88.なんかすげえ声がしたんだけど
「やっぱり宮廷はいつ来ても慣れないな。特に理由が理由だからなぁ……」
宮廷にやってきた俺たちは、半ば緊張しながら約束の時間を待っていた。
国王様やルルーシャさんはいない。
最初こそ勢揃いで魔王様と面会をする予定だったが、どうやら俺たちだけで話をしたいらしい。
もちろん危険性もあるが、「カイルなら大丈夫だろう」ということでそれが受け入れられた。
全く……信用してくれるのは嬉しいがちょっと困るな。
「緊張するね……どんな人だろう……」
「多分すごい方ですよ……だって魔王様ですよ……?」
「きっと圧倒的に筋骨隆々で覇気とかもすごいんだろうぜ。さすがにオッサンもビビってる」
「でもカイルほどじゃないって自信はある!」
「それは私もです! カイルの方が絶対強いですから!」
二人は嬉々としながらそんなことを言った。
おいおい……俺への信頼度、どうなってんだよ。
でもこうやって信頼してくれるのは嬉しい。
最大限答えるべく、しっかりしないとな。
「そろそろ……か」
今日のために付けてきた腕時計をちらりと確認する。
約束の時間まで、残り一分くらいだろうか。
さすがに緊張してきたな。
「ん……?」
少し待っていると、奥の方からバタバタと音がし始めた。
もしかして来たのだろうか。
「うおおおおおお! やっとカイルに会えるのじゃあああああ!」
「は……?」
なんか、すげえ声がしたんだけど。