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花嫁殺し 後編

「初めまして工藤楓さん。いや、花嫁殺しと言った方がいいですか」


楓が目を覚ましたと聞き二人の聴取がちょうど終わったこともあり、取り調べをするとになった。


アザミはこう見えて県警一の取調官だ。


今まで取調官をして犯人を落とせなかったことは一度もない。


どんな相手でも自供させてしまう程の凄腕。


「……」


「俺は刑事課の和眞尚吾(かずましょうご)と言います。どうぞよろしく」


補佐官の女性はどう見てもよろしくって顔じゃない、と心の中で突っ込む。


「早速本題に入らせて貰います。何故、彼女を殺そうとした」


「……」


「理由は何だ」


「……」


「彼女が貴方に何かしたのか」


「……」


「おい、ずっと黙っているつもりか」


何を聞いても答える気配がない。


美鈴と同じだ。


きっと組織の者に、もし捕まったとしても何も話すなとでも言われているのだろう。


でも、このままでは組織のことを何も知ることができない。


仕方ないとため息を吐き、カガチから聞いた情報を使って無理矢理話させることにした。


「好きな男でも取られたのか」


その問いに美玲の顔色が変わる。


今にも殺しそうな勢いでアザミを睨む。


今の美玲の反応で直哉のことを持ち出せば上手く自供させられると確信する。


「そう言えば、花嫁殺しが殺した人全員もうすぐ結婚する予定だったな。もしかして、好きな男が結婚するから相手の女性を殺して自分がその座につこうとしたんじゃないよな」


わかっていて敢えて馬鹿にするような言い方をする。


「……れ…………や……な……」


「何だ?話すならもっと大きい声で言ってくれ」


「黙れって言ったんだよ!このクソヤローが!テメェに何がわかる!直哉は私と結ばれる運命だったんだ!それなのに、あの尻軽女が直哉を私から奪ったんだ!悪いのは全部あの女だ!後もう少しで殺せるはずだったのに、あのクソガキ共のせいで……あんな女殺されて当然なんだよ!!」


アザミの挑発にまんまと乗り、自供してしまう。


怒りで自分が何を言っているのかわかっていない様子だ。


「どうして彼女が殺されるのが当然なんだい」


今にも美玲をぶん殴りたくなるのを必死で押し殺す。


「直哉を私から奪ったからよ!!だから……」


「殺してもいいと」


美玲の言葉を遮り、冷たい声と口調で言い放つ。


「そうよ!」


「工藤さん。貴方はさっきから直哉さんを奪われたと言っていますが、それはおかしいと思いませんか?」


「何がよ!何もおかしくはないわ!」


「いいえ、おかしいです。だって、直哉さんは貴方のものではなく、彼女の婚約者なのですから」


「〜っ、ああああああああ!黙れ!黙れ!だまれ!直哉は私の物なの!私と結ばれる運命だったの!それをあの女が台無しにしたのよ!」


椅子を蹴り飛ばし狂ったように叫ぶ。


美玲の叫び声に何があったのかと同僚達が取調室に入ってくる。


女性警察官達がアザミを襲おうとする美玲を押さえつける。


「何があった?」


課長がアザミに説明するよう求める。


「犯行動機に触れ、それを否定したらああなりました」


悪びれない態度で言う。


「そうか」


これ以上聞いても適当に答えるだけで話さないだろう。


聞くだけ無駄だと思い補佐官から聞いた方がいいと判断し話を終わらせる。


「自供は取れたので後お願いします」


面倒なことは任せて二人のとこに戻る。





「なんかすごい声がここまで聞こえたけど大丈夫なのか?」


カガチが尋ねると「まあ、大丈夫だろう」と美玲のあの様子は大丈夫ではないが適度に答える。


カガチはアザミが大丈夫かと聞いたのに何故か自分のことだと思っておらず他人事のように言う。


「……」


絶対勘違いしているとわかっているが、一々訂正するのも面倒くさいし、そんな無駄話をする余裕もないので、ジト目でアザミを見るだけで済ます。


ユリが咳払いをし、そろそろ本題に入りたいと促す。


「アザミさんが取調べしている間に男を捕まえるユーリと作戦を一応立てたんだ。上手くいくかは賭けになるけど」


ユリの態度にやばいと感じ、早口で話し始める。


「どんなのだ」


「残りの花嫁殺しを見つけて、そいつらの代わりに男と会う」


「正気か?」


無謀すぎる。


どう話し合ったらこんな作戦になるんだ。


「勿論。それに早くしないと花嫁殺し達が動き出す。本当なら岸田美乃梨は今日じゃなく四日後に犯行に及ぶはずだった。なのに、今日犯行に及んだ。残りの三件も早くなる可能性がある以上手を打たないと取り返しのつかないことになる。今日は偶々上手くいったけど、次もまた上手くいくとは限らない。わかってるだろ、アザミさん。これ以上後手に回るわけにはいかないって」


カガチの言っていることは納得するも危険すぎて許可を出せない。


アザミにとっては二人の命の方が大切で守るべき存在。


危険なことはさせたくないが……。


「……勝算はあるんだよな」


「半分」


アザミの問いに即答するユリ。


「(半分か……)」


半分ならやらせてみせる価値はある。


「命の危険は」


「今のところはない」


ユリが答える。


「一つだけ約束しろ。絶対に自分の命を優先しろ。それが、約束できるなら許可する」


「「わかった」」


元々死ぬつもりはない。


言われなくても自分の命を優先するつもりだ。


三人の女性には悪いが、二人にはやらなければならないことがある。


そのためにも今死ぬわけにはいかない。


助けられるのなら助けるが、自分の命を危険にしてまでやるつもりはなかった。



長年世間を騒がせた事件はそれから二週間で事件は解決した。


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