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カニング・フォルク

書きたいことが少し増え、二章にはもう一話だけ加えます。また、一章に追記で二話割り込み投稿しました。「占星学」では追加で写真も入れました。興味があれば是非覗いて行って下さい。

最後に、最も身近にいた「魔法使い」についてです。



「占い」の話で名前だけ出した「カニング・フォルク」、別名ワイズマン/ウーマンと呼ばれる人たちは、呪術に関する仕事をしていた人たちです。専門は主に民間呪術ですが、中には「セレモニアル・マジック」という、グリモワール(魔術書)を通して学んだ、儀式を要した魔術を行使する人たちもいたようです。


仕事内容は主に、魔女に対する防衛呪術、犯人捜し、失せもの(や行方不明者)探し、宝探し、一般的な占い、治療や恋のおまじないなどです。基本的に、身近な問題の解決を優先とした「魔法使い」たちです。使う呪術は「魔法のジャンル」で紹介したもの全般ですが、まあそこはやはり個人差が出る部分でもあります。


え、でも駆使している「魔法」は魔女と同じじゃないの?という質問に関しては…いや、これは「反魔女」ですという答えがあります。ぶっちゃけて言えば、単純に信頼度の違いですが、一歩間違えればカニング・フォルクが魔女狩りの犠牲になることも勿論しばしばありますし、地元のカニング・フォルクが別地域では魔女扱いされることもあるにはあります。



中世から近世初期のブリテンでは、こういった民間呪術はかなり一般的でした。この「カニング・フォルク」がどれ程の割合を占めていたかは正確には解りませんが、一説ではどの時代でも、イングランドに数千人はいた、という主張があります。ファンタジーステレオタイプでは、こういう怪しげな人物は辺鄙なところで独特の小屋を持っていて、遠くから人が訪ねてくる…というのがありますが、実際は村や町で住んでいる人も多かったと言われます。まあ、じゃなきゃ不便ですもんね。また、カニング・フォルクの男女比は約2:1位だという考えもあります。しかし、この職は女性の権利が非常に制限されていた時代、独立し、尚且つ信頼とリスペクトを同じ職の男性並に得られる、数少ないキャリア(?)の一つでした。


実はカニング・フォルクとして認められた人たちは、魔術に対する法律が厳しくなっても、魔女狩りの犠牲者としては少数派だったりします。例えばエセックス州の魔女狩りですが、裁判にかけられた400人中、カニング・フォルクはたったの4人です。勿論、ウィッチハンターや教会関係者には、このカニング・フォルクは魔女と同等で、何があろうと処刑するべきという考えを持つ人も多かったのですが、大衆は違ったのです。かの有名なマシュー・ホプキンスの腰巾着ジョン・スターンが言うに、ホプキンズも自分もこのカニング・フォルクを処刑台に送りたかったが、「人々はむしろ彼ら(カニング・フォルク)を支持し、『なぜ善行行う人間が疑問視されるのだ』と言う」から無理だったそうです。


基本的に、カニング・フォルクは一人、もしくは二人組(パートナーは兄弟姉妹か伴侶)で行うものでした。多少なりとも読み書きができ、一般的には労働者よりはやや上の社会地位についていた人たちが中心です。何故少人数で活動するのかというと、魔女のステレオタイプに反するためです。基本的に、魔女と言うのはサバト等で集まって魔術を駆使するとされていたので、なるべくそういうイメージからかけ離れた存在をアピールします。しかし、だからと言って孤立はダメです。魔女狩りの被害者の多くは、あまり社交的じゃなかったり、今一つ周りと馴染めなかった人(またの名を人見知り)が多い印象があります。矛盾してる?知らんがな。



つまるところ、主に呪術に関することは一人か二人で行い、でも普段はちゃんと周りの人と交流して村や町の一部でいることが大事です。


もし中世イングランドに転生した場合、現代チートを駆使できるカニング・フォルクを目指すのが良いかもしれません(誰得情報)。リスクも多い分、報酬も多く、女性なら信頼やリスペクトも得られやすい職業なわけです。純粋な人なら、世のため人のため、と考えるかもしれません。幸い、先祖代々世襲感覚でカニング・フォルクだった人たちもいる一方、特に何もバックグラウンドがなくても、勝手にカニング・フォルクになることは可能でした。簡単?いえ、だからこそライバルも多く、難しかったのです。


一番大事なのは「信頼」を勝ち取ることでした。社交的に、人に好かれるようになることが肝心だったのです。第一印象を良くし、評判を上げることが、民間呪術以上に大事だと言っても過言ではありません。また、よく使われた方法は、身嗜みや自分の家を、「インパクトを与えつつ、立派なものにする」というのです。センスが肝心です。



実の所、魔女やカニング・フォルクに対する法律も、中世時点では存在しません。地域別に刑罰や私刑はありましたが、ヘンリー八世による近世初期の Witchcraft Act 1541(1541年の魔術法)ができるまでは、多少なりとも安心できます(誰得情報)。この法律ができると、魔術一般、物・宝探しも恋占いも処刑対象になります。この法律はヘンリーの息子、エドワード六世によって一時的になくなりますが、1562年にエリザベス一世によって再導入されます(でも無害な魔術はOK)。1603年、ジェームズ六世兼一世によってさらに酷くなります(魔術はダメ絶対)w 先程言ったように、カニング・フォルクはそれでも魔女狩りの犠牲者としては少数派でしたが、リスクは上がるので、よっぽど自分に自信がない限りはやめましょう(誰得情報)。



では最後に、一般的なカニング・フォルクの仕事内容と手法まとめです。


反魔女呪術

最も大事で人気のあるものです。基本的に、魔女の行う害から身を守るための呪術です。魔女に見立てた人形や獣の心臓に針を刺したり(魔女へのダイレクトダメージw)、呪いを解くためにチャームやポーションを作ったり、もしくは悪さをしている魔女を占いで見つけて法に訴えるなどです。


物探し・人探し

物をなくしても、すぐに新しく入手できない時代だったので、なくし物は今以上に大事でした。故に物探しもまたカニング・フォルクの仕事内容です。また、盗人の正体を突き止めることも。物と同じく、行方不明者を探すこともあったようです。手法は「占い」と「占星学」を参考に!


治癒

人や家畜が病気になったり、怪我をしたりすると、カニング・フォルクが頼られることがありました。ハーブや薬草を用いて薬を作る人たちもいた一方、獣を使ったり、祈ったり儀式を用いたりする人たちもいました。当たり外れが強そうな分野です。また、堕胎等の手助けをする場合もあったそうです。


恋のまじない・浮気対策

所謂恋のおまじない、恋占い、そして惚れ薬といった恋愛相談もするのがカニング・フォルクです。また、これと似たように、既に結婚している人物の伴侶にチャームやまじないを使って、絶対に浮気をしないようにする、という仕事もあったそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] カニング・フォルク、まったく知らない存在でした。 もしかしたら、これまで触れてきた映像やら物語やらで登場してきた、『善き魔法使い』は魔女じゃなくてこちらだったこともあったのかなぁ。 仕事…
[良い点] 〝カニング・フォルク〟という存在を、はじめて知りました。興味深くて、面白いですね~。 [一言] 「中世イングランドに転生した場合、現代チートを駆使できるカニング・フォルクを目指すのが良いか…
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