87.明日だ
「ただ……しかしながらあなたは否定しますが、実際に出世したことは事実です」
クソ医者は足を組んで、ふうと息を吐く。
まあ咄嗟に否定してしまったが、俺たちが実際に出世したのは事実だ。
国家からも勇者として認められ、今はある種特別な立ち位置にいる。
「これから様々なことが起こるでしょう。それはもう、今までの場所からじゃ見えなかったものも勇者になった今は見えてくると思います」
「忠告か?」
「忠告ではありません。念のためですよ」
クソ医者は微笑みながら答える。
「これから何かと苦労するかと思いますが、色々と頑張ってください。私としても応援していますよ」
「だってよ。エリサ、ユイ」
「急に話振らないでよ!」
「びっくりするじゃないですか!」
「そりゃ俺たちの話なんだから振るだろ」
彼女たちはと言うと、相変わらずいつも通りである。
とはいえ、勇者になった今は色々と変わってしまったところもあるが。
もちろんいい意味で。
「まあ覚悟はできてるよ。何も怖くない!」
「ですです!」
「はは。それは良いことだ」
俺なんて魔王から連絡が来たってだけでビビっている節があるのに。
若い子はすごいな。
適応能力がオッサンとは段違いだ。
「素晴らしいことです。して、魔王との面会はいつなんですか?」
「ああ。明日だよ」