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紹介

「五六、出るぞ」


「え、ちょ、どこにですか」


説明もなしにさっさと外に出ていくアザミの後を追いかける。


アザミは一度も振り返らずさっさと車に乗りエンジンをかける。


五六は慌てて助手席に乗り「今からどこに行くんですか」と尋ねる。


「こないだ言ったろ。近い内に紹介したい者達がいると。今からそこに行く」


「ああ、例の人達ですね。中々連れて行ってくれないので忘れられているのかと思ってましたよ」


花嫁殺しが解決して一ヶ月が経った。


最初は忙しいから片付くのを待ってからだと思っていたが、暇になってからも連れて行ってくれる気配はなかった。


「向こうの予定が合わなくてな」


「ああ、そういうことでしたか。それなら仕方ないですね」




「ここですか?随分と山奥にあるんですね」


車で一時間以上もかかった。


山の中を運転しはじめたときは本当にこんなところにいるのかと疑ったが、建物があり本当にこんなところにいるんだと驚く。


「ああ、人嫌いがいてな。それでここで暮らしてるんだ」


「そうなんですか」


自分から聞いたのに大して興味もないので適当に返事をする。


アザミも気の抜けた返事だなと思っていたが、わざわざ言うのも面倒くさかったので無視して玄関を開けて中に入る。


「ちょ、藤堂さん。勝手に入ったらまずいですよ」


慌てて止める。


「いつもこうだから問題ない」


靴を脱ぎ家の主の許可も取らずに入っていくアザミを追うべきか、それともここで待つべきか悩んでいると「さっさとしろ」と睨みつけられ、どうなっても知らないからなと半ば投げやりで家に上がる。


「二人共いるか」


話すと同時に扉を開ける。


「いるよー」


ソファーに寝転がったままカガチが返事をする。


「ユーリは」


ユリの姿が見当たらない。


「ここに」


冷たいお茶が入ったコップを二つお盆に乗せて飲んでいいよとコップを取るよう目で合図する。


未来を視だのでいつくるのか知っていた。


「ああ、助かる。丁度喉が渇いていたんだ。ありがとう」


一気に飲み干す。


「それで、紹介したいって言った人はその人か?」


カガチはユリの隣に立ちそう言うと扉の前にいる五六を見る。


「ああ、そうだ。こっちに来い」


「はい」


アザミの後ろに隠れるように立つ。


「とりあえず紹介するな。少し前からペアを組んでいる五六だ」


五六慎二(ふのぼりしんじ)です。よろしくお願いします」


「で、こっちの髪が短い方がカガチで長いのがユーリだ」


世間一般で言えばカガチの髪も長い方だが、肩まである髪を結んでいるユリに比べたら短い。


「カガチです」


「ユリです。これから何かとよろしくお願いします」


お互いの自己紹介が終わるとアザミが「それで、あいつはまだ帰ってないのか?」と二人に聞く。


「ロゼ?帰ってくんの?そんな連絡なかったけど」


な、とユリにそんな未来視たかと目で問う。


「ない」


首を振って視ていないと伝える。


「何だ薄情だな、あいつは。俺には今日帰るって昨日連絡きたのにな」


ラインのやり取りを二人に見せる。


「うわ、本当だ。俺達にも知らせてくれればいいのに、な」


「……」


カガチが同意を求めるも、何の連絡がなかったのがショックだったのか固まってしまう。


そんなユリの姿を見て「(こりゃあ、ロゼが帰ってくるまで使い物にならんな)」と呆れてため息を吐く。


「まぁ、そのうち帰ってくるか。あいつが帰ってくる前に二人の能力を説明しとこう」


アザミが五六に説明しようとするとカガチは「待て」と手で静止する。


「その前に一つ。五六さん、あんたに聞きたいことがある」


「な、何ですか」


カガチの鋭い目に威圧され体を縮こませる。


元々前髪と眼鏡で顔が隠れてよく見えないが、カガチの視線から逃れようとして俯いたので余計にどんな顔をしているのか見えなくなる。


「どうしてアザミさんとペアを組もうと思ったんだ。アザミさんとペアを組んだ人達がどうなったか知らないわけじゃないよな?」


「…はい、知ってます」


アザミが警視庁捜査一課の刑事に配属されてからのペアは五六を合わせて五人。


その内二人は殉職。


二人は行方不明。


最後の一人、五六の前のペアはアザミの手によって死んだ。


アザミは職場で死神と恐れられ誰もペアを組みたがらない。


組んだら魂を吸い取られると思われている。


そんなアザミと組もうなんて人間はよっぽどの馬鹿か何か裏があるかのどちらかだ。


「その、上からの命令です。だから断れなかったんです」


「ああ、なるほど。上からか。それなら仕方ないな」


五六が下を向いているのをいいことにゴミを見るような冷たい目で見下ろす。


「はい」


二人のやり取りのせいで一気に空気が重くなる。


カガチには後で説明をすると決め、とりあえずこの空気を何とかしようと手を叩き、できるだけ明るい声でこう言った。


「もう質問は終わったろ。そろそろ話を戻すぞ。とりあえず全員座れ」


カガチとユリを隣に座らせ、アザミは五六と向かい側に座る。


「じゃあ、早速五六をここに連れてきた本題に入ろう」


「本題ですか?」


顔の表情から「紹介するのが目的だったのでは?」と声に出ていなくてもそう言いたいのだろうとわかる。


「ああ、自己紹介だけが目的なら連れてこん。面倒だし」


うっかり本音が出る。


「これからお前は俺と行動するだろ。なら、知っといた方が何かと都合がいいだろ。毎回誤魔化すのとか面倒だし。そうなるとお前が事情を知ってる方が何かと都合がいいからな。と、いうわけでこの二人の能力を特別にお前にも教えといてやる」


「能力ですか?」


「そうだ。カガチは過去を覗くことができ、ユーリは未来を視ることができる。簡単に言えば二人は超能力者だ」


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