花嫁殺し 中編
カフェの日からカガチとユリはずっと美玲と婚約者の交友関係を調べ誰に恨まれているのかを調査し全員の未来を視たが、誰一人美玲を殺そうとするものはいなかった。
美玲が殺されそうになる未来は変わってはいないのに、誰が犯人なのか見つけられなかった。
後五時間後に美玲は殺される。
殺される方法と場所はわかっているので止められる可能性はあるが、今回の未来は変えていいものなのか微妙なラインでユリには判断が難しかった。
未来には変えていいものと絶対に変えてはいけないものがある。
絶対に変えてはいけない方を変えてしまうと、本来負うはずだった被害以上のものを誰かが負うことになる。
これがユリ以外が変えるなら問題は起きないが、未来を視た者が変えるとその代償が発生する。
ユリは絶対に変えてはいけない未来、決まった未来を変えられる人間に出会ったことがあるのは今のところ一人だけだった。
その人以外の人間が未来を変えたことをみたことがない。
どんな確定した未来もその人が関われば変わってしまう。
それが一、二度なら偶然だが、三十回以上も起きるとそれはその人の力によるものだと思う。
ユリは今不安で仕方なかった。
美玲を助けていいのか。
助けたことでそれ以上の何かが起きるのではないかと嫌な予感がしていた。
未来が一秒ごとに変わっていく。
確定しない。
それが不吉で怖くなる。
「(ここに、ロゼさんがいてくれたら……)」
無意識にそう思ってしまった。
「ユーリ。今、ロゼのこと考えているだろ」
急に視界がカガチだけになり反射で頬を殴る。
「何すんだ。てめぇ」
大声を出すわけにはいかず小声で怒鳴る。
「悪い。つい、手が出た」
顔にはださなかったが驚きしすぎて心臓が止まるかと思い反射的に恐怖の対象を排除しようとしたら、結果的にカガチを殴ってしまった。
「……本当に悪かった。何でも言うこと聞くから許してくれ」
顔を近づけずっと睨んでくるのでそう言う。
「本当に何でも聞くんだな」
「ああ」
嫌な予感はするが、今回は自分が悪いので素直に返事する。
「なら、この事件が解決したらユーリの奢りで福寿草に行こう」
「……わかった」
家事を一週間変われ、と言われると思っていたのに福寿草に行こうと言われると思わず「まじか、こいつ」と思ってしまう。
いつか絶対に同じことをしてやる、と心の奥に刻む。
カガチは後ろでユリがどんな顔をしているか知らず無邪気にガッツポーズをしたりして喜ぶ。
「それより、本当に未来は変わってないんだよな」
「ああ、変わってない。五時間後に襲われる」
美玲が襲われる未来は確定したが、死ぬか死なないかの未来は確定していない。
自分達が阻止すれば助かる未来も視えたのに何故か確定しないその未来が不安でしかたない。
「そうか。なら、さっさと犯人捕まえて全部聞き出してこの事件終わらせてやる」
「……ああ、そうだな」
事件をあと少しで解決できると思っているカガチは犯人を捕まえようと意気込んでいるが、ユリはどうもさっきから嫌な予感がして何か見落としているのではないかと不安だった。
それから二人は犯人が現れるまでずっと美玲を見張っていたが、事件発生まで後二十分となったとき不意にカガチの未来を視てしまう。
嫌な予感があたった。
その未来は美玲を助けたが、その一時間後に次の犠牲者だった牧村美鈴の死体が見つかりカガチが殺された瞬間をみるため過去を覗いている姿だった。
「……最悪だ」
ユリのその言葉が聞こえ「何がだ?」と横を向くと目の色が紫色に変わっていてすぐに未来を視てそう言ったのだとわかった。
「ユーリ。何を見た」
「四日後に殺されるはずだった牧村美鈴があと一時間半後に殺される」
カガチの未来を覗き美鈴が死んだ時間を知った。
「な!は?……嘘だろ。何で犯行が早まったんだ?あと少しでこっちも殺されるのに、どうしたら……あ、アザミさんに連絡すれば……」
なんとかしてくる、そう思って急いでズボンからスマホ取り出そうとしたせいか地面に落としてしまう。
しまった。
スマホが落ちた音が思った以上に大きく美玲に気づかれたかと思い焦るも、こちらを振り向くことはなかったので安心する。
カガチは周りにも不審だと思われないよう気をつけながらアザミに電話をかける。
「……もしもし。カガチか、何かあったのか」
最後まで言い終わる前にカガチが遮るように話し出す。
「アザミさん。緊急事態発生だ。今日もう一人犠牲者が出る。俺達は今、柴田美玲を見張っていてそっちに行けない。代わりにいって助けて欲しい」
周りに聞こえないよう小声で伝える。
アザミはカガチから電話の内容に驚き大声を出してしまう。
近くにいた同僚に不審な目で見られたが、すまんと謝るジェスチャーをして人気の無いところに移動する。
「詳しい説明は後で聞かせてくれ。名前と場所、時間だけ教えてくれ」
カガチはユリにスマホを渡す。
ユリも一緒に聞いていたので何を伝えないといけないかはわかっていた。
「名前は牧村美鈴。場所は自宅周辺にある公園でナイフで体中を斬られたのち腹を刺されて出血多量で死んだ。時間は一時間半後」
簡潔にわかりやすく伝える。
「わかった。こっちは俺に任せろ。そっちはお前達に任せる。あともう少しだろ」
「ああ。……ごめん、アザミさん。俺……」
「謝るな。悪いのはお前じゃないだろ。心配しなくていい。じゃあな」
電話を切り急いで最近ペアになった男を連れて美鈴のいる町に向かう。
男は何かあったんですかと聞いてきたが、後で説明するからついてこいとだけいって車を運転させる。
美鈴の住んでいるところはユリからあの日教えられていたのでメモした紙を取り出しここに行くよう指示を出す。
サイレンを鳴らしたかったが犯人にバレるわけにはいかないので時間はかかるが鳴らさずに向かう。
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