69.鍵穴
「二人は俺の背後を追う形で、可能な限りの支援を頼む。俺は邪魔な魔物は全部処理していく」
「分かりました!」
「了解!」
森の中を走りながら、襲いかかってくる魔物をワンパンしていく。
一応、念のために二人にも戦って貰っているが……まあ問題なさそうだ。
「オラっ!!」
特殊個体が現れないため、かなり楽だ。
もちろんヴォルガンに誘導されている可能性があると言われると、あまり喜べない部分がある……が。
何より進むことが大切だから、ひとまずは良しとする。
「ぜー……! 走りっぱなしはなかなかキツいね……!」
「バフがなかったら……ぶっ倒れてたかもしれないです……」
「無理はすんなよ。ヤバそうだったらいつでも休憩するからな」
「問題ないよ!」
「大丈夫です!」
「そういうと思った」
少し苦笑してしまう。
やっぱり彼女たちにはなんとなく安心感がある。
「さて、問題はヴォルガンはどうやって俺たちのことを出迎えてくれるか――」
言おうとした瞬間のことだった。
咄嗟に二人の手を握って、木陰に飛び込む。
「なあユイ。地下洞窟の入り口って、あそこで間違いないか」
「……間違いないです。でも、あれって……」
「なにあれ……空間が、歪んでる」
俺たちの目の前には、洞窟の入り口。
ではなかった。
入り口は大きく歪み、変な光に包まれていた。
明らかに触れてはいけないものだ。
「ちょっと待ってろ」
そう言って、足下に転がっていた石を握る。
ぐっと構え、捻れた空間に向かって石を投げた。
刹那、歪な音とともに石が削れ去った。
「あらら……」
これはあれだ。
本当に触っちゃだめなタイプのあれだ。
「あんま異空間って想像できなかったけど、こんな感じなのか」
イリエさんが言っていた、異空間という単語。
なんとなくは理解していたけど、見たことはなかった。
今回初めての邂逅だったのだが、まさかこんなにも恐ろしいものだったとは。
「これじゃあ誰も近づけないわね」
「ですね」
「しっかり、防犯対策はしているわけだ」
嘆息しながら、腰に手を当てる。
「どうするの?」
「どうしますか?」
二人がこちらに尋ねてきた。
そうだった。
彼女たちは知らなかったな。
俺はイリエさんから貰った宝石を取り出して見せた。
「これがあれば、ヴォルガンがいる異空間に入れるはずなんだ」
「この宝石で?」
「本当ですか?」
二人は信じられないといった様子だった。
あの異空間を見るまでは自信があったが、俺も若干大丈夫か不安な部分もある。
が、やってみるしかない。
「エリサたちは離れててくれ。ちょっとやってみる」
「ええ! 大丈夫!?」
「無茶はしないでくださいね!?」
「大丈夫大丈夫」
言って、俺は歪んだ空間に近づく。
へへ……すげえ。ちょっとでも力を抜けば、吸い込まれちまいそうだ。
嫌な汗をかきながら歩き、閉ざされた入り口の前に立つ。
「んで、どうすれば行けるんだ――」
疑問に思いながら宝石に触れた刹那――。
キラリと宝石が輝き、一つのカギへと変化した。
そして、歪んだ空間が更に歪み、果てには小さな鍵穴を形成してみせた。
「……マジか」
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