92.ヴォルガンについて
ダークハートは腕を組み、うむと頷く。
やはり何度見たって魔王様と言われても違和感を覚えてしまうのだが、しかしながら真面目な雰囲気からは確かな威厳を感じる。
「そもそもの問題――ヴォルガンについてじゃがの」
そこで聞き覚えのある人物の名前が挙がる。
ヴォルガン……俺が死ぬ気で戦った相手だ。
「あやつは魔王軍幹部であり、魔王殺しを企んだ重罪人じゃ。妾の考えに反発した上、世界を変えると言って出て行った。結果として待っていたのは、人間界での事件であるが」
「……ヴォルガンや色々な人の話を聞いた限り、ダークハートは人間と対立するつもりはあまりなかったんだろ? だから、ヴォルガンに命を狙われた」
「そうじゃ。妾は意外にも平和主義でな、歴代魔王の中では異質な存在じゃ。まあ……そんな考えだからヴォルガンが生まれた……って考えることもできるのじゃがな」
そう言って、ダークハートは大きく息を吐く。
「でも……本当に感謝しておる。ヴォルガンを止めてくれてありがとうなのじゃ。妾には抱えきれなかった問題を関係のないお主が止めてくれたのじゃからな」
「別に良いんだ。俺たちはすべきことをやっただけ……だろ? 二人とも」
エリサとユイの方を見ると、彼女たちは力強く頷いた。
「うん……! そうだよ!」
「はい……!」