表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/127

78.戦闘

「お前の正義とオレの正義、どちらが正しいのか決着を付けよう」


 そう言った刹那、こちら側に向かって風が吹き荒れる。


「っ……!」


 闇色の風だった。すぐに視界は黒に閉ざされ、ただ吹き飛ばされないように体のバランスを取ることしかできない。


 別になんてこともない風ではあるのだが、視界が奪われた以上下手に動くのは危険だ。


 今は防御の姿勢を維持しつつ――。


「当たれ」


 構えた瞬間のことだった。


 何かが弾ける音が聞こえたかと思うと、気がつく頃には目の前に球体があった。


「なんだこれ――」


 脳が理解をする前に、球体が一気に俺へと加速する。


 防御の姿勢を取っていたが、その球体は遠慮なく突っ込んできた。


 腕で受け止めるが、あまりの威力に直撃した瞬間に爆風が吹き荒れる。


「カイル!!」


「カイルさん!!」


 衝撃で周囲に立ちこめていた闇色の風は消え去り、視界がクリアになった。


 しかしながら、そんなことよりも俺は相手の攻撃を受け止めた反動で腕に痛みを覚えていた。


「ふう……少し痛かったぜ」


 額から汗が滲む。


 これがヴォルガンの力……なのか。


 正直、想像以上のものだ。


「すごいな。さすがはカイルだよ。しかしそうか。お前には耐えられるか」


「ははは……褒めても何も出ねえぞ……!」


 俺のステータスは人間を逸脱している。


 どんな攻撃すらも大抵は平気だ。


 けれども、久々に痛みを感じた。


 少なくとも……可能性として相手のステータスも俺と近しいもの、と考えることができる。


「クソが……! どう考えてもエリサたちが危ないじゃねえか!」


 俺と同等ということは、普通に考えてエリサたちでは限界がある。


 彼女たちは強い。


 だが、それと同時に普通の人間なのだ。


 咄嗟に体を動かし、エリサたちの方向へと走る。


「やっぱりだ!」


 案の定、球体は俺だけではなくエリサやユイの方にも飛んで行っていた。


 二人は防御態勢に入っているが、あれに当たってしまったら最悪の事態にもなり得る。


 俺は剣を投げ、ユイへと直進していた球体を破壊する。


「よっとっ……!」


「大丈夫!?」


 そして、エリサへと進んでいた球体を身を挺して受け止めた。


 轟音が響き渡り、体に衝撃が走る。


 嘆息しながら汗を拭い、ゆらりと立ち上がる。


「問題ない! 注意しろ、あいつは平気で殺しに来るぞ!」


 当たり前のことだ。


 しかし……久々にこんな殺意を向けられた。


 俺は汚れた衣服をパンと叩き、ヴォルガンの方を見据える。


 拳を構え、息を吸い込んだ。


「お前……卑怯なことすんなよ。女の子を狙うなんて真似、未来の英雄がするなんて思えねえなぁ」


 歯を噛みしめ、叫ぶ。


 目の前にいる敵――ヴォルガンはふむと考えるような素振りを見せ。


「確かにそうかもしれないな。女を直接いたぶるのは主人公らしくはないかもしれない」


 そう言って奴はにやりと笑う。


「ならばオレは女に攻撃はしない。しかし、あくまで『直接は』だ」


 何やら口を動かしたかと思うと、影がこちらに伸びてくる。


 影は魔物へと変化し、二人の前に立ちはだかった。


「また壁かよ……!」


 先程までエリサに届いていた手は、見えない壁によって阻まれた。


 壁の先では、魔物と相対している二人の姿が見える。


「さて、さっきの攻撃はなかなかに自信があったのだがな」


 言いながら奴は詠唱を口ずさみ、答える。


「やはりオレはこちらの方が向いている」


 数多の魔法陣が床に浮かび上がったかと思うと、魔族たちが召喚された。


「ここは自分の得意分野に甘えるべきだ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ