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94.歴史が大きく動く瞬間

「エリサとユイはどう思う?」


 俺が尋ねてみると、二人はむむむと唸った。


「難しい問題だね……」


「色々と見えないところがありますからね……皆さんは理解してくれるでしょうか……」


 当然の疑問である。


 数百年ぶりの魔界の開放となると、人間界からは反対意見も多く出るだろう。


 言い方は悪いが、俺たち人間にとって魔族は未知の存在なんだ。


 お互い同じではあるが、人間は魔族のことを知らないし魔族は人間のことを知らない。


 それこそ、いつかの共存していた時代にもそういう問題は少しはあっただろう。


「まあ問題は出るじゃろう。お互い干渉しないのも良いとは思う。じゃが、今後のことも踏まえるとここは共存の選択肢を取った方が良いことが多い」


 彼女は指を折りながら一つ一つ挙げていく。


「技術の共有、資源の共有、知識の共有、数多くのメリットがあるのは確か。国家間で文化や見聞が違うように、人間界と魔界ではそれはもう多くの違いが存在する。それらを享受することができれば、我々は更に進化してゆくと考えているのじゃ」


 ダークハートが言っていることは間違いのない事実である。きっと人類はまた一歩前進することになるだろう。


「色々と問題はあるだろうが、ともあれ決定事項でもある。お主たちには勇者として、色々と協力をしてもらいたいのじゃ」


「もちろん協力するさ。国王様もダークハートの考えには賛成だろうし、俺たちもそれに従うまでだ」


「そう言ってくれると嬉しいのじゃ! さすがは妾の未来の婚約者であるな!」


 たっく……未来の婚約者だなんて好き放題言ってくれるな。


 まあ、色々と問題はあるだろうが俺たちにできる範囲のことをやって、少しでも未来がよりよくなるために頑張るまでだ。


「して、お主たちに相談があるのじゃ。魔界と人間界が繋がる時に魔界にて記念パーティでも開こうと思っているのじゃが、お主たちに参加してもらいたいと考えておる。どうじゃ?」


 記念パーティ……か。少し恐れ多い部分もあるが、しかし拒否する理由もないしな。


 ここは親睦を深めるという意味でも参加しないわけにはいかないだろう。


「人間側の国王や聖女はもちろん、貴族なんかにも参加してもらおうと思っておる。やはりここは有名な人達に参加してもらって、良さを市民たちにも共有してもらわねばなとな」


「ということはルルーシャさんやリエトン伯爵も来るのか。うん、あの人たちならきっと市民たちにも魔界の良さをきちんと共有してくれるだろうさ」


「カイルが言うなら間違いないな。うむ、まあそういうことじゃ。楽しみにしておるぞ」


 そう言って、ダークハートは嬉しそうに笑う。


「魔界開放まで残り一ヶ月。それまで色々あると思うが、お互い頑張ろうぞ。よろしく頼むのじゃ!」


 彼女の言葉に俺は頷き、手を差し出す。すると、ダークハートは少し驚くような表情を浮かべたが、すぐに笑顔を湛えて握手を交わした。


 きっと、これから俺は歴史が大きく動く瞬間に立ち会うことになる。オッサン……少し感動しちゃうな。


「エリサ、ユイ。みんなで頑張ろうな」


 俺が二人に視線を移すと、彼女たちは何度も力強く頷く。


「もちろんだよ! これからの未来のために頑張ろうね!」


「いっぱい頑張りますよ~!」


 よし……頑張るとするか。


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