【番外編】唐紅に水くくるとは
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
本当は絞り込めたんじゃない?
幻想奇譚番外編です。
神社に巡礼をするようになってから、百人一首にも興味を持つようになった。別に競技カルタを行いたい訳ではなく、神社で祀られている方の歌がそれに収録されているからなのだが。だからこそ、百人一首に関わるものだと察すると、ついつい目を奪われてしまう。
日本屋敷の一角。時を経て古木と化した廊下を渡っていると、あるものを発見した。
材質はこの廊下の様な古木。時代を経た木目が線を描いている。その上から平安貴族の男性と、その男性が読んだと思われる和歌が書かれている。
残念ながら、文字は掠れてしまっている上に、平安文字と思しき達筆さで、解読は不可能。それでもその傷までも味として残っていた。
私は描かれた平安貴族の男性を観察する。頭に緌、弓。これだけあればある程度の絞込みは可能である。百人一首に描かれた弓持ちは計八人。きっとその中の誰かだろう。
暫く眺めて、眺めて、けれどもやはり知識がないと解読は不可能で、諦めてその場を去ることにした。巡り合わせがあればきっとすぐに逢える。今はその時を待とう。
そうして庭先に出ると、真っ赤な赤が広がっていた。大地を鮮血に染め上げる彼岸花の群生。其れは紅葉を一面に散らしあげた池のように、何処までも広がっていた。
美しいと思う。彼岸に咲くゆえに、気味悪がられる花ではあるが、これに勝るのは、きっと真っ赤な紅葉ぐらいだろう。あぁ、御前達にも是非会いたい。
――千早ぶる 神代もきかず 龍田川 唐紅に水くくるとは
在原業平朝臣、貴方は龍田川をご覧になって読まれたそうですけれど、この真っ赤な彼岸花だって、負けず劣らずの光景ですよ。
そんな事を考えながら、私は歩いてきた廊下を一瞥した。
赤はやはり美しい。
神社巡りしていると、百人一首に興味を持つこともそれなりにあるんですよ。
収録された歌をお読みになった方々も、祀られている事が多いので。
在原業平朝臣、ご存知でしょうか?
平たく言うと、光源氏。平安のプレイボーイ。
顔よし、歌よし、めちゃモテ。
そんな方です。
その方の歌で有名どころが『千早ぶる 神代も聞かず 龍田川』なんですよ。ご存知の方も多いかと。
意味をサラッと言うと、
龍田川に紅葉が散って綺麗だなぁ。
という意味です。
でも目の前に広がる彼岸花の海だって、同じくらい赤くて綺麗だよ。
という話。
答えは明かしてませんが、絞り込めたんじゃない?
なんて思ってます。
紅葉関連で、手向山にも行ってみたいですね。
もう秋ですし。