花嫁殺し 後編
「結論から言います。俺達は貴方が花嫁殺しの次の犠牲者になることを知って犯人を捕まえようとしました」
誰もこない廃墟になった建物に入り、ソウに迎えの電話をしてから美玲に話しかける。
「……どうして私が狙われたんですか?」
「すみません。そこまではわかりません。犯人の顔を見れば何かわかるかもしれませんがどうしますか」
ユリもまだ犯人の顔を見ていないので誰か知らない。
カガチの能力を使って情報を手に入れようにも美玲がいる限りそれはできない。
「……みます。私には知る権利があるはずです」
「わかりました。では、行きましょう」
カガチに見張りをさせているので大丈夫だと思うが、一応念の為自分の後ろにいるように言う。
「カガチ」
ユリに呼ばれすぐに何をしたいのかを察した。
「覚悟はいいですか」
ユリが最終確認をする。
美玲は少し考え込んでから覚悟をきめ頷く。
ユリはカガチに仮面を外すよう目配せをする。
「はいはい」
仮面を外すも暗くて顔が見えないのでカガチがスマホのライトをつけフードの顔を照らす。
「え?この人は……」
「知っている人ですか?」
「はい。婚約者の友人です。でも、話したことはありません。写真を見せてもらったので知っていただけで……何でこの人が……」
美玲は信じられなかった。
どうして話したこともない人に殺されそうになっているのか。
婚約者から聞いた話だと、面倒見がよく皆に好かれるいい人。
それなのに人を沢山殺してきた連続殺人犯の花嫁殺しだったなんて。
その被害者の一人に自分もあと少しでなるかもしれないところだったと急に実感が湧き、そのせいか吐き気が襲ってきて吐いてしまう。
「どうぞ」
ユリが少し離れた自販機で買った水を渡す。
「……ありがとうございます」
水を受け取り口をゆすぐ。
「これ以上知りたくないのなら話しません。このまま家までお送りします」
美玲は最初話して欲しいと頼んだが、この状況では知りたくないと思いどうするか尋ねる。
「……別の日に聞くのでもいいですか」
今は聞く気にはなれない。
そもそも知りたくもない。
怖くて早く家に帰って安心したかった。
でも、何で殺されそうになったのかは知りたかった。
「わかりました。後日、警察の方が詳しく話してくれるので聞く準備ができたら聞いてください」
「わかりました」
「では、帰りましょうか」
まだ、ソウから連絡は来ていないがもうそろそろ来るはず。
少し待つくらい大丈夫だろうと思い送ると言う。
「はい。でも、一人で帰ります。今は誰ともいたくないんです」
心配していってくれているのはわかっていたが、誰とも一緒にいたくなく今すぐ一人になりたかった。
「そうですか。わかりました。でも、タクシーを使って帰ってください」
自分達といるとフードとも一緒にいることになる。
無理強いはできない。
送ってあげたいが、カガチを一人にするわけにはいかない。
念の為、能力を使って美玲の未来を覗く。
サングラスはしていないが真っ暗なので目の色が変わってもバレない。
問題はないと未来は確定しているので、一人で帰ることを許可するが、念の為タクシーで帰るように言う。
「はい。わかっています。今日は助けていただき本当にありがとうございます。このお礼は後日させてください」
「気にしないでください。俺達は仕事でやっただけなので」
「よかったのか。一人で帰らして」
「本人がそれを望んでいる。彼女の未来を視たが大丈夫だったし問題はない。それに、俺達といればフードともいることになる。そっちの方が辛いだろ。自分を殺そうとしたやつと一緒にいる方が」
「確かにそうだな。じゃあ、そろそろ過去を覗くとしようか」
美玲がいたため能力を使うことができなかった。
「無理はすんなよ」
「わかってるよ」
カガチはフードの服を少しあげ腕に触れて過去を覗く。
「……ユーリ」
一時間以上過去を覗きようやく知りたいことが全部みれた。
「どうした?」
「やっぱり、あいつらがこの事件の裏にいやがる」
「なら、どんな手を使ってもこの事件終わらせるぞ」
「とりあえず、フードの情報はアザミさんといるときに教えてくれ。二十分前にソウさんから着いたと連絡が来たしこれ以上待たせるわけにはいかない。アザミさんにもそろそろ連絡しないといけない」
「確かに、これ以上は待たせられないな」
ユリはアザミに連絡をし、カガチはフードが気絶しているため運ぶため腕を肩に回す
ユリも電話を終えるともう一方のフードの腕を肩に回してそうのところまで向かう。
ソウが待っている場所に着くとすぐにフードをトランクに入れ、警視庁へと向かう。
「……てな感じで、ここにくるのが遅くなった。ここにきたらあの女は取り調べを受けるから覗く暇がないしね」
色々言いたいことはあるが、何とか堪えて一言「そうか」と言う。
「女の動機もわかったし、多分残りの犯人達の動機も一緒だから特定して捕まえられるよ。勿論、協力者達も」
「やっぱり、動機は嫉妬か」
「うん。だけど、あれは嫉妬の一言で片付けていい感情じゃないよ」
カガチはフードの過去を覗き女の感情が全てはいってきたからわかる。
あれは嫉妬なんていう生易しいものではない。
「まぁ、そうじゃなきゃ人を殺そうなんて思わないさ。それより、カガチあいつらのことを話してくれ」
ユリの言葉にアザミは「(やっぱり、あいつらも関わっていたのか)」と殺意が湧く。
「わかった」
そう言うとカガチはフードの情報を全て話す。
名前は工藤楓、年齢は二十六歳。
職業は美容師。
恋人は今はいないが、いたとしても好きなのはずっと美玲の婚約者の浩直哉。
十年近く片想いをしている。
直哉の歴代彼女に嫌がらせをし無理矢理別れさせている。
どんなに直哉に恋人が出来ようと最後は自分と一緒になると思っていたので、これまで我慢できていたが結婚すると聞き直哉をを殺して自分も死ぬことを決意した。
そんなとき、ある男に声をかけられ花嫁殺しの一人となる。
花嫁殺しは連続殺人犯の為、例え疑われたとしても他の日にアリバイがあれば疑われない。
そうすれば弱った直哉を慰めている間に上手いこと体の関係を結び子供でもできれば結婚できる。
ようやく直哉と結ばれる。
幸せになれる。
互いの利害が一致し協力関係になった。
「そのとき会っていた男の一人の首にスペードのマークがあった」
スペードのマークはある組織の証。
その組織以外の人間がその証を入れたら殺されるため、まず間違いなく楓のあった男は組織の一員。
「そりゃあ、黒だな」
アザミが断言する。
「でも、あいつらを捕まえるのは難しい。できたとしても今回はその男だけだぞ」
証拠が揃っても上の者達を捕まえるのは難しい。
そのことを二人もわかっているから何も言えず黙り込んでしまう。




