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63.休むことも大切だ

 エネル草原は立地上、村や町は存在しない。


 一つくらいあってもおかしくはないと思う人間もいるかもしれないが、本当に存在しないのだ。


 理由としては単純で、何もないからだ。


 人間が住むにはある程度条件がある。


 水や食料、動物や土地。


 全部が必要とは言わないが、どれか一つ欠けているだけで生きづらくなる。


 欠けている土地にはどこにも居場所がなかった人間が集まったりするが、それすらもいない。


 いや、厳密にはある。


 ただ、あるのは強力な魔物だけだ。


「やっぱりエネル草原に本格的に入ると魔物も多くなるな……」


 俺はワンパンで倒した魔物を、嘆息しながら見据える。


 こいつはヴォルガンに操られてはいない。


 普通の魔物だけれど、かなり上位種だ。


「普通の魔物って感じで見てるけど、普通の冒険者じゃ倒せないからね」


「わたしたちはカイルさんにもう慣れましたけどね」


「「ねぇ~」」


 二人が目を見合わせて、声を出す。


 そんなことを言いながらも、二人は二人で魔物を倒しているのだからよく言ったものだ。


「俺はユニークスキルがすごいだけだからな」


 嘆息しながら立ち上がり、エリサたちを見る。


「そんなことを言いながらも、二人は成長したよな」


 尋ねると、二人は不思議そうに小首を傾げる。


「そうかな?」


「そうですか?」


「無自覚か……」


 思わず苦笑してしまう。


 彼女たちが成長したことは嬉しいが、こういうのは自覚してほしいものだけれど。


 まあ、成長したことは素晴らしいことだ。


 俺も純粋に嬉しい。


 二人が目指している地位は強くなければならない。


 手に付いた汚れを払いながら、ユイの方を見る。


「今はどの辺りだ?」


「まだまだ先ですね……やっぱり序盤の序盤で歩くことになってしまったので」


「仕方ないね。今の場所的に一日でたどり着けそう?」


「うーん。目印がないので、はっきりとした場所が分からないのですが一日じゃ厳しいかもしれないですね」


「だって。もちろん寝ずに進むよね?」


 エリサの視線が俺に写る。


 彼女は徹夜で目的地に向かおうとしているらしい。


 そりゃ目的の場所には今すぐに向かわなければならない。


 意思を引き継いだ以上、確実にたどりつかなければならない。


 だが。


「エリサの気持ちは理解している。理解した上でだが、徹夜で向かうのはやめよう」


「どうして……?」


「単純だ。目的を達成するのは大切だが、それを成し遂げるための体調も大切だ。意思を引き継ぐにも、俺たちが死んでしまったら元も子もない」


 これはどんな事柄でも重要なことだ。


 自分の体調をないがしろにしては、決してならない。


「休めそうな場所……は、ないよな」


 とはいえ、ここは危険地帯には変わりない。


 俺は眉間を押さえながら、息を吐く。


「交代制で眠ろう。俺は一人でいいから、俺が寝ている間は二人で対応してくれ」


「分かった!」


「分かりました!」

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