表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/127

45.今すぐに対処しなければならない

 朝。


 目が覚めると、俺は二人の女の子に挟まれていた。


 いや、当然である。


 そりゃ女の子の部屋に上がっているのだから、女の子はいるだろう。


 そして女の子が生活している部屋で暮らすことになったのだから、当然だろう。


 しかしどうしてだろうか。


 こうも犯罪臭がすさまじいのは。


 どんなに足掻いても俺は犯罪者な気がする。


 三十のオッサンが、十代の女の子と。


 これ、下手すれば逮捕だよな。


 新聞には『十代女性の家に上がり込んだロリコン』的な大見出しでまとめられるよな。


「おはよう! いいイチゴ柄だね!」


「似合ってますよ! おはようございます!」


「おう……」


 ともあれイチゴ柄のパジャマを着たオッサンが女の子二人に挟まれた状態で正座し、真剣に唸っている姿は滑稽だろう。


 そもそも何故イチゴ柄なんだ。


 もう少しマシなものがあっただろう。


 冷静になってみれば、色々な感情がわいてくる。


 だが、気にしても仕方がない。


 もう来るところまで来てしまった。


 俺はパンと頬を叩いて、立ち上がる。


「シャワー、浴びてくる」



「いやー……せっかくのカイルと一緒に過ごして初めての朝なのに、ご飯がジャムを塗っただけのパンでごめんね」


「お買い物するの、忘れてましたね……」


「いいんだ。なんだ、昔を思い出すよ」


 俺も昔は質素な生活をしていたっけ。


 なんせ俺はパーティーのお荷物だったわけだ。


 邪魔でしかない俺に払われる賃金は安いものだった。


 いや、まだお金を貰えただけありがたいのかもしれない。


 そんなわけで、昔はパンの耳をかじって生活していた。


 パーティーメンバーは宿を取っていたが、俺は公園のベンチで寝てたりした。


 まあ、今思えば懐かしい思い出だ。


 Sランクになった瞬間に追放されたのも、当然だしな。


「って待てよ。俺たちってまだBランクパーティーだよな?」


「……んぐ、そうだね。まだBランクだよ?」


「そうですが、何かありましたか?」


 俺はふと思い出し、二人に話す。


「俺たちは仮にもSランクの依頼を達成したわけだ。これ……もしかしなくても、ギルドに交渉すればAランクとかには上がるんじゃねえか?」


 そう言うと、エリサたちは顔を見合わせた後。


「「確かに!」」


 と声が重なった。


 普通にありえることだ。


 なんせ自分たちのランクより格上の依頼をクリアしたのである。


 責任者がいたとしても、依頼を達成した事実は残る。


「試しに言ってみるか」


「うん! 言うだけ言ってみようよ!」


「勇者の称号も手に入れて……Sランクにもなれたら、わたしたち最強じゃないですか! 言ってみましょうよ!」


「なかなか強欲だな。だが面白い。オッサンはそういう欲望全開な青少年は大好きだ」


 俺は立ち上がり、ぐっと拳を握る。


「それじゃあ早速ギルドに行くか!」


「うん!」


「行きましょう!」



「あぁ~!! Aランクの昇格をお伝えするの、忘れてました! いや~ギャンブルに夢中になるのも程々にしないとですね!」


「……受付嬢さんよぉ。まあいいよ。よかったな二人とも。俺たち、Aランクパーティーだぞ」


 ギルドに行き、受付嬢さんに事情を聞いてみると、書面では一応Aランクにはなっていたらしい。


 だが、普通に受付嬢さんが俺たちに伝えるのを忘れていたようだ。


 ここは多少なり文句が出てきてもおかしくはないが、別に俺は咎めたりはしない。


 そんな厄介なオッサンにならないよう、俺は気をつけて生きてきた。


「やったー! 私たちAランクだって! 夢のようだね!」


「本当です! まさかここまで来れるとは……カイルさんのおかげですね!」


「ふふん。まあ確かに俺のおかげかもな」


 そう言いながら、俺は二人の肩を叩く。


「これからもっとやらなきゃいけないことが出てくる。んで、責任ももっとのしかかってくる。覚悟はいいな?」


「もちろん!」


「当たり前です!」


「よし。素晴らしい」


 俺はそう言いながら、ふうと息を吐く。


 国王様からも医者からも、今のところは進展はなし。


 ということは、俺たちだけで色々と調べなくちゃいけないってことだ。


 適当に依頼をこなしながら情報でも探るか……?


「よし。それじゃあ――」


 俺が二人にこれからのことを話そうとした瞬間のことだった。


 ギルドの奥が急に騒がしくなる。


 職員たちが仕事をしている場所からだ。


 受付嬢さんも慌ただしい様子の職員に呼ばれ、奥へと消えていく。


「なんだ?」


「急に騒がしくなったね?」


「何かあったんでしょうか……?」


 俺たちは疑問を抱きながら、カウンターの奥を覗き込む。


 聞き耳を立ててみるが、あまりの喧噪で聞き取れない。


「カイルさん!」


 だが、急ぎ足でこちらに戻ってきた受付嬢さんが全てを話してくれた。


「アルド男爵領に属するリリット村にて、魔族の攻撃により死者が多数出たようです! 今ギルドに待機している冒険者で一番頼れるのはあなたたちしかいません! 頼めますか!?」


 アルド男爵領と言えば……かなりの辺境だ。


 そんな場所にどうして魔族が?


 いや、それよりもだ。


 死者が出ているだなんて、本当に最悪な事態である。


 今すぐに対処しなければならない。


「分かりました。すぐ向かいます」


 

更新……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ