93.妾507歳じゃぞ?
こうやって見ると、二人も成長しているように見える。最初に会った時とは違って、色々と覚悟が決まっているようだ。
「妾はカイルに救われたのじゃ……だからカイルを心の底から愛しておる。もう結婚も視野に入れておるし、なんなら魔界と人間界両方でしっかり婚姻届も出そうと思っておるぞ」
「一体お前は何を言っているんだ?」
「妾の求愛……受け取ってくれるか?」
「悪いがダークハートみたいな子どもは興味がないんだ。出直してこい」
「妾五百七歳じゃぞ?」
「お前マジで言っているのか……?」
俺は思わず愕然としてしまう。
今……この人五百七歳って言った?
なんだか想像していた桁とは二つくらい違うんだけど。
「ふふふ……妾は少女のような可愛らしさもあり、大人な魅力もしっかり備えておる――完璧な美少女なのじゃ」
「美少女って矛盾してない?」
「矛盾っていうのは時に魅力的な要素になったりするのじゃ」
改めて、この人はヤバいかもしれない。俺が想像していた以上に……違う意味で厄介な相手なのは間違いないだろう。
俺は苦笑していると、エリサたちがふくれっ面になっていた。
「結婚するの……!?」
「しちゃうんですか……!? わたしたちを置いて……!」
「しないから……俺をなんだと思っているんだ……」
生憎と俺はそんな軽い男じゃない。
それに、たとえ俺より年齢が上だとしても無理だ。
そもそも五百七歳は色々と熟しすぎている。
俺が好きなのはお姉さんではあるが、もうお姉さんという次元ではない。
「まあそれは置いておくのじゃ。あわよくばここで婚約を結んで貰おうかと思っていたし、婚姻届もしっかり準備しておいたのじゃが、しかし慌てすぎもよくないからの」
そう言って、ダークハートがちらちらと婚姻届を見せてくる。……こいつマジで持ってきていたのか。
下手すればダークハートと籍を入れることになっていたと思うと、色々と震えてしまう。
「和解の内容じゃがな。これからは魔族と人間、仲良くしていきたいと思っている」
ダークハートはくるくると指を回しながらそんなことを言う。
「結論から言うと、魔界を開放するということじゃ。人間は魔界に自由に出入りできるし、その逆も然り。魔族も自由に人間界は出入りできるようになる……という方向になっておる。これはそっちの国王からも許可は得ているのじゃ」
なるほど……しかし大きく出たな。
確か記録によると、過去に人間と魔族は共存していたらしいが、それはもう何百年前の話だ。
恐らくダークハートは、人間と魔族の共存を目指しているのだろう。




