向かないな、配下に俺の事を伝えてないとわな」
「酒呑童子やぬらりひょんと違って百鬼は頭は悪いし、頭としては統率力はあっても、自分が負けたのを知られたくないのよ。それも妖怪相手じゃなく、生なりとなったら尚更ね。だから存在は伝えても名前は伝えてないよの。私からすれば全生なりに手を出すなって言った方がいい気もするけどね。それにクラウドの匂いは兎も角、見た目から生なりだと判別は難しいから、最低でも三百年は生きて人間に詳しくないとね」
「妖怪は長生きな分経験を積んでないと判別は無理か…只でさえ俺は夜になるにつれ妖怪に近づくが、今の俺はまだ人間に近いからか」
「そうね。それにクラウドの顔を知ってる妖怪は少ないしね。此方に殆んど来ないから、噂や嘘だと思ってる妖怪だらけでしょうね。にしもクラウドなんでここに来たの?貴方の性格上、ここに来るなんて想像つかないんだけど?」
「そうだな、俺は御前に会いに来た」
「え!?まさかクラウド私を買いに来たの!?ダメよ~私はここのトップアイドルだも~、そんなことしたらクラウドがぁ~でも、クラウドになら~」
◾一人で体をクネクネ動かしながら顔を赤らめ妄想がエスカレートしていく、それを止める為に頭に一撃いれる。
「イッタ~イ」
「おい、勘違いするな、俺はマスターに聞いて御前を探しに来たんだ」
「マスター?。悟さんから何聞いたの?」
「俺は今地獄門の情報が欲しい、この意味わかるか?」
「!?なるほどね。ここじゃなんだから、店に入りましょ。女将さーん」
◾大きく声を上げると女将が顔を見せた。
「なんだい?」
「V.I.P.ルーム使いたいんだけどぉー、部屋代は私持ちでいいからー準備させてぇー」
「わかったよ。御前達、準備しな」
〖はっはい!!〗
「V.I.P.ルーム?それにあの妖怪は九尾か?」
「良くわかったね。そう女将さんは九尾の狐で事実上、この地域じゃクラウド以上の権力と力を持ってる。闘うならクラウドが勝つとは思うけど、いい勝負は出来るかもね」