66.力比べ
「お前と俺の剣、どっちが強いか力比べでもしようじゃないか」
自分が持っている剣はやはり、相手と比較すると小さくて仕方がない。
こんなちっぽけな剣じゃあ、相手の剣と比較するとやっぱり格好が悪い気もする。
けれど、そんな格好の悪い剣で立ち向かうってのが燃える。
俺は漫画をよく読むが、特に好きな少年漫画はそんな展開が多い。
オッサン、少し興奮しちゃってるぜ。
「おらっ!」
大剣と短剣がぶつかり合う。
衝撃波が走り、木々は大きく揺れ、土煙が中に舞う。
耳をつんざくような音が轟き、普通の剣なら簡単に折れていた状況だろうが。
「無傷……か!」
俺の剣はヒビ一つ入っていなかった。
やはりバフは成功していたらしい。
剣を両手で握り、相手へと体重をかける。
「吹き飛べ……!」
相手は自分より何倍も体格がいい。
並大抵の力じゃ、普通に押し負ける。
けれど、俺は押し負けない。
なぜなら、強いオッサンだからだ。
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛――!?』
ケンタウルスは大きくバランスを崩し、足を後ろに退く。
その瞬間を見逃さなかった。
思い切り、剣を振るう。
ただそれだけのことだが、それだけのことが効果的だった。
相手はどうすることもできずに瓦解し、地面を転がった。
しかし強力な魔物というだけあって、隙は少ない。
自分のピンチを察して、すぐさま俺に向かって剣を投げようとする。
正面からやりあっても勝てないと判断したからだろう。
だからこそ、卑怯な真似で俺に勝とうとしているわけだ。
面白い。
魔物とはいえ、レベルが高い。
「んなもん俺は読めているっつうの」
だが無意味だ。
俺は剣を構え、飛んできた大剣を叩き斬る。
ナイフレベルの短剣が簡単に大剣を斬り落とした。
もしもこれが闘技場で、多くの観客が見ていたら熱狂の嵐だっただろう。
「斬撃弱点であってくれよ!!」
ぐっと足に力を込めて、地面を蹴る。
一気に距離を詰め、そして一閃。
確かな感触。
ふうと息を吐き、振り返ると魔物の討伐は成功していた。
「よし……」
汗を拭い、拳を握りしめる。
一時の勝利を喜びつつ、しかしながら俺は疑問に思う。
「しかし、なんだったんだ。俺を引き込もうとしてきた声は」
改めて考えると奇妙である。
それにあの声がした瞬間に魔物が出てきた。
それも特殊個体がだ。
「嫌な予感がするな。もしかしなくても……バレている、かもな」
俺たちが動いているのを、ヴォルガンは把握している。
その可能性は多いにある。
とどのつまり、相手は俺たちが攻めてきていることを知っているわけだ。
「面倒な戦いになりそうだな。少なくとも、苦戦は強いられるかもしれない」
額に手を当て、俺はため息を吐いた。