7.俺が元いたパーティが解散……?
「こういう外への出張は初めてだなぁ!」
「ですね! わたしたち、ずっと王都付近で活動していましたから!」
「そうなのか。それじゃあ、今回はドキドキだな」
馬車で移動し、中継地点先の宿の食堂で俺たちは会話をしていた。
彼女たちはどうやら、今回のような依頼は初めてらしい。
ともあれ、Cランクパーティに遠くへの依頼を任せるかと言われれば多分しないので当然だろうか。
「うん! ドキドキ!」
「そうなのです!」
「はは。楽しそうでいいこった」
彼女たちを見ていると、少し昔が懐かしく思える。
俺が十年前に参加していたパーティの初期の初期。
まだDランクパーティくらいの時だっただろうか。
こうやって、仲間たちと和気あいあいと話をしていたものだ。
まあ、すぐに仲間たちは成長していって、こんな感じの雰囲気は消えちまったんだけど。
「そういえば、カイルさんって大昔パーティに所属されていましたよね?」
「ん、ああ。そんなことも知っているのか」
「ええ! わたし、カイルさんの大ファンですから」
考えていたことが見透かされていたような感じがして、少し驚いてしまう。
しかし、俺のファンってのはすごいな。
本当に何でも知っている。
「聞いた話によれば、すぐに抜けちゃったらしいですけど、何かあったんですか?」
「違う違う。抜けたんじゃなくて追放されちまったんだ」
「追放!? カイルさんが!?」
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃないさ。なんせ俺はクソ弱かったからな」
まあ、追放に不満がないかって言われたらあるけどよ。
確かにあの頃の俺は弱かった。
「パーティでも裏方として活躍されていたって聞いてましたよ?」
「え、そんな情報も出てんの?」
「はい。ギルドの人に聞きました」
俺が裏方でこそこそとやっていたことなんて、誰にもバレていないはずだったんだけど。
ギルドの職員ってことは、どっかで見られていたのか?
やっぱり隠し通すってのは難しいな。
「だからあのパーティは解散することになったんですね……納得です」
「解散……? 一体どういうことだ?」
「そのままですよ。カイルさんが加入していたパーティは、カイルさんが抜けてしばらくした頃に解散しました。原因は、パーティがまともに機能しなくなったからだとか」
「う、嘘だろ?」
あいつらは確か、公爵からの高額な依頼で王都から公爵領に拠点を移したことを覚えている。
そこから順風満帆に進んでいたと思っていたのだが、解散していたのか?
「ギルドからも、カイルさんが抜けたから解散することになったって評価になってますよ?」
「俺が抜けたから……ないない。そりゃ何かの間違いだ」
確かに俺も多少は貢献していたと思うが、抜けたから解散ってレベルじゃなかったと思う。
「俺はただ普通に仕事をしていただけだしな」
「……カイルさんの普通ねぇ。エリサはどう思います?」
「……多分普通以上のことしてたよ絶対」
「ですよねぇ」
「うんうん」
「ないと思うけどなぁ。さ、それよりも飯を食おうぜ。明日はリエトン伯爵領だ。準備しとかないと、どっかでミスるぞ」
「はーい!」
「もちろんです! パクパクです!」
「食え食え! オッサンの奢りなんだから遠慮すんな!」
「よっしゃー!」
「パクパクです!」
ふぅ。
にしても、俺が参加していたパーティが解散か。
世の中不思議なこともあるもんだな。
今頃、あいつは何をしているんだろうか。
俺を追放した、あのリーダーは。
ま、考えても仕方ないか。
どっかで上手いことしてるだろう。