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99.建物高え

「『魔王国』に着きましたよ」


 そう言って、魔族は俺たちが側の扉を開いて見せた。


「おお……ここが魔王国か……」


 魔王国。それは魔界の中にある国であり、ダークハートが治めている場所だ。


 とどのつまり魔界の中心地と言っても過言ではない。


「建物高ぇ……これ何回建てだ?」


 人間界――王都とは違い、平屋なんて見当たらない。


 大抵は二階建てで、恐らく重要な場所はそれ以上の階層になっているようだった。


 もちろんここが魔王国の首都であるため、色々と技術が集中しているのもあるだろうが。


「それに見てよ! なんか文字が浮かんでる!」


 エリサが指さした方向を見てみると、建物の壁に文字が浮かんでいた――恐らくは看板の代わりになっているのだろう。


「あれは魔法結晶を応用したホログラムですね。他にも、この先には駅もあってホログラムは当たり前ですが魔導列車も走っていますよ。簡単に言えば魔導車を更に応用して大人数を運ぶことに特化した乗り物ですね」


 なんだそれ……聞いたこともない技術だ。聞いている限りだとまさに絵本の中のもののように感じるのだが、実際に再現できているのだから驚きである。


「ファンタジーですぅ! もう最高!」


「すごいね! これが魔族たちの技術力かぁ!」


「いや……本当にすごいな……」


 言い方は悪いかもしれないが……もし本当に人間と魔族で戦争なんて発生していたら……今の感じだと間違いなく人間側は技術力の差で負けていただろう。


 ダークハートが人間に対して敵意を抱いていないようで本当に安心してしまう。


「そして――正面にある一番高い建物がダークハート様が住まわれている場所です。人間たちが言う……いわば魔王城です。正確に言えばお城……というよりは塔に近いのですが、細かいことはあまり聞き手側にとってもつまらないものですから省略しますね」


 言いながら、魔族は一歩前に出る。


「中へ案内します。時間がかなり押していますので、このままパーティ会場に向かいますね」


「はい。分かりました」


 俺は頷き、魔族の背中を追う形で進んでいく。


 やはり塔ということもあって、もう見上げてしまうほどには建物が高い。


 俺はもうずっと上の方を見ていたのだが、入り口前に来て魔族が扉に触れるのを見て驚いてしまう。


 なんてったって、手を触れるだけで自動で扉が開いたのだ。


 恐らくこれも魔法によるものなのだろうが、人間側にはないものだ。


 中は中で、かなり綺麗な内装をしている。これに関して言えば人間側の宮廷に近いものがある。使用人の姿も見えるし、意外と近い部分もあるようだ。


「しかし……こんなに高いと階を移動するだけでも苦労しそうですね」


 階段で上るにしては……正直現実的ではないように思う。最上階に着く頃にはもう足なんてガクガクだろう。


「それに関しては安心してください。階の移動は上昇床によって行うので筋肉痛になることはまずありません」


「上昇床……! なんだか超技術の気配がしますね!」


「ふふふ。上昇床というのがこちらです。とはいえ、見た目は別に特別なわけでもなくて普通の床なのですが」


 案内されるがまま、上昇床というものに俺たちは乗ることになった。


 魔族が言っているように、普通の床の上に普通に立っているだけだ。


 別に特別なものは感じないが……名前の通りこれが上昇するのだろうか。


「それじゃあ……見ていてくださいね」


 魔族が浮かんでいるホログラムに触れると、床がゆっくりと浮かび始めた。


「おお!? すげえ!?」


「わぁ! 何これ浮かんでる!」


「す、素敵です! 本当に絵本の中にある魔法みたい!」


 どんどん上昇していき、気がつく頃には地面があった場所からかなり高い場所に来ていた。


 これが階段だったら時間も掛かるし体力も消費していたところだったのだが……本当にすごいな。


「パーティ会場は最上階です。かなり高い位置にありますので、窓から見える景色は絶景ですよ」


「絶景だってよエリサ、ユイ」


「どんな景色なんだろう! こんな高い場所まで来た事なんてないから楽しみだよ!」


「ですね! もう心のキラキラがキラキラフィバーです!」


「キラキラフィバーってなんだよ……」


 新たな造語が生み出されたところで、上昇床がパタリと止まる。


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