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58.さて

「外なんか見てどうしたの?」


「何か見えますか?」


「いや、なんでもないよ」


 王都の広場に集う馬車たち。


 その一つに、俺たちは乗り込んでいた。


 馬車はゆっくりと動き出し、目的の場所へと動き始める。


「この馬車に、私たちしか乗っていないって不思議だね」


「まあな」


 俺たちが乗っている馬車は宮廷へと向かっている。


 そんな特別な馬車には、俺たちしか乗っていなかった。


 それもそうで、国王様からの直接の呼び出しがあったからだ。


 大事にするにはまだ早いと判断した国王様は、少しでも情報が漏れないように俺たちしか乗せていないってところである。


 馬車も特別製で、かなり声を張り上げないと御者に会話を聞かれることはないだろう。


「ヴォルガン……今、わたしたち人類に被害を与えている根源的存在。魔王軍のせいじゃ……なかったんですね」


「らしい。たった一人でここまでの被害を出せる相手だ。正直、魔王よりもヤバいかもな」


 不可思議な魔物の生成。


 魔族たちの暴動。


 全てが、ヴォルガンの仕業ということだ。


 たった一人でここまでしているのである。


 ただの魔族……という言葉では片づけられないだろう。


 少なくともギアンより遙かに格上。


 世界レベルの聖女がいるように、相手は世界レベルの魔族だろう。


 たった一人で、人類に反逆してくるのだから。


「そんなヤバい存在がいるってなったら、そりゃ国王様も呼び出すだろうな」


 リリット村から帰還後、俺はギルドを通じてイリエさんから聞いたことを国王様に伝えて貰った。


 結果として、呼び出されたわけである。


 もちろんギルドには黙秘が命令され、どの冒険者にも通達されていない。


 俺たちがやるべきこと……ってことになっている。


「不安か?」


「え!?」


「あ、えっと!」


 ふと、彼女たちを見てみるとどこか不安そうな表情を浮かべていた。


 それもそうだろう。


 こんな少女たちが背負うべき問題ではない。


 本来なら、もっと上の人間たちが背負うべきものだ。


 今回の件に関しては、下手をしなくても普通に死ぬ可能性だってある。


 彼女たちの実力は信じているが、しかし同時に不安も拭えない。


 まだ、二人はAランク。


 さらに言えば、少し未熟な点の方が大きい。


 エリサたちが背負うには、少し重すぎる。


 と、オッサンは思うわけだけれど。


「大丈夫! 私、覚悟できてるから!」


「やっぱり怖いですけど……わたしも覚悟はできています」


「ああ。知っているよ」


 彼女たちの覚悟は本物だ。


 しっかりと意思を持って、二人は決めている。


 決して俺に、運命に流されているわけではない。


「そろそろか」


 俺たちは、迫り来る運命と戦う。



 ◆



「久しぶりですねぇ。お三方。少し雰囲気が変わりましたか?」


「相変わらずですねルルーシャさんは。こんな状況でも飄々としている」


「ふふふ。私は世界が誇る聖女なのですから、どういった状況でも余裕を持った姿でいるべきなんですよ」


「それは確かにですね。少しばかり安心しますよ」


 俺はルルーシャさんを先頭に、宮廷内を歩いていた。


 相変わらずルルーシャさんは不思議な雰囲気を漂わせている。


 それが彼女の良いところだ。


 全く掴めないところが、彼女を彼女たらしめているのだろう。


 世界レベルの聖女は、いつだって落ち着きを見せるべきだ。


「しかし……あなたたちは真実に近づきましたか」


「真実……ですか?」


「なになに?」


「真実……?」


 俺たち三人が首を傾げると、ルルーシャさんはくすくすと笑う。


「今まで起きてきた事件の真実。根源にですよぉ。きっと、あなたたちなら近づけると思っていました」


「ああ……それですね」


 すぐに、ヴォルガンのことを言っているのだと理解した。


 けれど、俺たちが真実に近づけると信じていたか。


 そんなに期待されていただなんて思うと、少し恥ずかしいな。


 ……まあ、これも運命だったのだろう。


 全く、俺の物語は三十になって急に取り返すかのように回収し始めるな。


 不思議なものだ。


「ご褒美のキス、しましょうか?」


「あ、ええと! ああ……」


 俺が困っていると、エリサたちが腰を突いてくる。


 どうやらお怒りらしい。


「今はいらないです」


「そうですかぁ。悲しいですねぇ」


 残念がるルルーシャさんであったが、俺もちょっぴり残念であった。


 しかしながら、これ以上話を続けるとエリサたちからの攻撃が更に酷くなる可能性がある。


 それを鑑みると、この話はいったんなかったことにするべきだ。


 というか、ルルーシャさんはオッサンをからかうのが上手いな。


 俺はまんまと乗せられちまう。


「さて」


 ルルーシャさんが、ぱたりと止まった。


 くるりと回って、目の前の大きな扉を見据える。


「行きましょうか」


「はい」


 ルルーシャさんは、こんこんと扉を叩く。


 少ししてから、ゆっくりと扉を開いた。


 レッドカーペットが伸びる床。


 その先には、玉座がある。


 広い空間。


 しかしながら、一人の人物しかいない。


 俺は半ば緊張しながらも、咳払いをして呼吸を整える。


 ゆっくりと顔を上げると、国王様と目が合った。


 国王様は俺を見て。


「待っていた。カイルよ」

第六章開幕!

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