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ロゼ

「まだ、十時か。久しぶりに美味しいとこでランチでも食べよう」


アメリカから日本に三ヶ月ぶりに帰ってきた。


日本食が恋しくて仕方がない。


アザミと約束した時間は十四時。


後四時間もある。


すぐに家に帰ってもいいが、せっかくなので頑張ったご褒美で少し高い店に行くことにした。


「すみません。ここまでお願いします」


タクシーに乗り行きたい店の写真と住所が書かれてある画面を見せる。


「ああ、星花ね。ここすごく美味しいところだよね」


「え、そうなんですか。今日初めて行くんですよ。何がオススメですか?」


「ちらし寿司。あそこはちらし寿司が一番美味しいよ。勿論他の料理も美味しいけど、星花に行って食べるなら俺はちらし寿司だね」


タクシーの運転手は自分でも食べたくなったのかゴクリと喉を鳴らした。


「そうなんですね。じゃあ、ちらし寿司を絶対食べます」


「おお、それがいいよ。他にも美味しい店を知ってるから教えようか?」


「本当ですか。是非」


星花に着くまで運転手から美味しい店を沢山聞いた。


今度皆でそこに食べに行こうとスマホのメモ帳に書く。


「こんなに楽しくお客さんと話したのは久しぶりだよ」


「本当ですか。それは嬉しいです」


「代金は二千えでいいよ」


代金は約三千近く。


「本当ですか。ありがとうございます。今度またおじさんの車に乗りますね。感想はそのときいいます」


「お、待ってるよ」


笑顔で別れロゼは星花の店へと向かう。



「ん?あれ?そういえば、今日って定休日だったけ?」


ロゼと別れ暫くして今日は週一の定休日だったことを思い出す。




「え!嘘、今日定休日なの!?」


店について定休日と書いてある看板を見つける。


「ちゃんと確認するんだったわ。最悪」


運転手とずっとご飯の話をしていたのもあり食べるのを楽しみにしていた分、定休日という言葉はロゼに絶望を与える。


さっきからお腹がぐぅー、ぐぅーと鳴っている。


今から美味しい店を探す気力もない。


ここにいても仕方ないと一番近くにある店に入ろうと決め歩き出すと、少し離れた場所にファミレスの看板が見えた。


ファミレスで一番高いのを食べてやる!と意気込み早足で歩く。




「お待たせしました。サイコロペッパーステーキの和食セットになります」


「ありがとうございます」


目の前に置かれたサイコロステーキが美味しそうで涎が垂れそうになる。


「以上でご注文の品は以上でよろしいでしょうか」


「はい」


「ごゆっくりお召し上がりください」


店員がその場を離れると「いただきます」と言って早速肉から食べ始める。


「美味しい。米と一緒だと最高だわ」


久しぶりの米と味噌汁に感動する。


向こうではなかなか食べられない為、食べた瞬間泣きそうになった。


「デザートもやっぱ頼もう」


店員を呼びチョコレートパフェを頼む。


待っている間スマホで漫画でも読もうとするが、さっきから後ろの男女の話があまりにも面白くて漫画に集中できない。


聞くつもりはないのだが、席が隣だし何より女の声がよく通るため嫌でも聞こえてくる。


聞いている限り恋人というより会社の先輩後輩の関係なのはわかる。


男が大変だなと少し同情するが、一緒にランチをしているのは自分のせいだから仕方ないと思う。


十分くらい二人の聞きたくない会話を聞きながら漫画を見ているとパフェが届いた。


「パフェなんて久しぶりに食べるわ」


チョコとバニラのアイス、両方をスプーンで掬い口に運ぶ。


久しぶりに食べたからか一分もかからず完食した。


「はぁ、食ったわ。お腹いっぱい」


お腹をさする。


スマホで時間を確認すると十二時半。


今からタクシーでソウのところに行って、そこから家まで送って貰ったら丁度いい時間になる。


伝票を持ってレジに向かうと丁度後ろの席だった二人も立ってレジに向かって行くのでその後を追いかけるようについていく。


レジの前に行くと三組が並んでいた。


今のうちにお金を出して会計のときに時間をかけないようにする。




「お待たせしました。お会計は三千七百円です」


「会計は別で」


男がそう言うと女が「え?」と声を出し本気かと言う顔をする。


そのやりとりを見た瞬間ロゼは嫌なものを見たと顔を顰める。


「え、って何が?」


「え、だって今日廣瀬さんが奢るって言ったから来たんですよ、私」


「俺そんなこと一言も言ってないよ。君が相談したいことがあるから一緒に食事して欲しいって言ったんじゃないか」


目の前で口論をする馬鹿二人にロゼは呆れる。


店員もどうしたらいいかわからないのか苦笑いをするしかない。


「そんなこと一言も言ってないです。私、廣瀬さんがどうしてもって言うから来たんですよ。だから払ってもらわないと困ります。わたし財布持ってきてないんですから」


まさかの発言に廣瀬だけでなく店員も嘘だろと目を見開く。


ご飯屋にきて財布持ってこないとかあり得ないだろ、と。


「ちゃんと払ってくださいね」


そう言って店から出て行こうとする女に同じ女として少し、いやかなりムカついたロゼが手を掴み「ねぇ、待って」と声をかける。


「あんた自分が食べたもんくらい自分で払いな」


「は?あんたには関係なくない」


「ないけど、この人も自分の分しかお金持ってないからあんたの分は払えないのよ。だから自分で払いな」


ね、と女に見えないよう廣瀬だけに「そうだと言え」と目で訴える。


「そうです。自分の分しかお金がないから君の分は払えない」


「は?何で急にそんなこと言うの?あんたが私と一緒に食べたいって言ったから来たんじゃん。自分で言ったことくらい守ってよ」


廣瀬が払わないと言うと急に態度を変える。


「でも、さっきお兄さんは君が相談があるから食事に誘ってきたと言ってたけど」


ロゼがそう言うと女は鼻で馬鹿にしたように笑いこう言った。


「そんなのそいつの嘘に決まってるじゃん」


「それ誰が証明できるの?それに貴方が言ってることが嘘かもしれないじゃん」


「は?意味わかんない。帰る」


女がお金も払わず出て行こうとするとロゼが店員にこう言った。


「お姉さん。警察に電話して。無銭飲食されたって」


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