妖精
ハッキリと悪とも善とも言えない存在。時には利益になる事をし、時には恐ろしく残酷な行動を起こす、理論が通じずとも、何とも神秘的で面白い存在が妖精です。
妖精伝説というのは、バッドエンドの確率もそれなりに高くはあるのですが、悪魔とは違い、ただ地獄に引きずむのではなく、わりと身近にいるマイペースな存在、という方がしっくりきます。
勿論、キリスト教と一緒に出てくる伝説では、最終的に聖者や修道僧に追い払われたり、諦めて帰ったりもするのですが、完全にしてやられる悪魔などとは違い、それらの伝説内の妖精は「ま、いいや」で諦める感がかなりします。また、悪魔とは違い、特にメリットが無くても手助けをする伝承や、小さな事でキレたりする等、どうにも憎めない立ち位置です。
カンタベリー物語(15世紀)の登場人物、「バースの女房」は、妖精やエルフ達が人の「愉快な仲間」だったアーサー王時代を懐かしく(羨ましく?)思い、聖なるキリスト教の影響で、彼らがいなくなってしまった事、そして自分の時代では誰も妖精を信じない事を嘆く、という描写があります。
しかし、この女房の話と違い、妖精の存在は中世時代広く信じられ、何なら現代も信じる人はいます。謎の隣人、それが妖精です。
イングランドではなくスコットランドですが、タム・リンという妖精の伝説がかなり有名で、ご存じの方もいると思います。妖精にふらふらついて行って、捕らわれた男が真実の愛()で戻って来る感じです。
13世紀のタム・リンの詩では、初めてタム・リンが妖精の女王を見かけ、思わず「天上の女王よ!」と叫びますが、妖精はそれは自分の名前では無い、自分は妖精の女王だ、と訂正する描写があります。
余談ですが、よく解らない悪い事が起きれば、取り合えず妖精、という考えもあります。アングロサクソン人が、説明の出来ない突然の激痛を「エルフショット」と呼んでいたところから解るに、妖精やエルフというのは、病気を広める存在だと考える人も多くいました。
え、なんで「エルフショット」?エルフ(妖精)に透明の矢で射られた、という考えが元です。日常で使いたい単語に入っていますが、誰も元ネタを解かってくれません。