ブローチ 依頼達成
「一条さん。これで依頼は完了しました」
薫をタクシーに乗せ見送りを終えるとカガチは楓に話しかける。
「……はい。ありがとうございました。お陰で持ち主にきちんと返すことができました」
楓はすっきりした顔でお礼を言う。
薫のお陰だろう。
薫が楓の罪悪感を取り除き優しさで包み込んだから今前を向いて楓は立っていられるのだ。
「約束は必ず守ります」
二人は自分の依頼をこなしてくれた。
今度は自分が条件を守ることが大事だと。
そう言う意味を込めて二人に告げる。
「はい。よろしくお願いします。一条さんのこれからの人生がより良いものになっていくのを祈っています。では、俺達はこれで失礼します」
カガチがそう言うと二人は楓に背を向け家へと帰る道を歩いていく。
「本当にありがとうございました!」
楓は遠ざかっていく二人の後ろ姿にもう一度お礼を言う。
「ユーリ。この未来視えてたか?」
ケーキを買って家に帰りとカガチはそう尋ねる。
「ああ。だが、確定はしてなかった」
「そうか」
「ああ」
二人は楓から渡された黒い彼岸花の造花に火をつけ燃やす。
依頼達成。
悲願が消えた為その想いを消すまでが仕事。
「……終わったな」
「そうだな」
彼岸花が燃えて跡形もなく消えるのを確認すると家の中に二人共入っていく。
「……ケーキ食うか」
「ああ」
カガチは帰りに買ったケーキを箱から取り出し皿に乗せ、ユリはジュースをコップに注ぐ。
「今回もお疲れ」
「ああ、お疲れ」
そう言うと二人はケーキを食べ始め自分達を労る。
能力を使うと物凄く糖分が欲しくなる。
疲れた時には甘いものだというが本当にその通りだと思う。
ケーキを一口食べただけで疲れた体に染みわたる気がした。
あと一口でケーキを食べ終わるというときにカガチのスマホから音楽が流れた。
「電話か?」
「ああ……げ」
画面を見るやいな嫌な顔する。
「……」
ユリはカガチの顔を見て嫌な予感がし関わらないようにしようと目を逸らす。
能力を使わなくてもわかる。
「……アザミさんからだ」
嫌な予感が的中してユリはケーキを食べる手を止める。
「……はい。何ですか」
電話に出てアザミに話しかける。
物凄く嫌そうな声で。
『今からそっちに依頼人が行くから頼むぞ』
「は!?今終わったばかりなんですけど!」
疲れているから嫌だと遠回しに告げる。
『そうか。だが、それが人生だ。じゃあ、頼んだぞ』
アザミは言いたい事だけ言うと電話を切った。
「は!?ちょっ、待った…………切られた」
画面とユリを交互に見てそう呟く。
「……今から来るのか」
「……そうみたい」
二人はため息を吐きせっかくの休息が、とアザミを恨む。
せめて明日にでもしてくれればまだ良いものを。
「……すみません。誰かいませんか」
男の声が二人の耳に届く。
もう来たのか、と。二人は顔を見合わせどちらともなくため息をもう一度吐く。
どっちが行くかで揉めていると「すみません」とまた声がした。
これ以上待たすわけには行かないと二人は立ち上がり一緒に玄関まで行く。
「はい。今行きます」
カガチが男に聞こえるように叫ぶ。
扉を開けるとやっぱり男が立っていた。
二人は男が手に持っている黒い彼岸花を見て「やっぱりな」と心の中でため息を吐く。
「ようこそ、悲願花へ。ご依頼内容をお伺いします」
「俺の悲願を叶えてほしいです」
男が黒い彼岸花を前に差し出す。
それをカガチが受け取り「わかりました。中へお入りください」と言葉を続けようとする前に男が「幽霊退治をお願いしたいのです」と言う。
幽霊退治。
二人は顔を見合わせ目をパチパチさせた後声にならない叫びを上げた。
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