表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/127

36.試されている

 物理耐性を持っているから、通常種とは様子が違う。


 そういう単純なものではない。


 まだ、そちらの方が俺は良かった。


『ア゛ア゛ア゛ア゛……』


 なんだあれ。


 五体のオーガは棍棒を持ち、森の中を静かに歩いている。


 歩いているのだが。


 まるで、意識が感じられない。


 ただ無心で、何も考えずに歩いているように見える。


 なんていうか……脳が機能していないみたいだ。


 大げさだったり、少し頭の悪い表現かもしれないが、俺にはそう見えた。


 そして、リエトン伯爵もそう思ったらしい。


「さながら人形だな。目の焦点があっていない」


「不気味……ですね」


 本当に奇妙だった。


 額には、何か紋章のようなものが刻まれている。


 ……あのクソ医者。どういう意図でこの依頼を俺に任せたんだ。


 欲しい素材があるとか言っていたが、今思えば素材の名前なんて聞かされていない。


 ただ教えられているのは、物理耐性を持っていること。


 そして、俺を試すようなことを言っていたこと。


 たっく……これは試されてるって考えた方が良さそうだな。


 クソ医者は何かを知っている。


『ア゛ア゛』


 瞬間、焦点があっていない目が俺たちに向けられる。


「――気づかれたぞッッッ!!」


「やってやる!」


 俺たちは陰から飛び出し、オーガの前に立つ。


 オーガたちはゆらゆらと俺たちのことを様子みしているようだった。


 本当に気味が悪いな。


「まずは私がやろうッッッ!!」


「――リエトン伯爵!?」


 まさかこの状況でリエトン伯爵が動くとは思わなくて、俺は動揺してしまう。


 相手は物理耐性を持っているってのは分かっていることだ。


 なのに、拳だけで挑むのは危険すぎる。


 しかし、今から俺が援護するのは不可能だ。


 今魔法を放てば、リエトン伯爵も巻き込んでしまう。


「はッッッ!!」


 リエトン伯爵の一撃がオーガに当たる。


 空気が振動したのが分かった。


 かなり強力な攻撃だ。


 が、オーガは微動だにしない。


 じっとリエトン伯爵を見下ろした後、棍棒を振るう。


「むッッッ!!」


 咄嗟にリエトン伯爵は防御姿勢を取り、棍棒を腕だけで防ぐ。


 そして、バックステップしながら俺の隣に待避してきた。


「はははッッッ!! 無理かッッッ!! そうかそうかッッッ!!」


 ガハハと笑いながら、リエトン伯爵は腹に手を当てて笑う。


 しばらく笑った後、ふうと息を吐いて俺のことを見てきた。


「これはあまり楽観視できないようだ。カイル、任せた」


「……分かってます」


 クソ医者が俺を試そうとしているのは分かった。


 ならば、俺は全力で応えてやろう。


 その後は、クソ医者が持っている情報を聞き出す。


 俺がやるべきことはこれだ。


「あまり魔法は慣れないんだけど……」


 深呼吸。


 相手を見据え、手のひらを構える。


 簡単な魔法でいい。


 俺のステータスはぶっ壊れている。


 だから、自分ができる全力をぶつけるだけでいい。


「《ファイア》」


 詠唱をすると、火花が手のひらで散る。


 火花は玉となり、収束していく。


 次第に大きな塊となり、俺の目の前には巨大な玉が生まれていた。


「な……カイル……君は、こんな魔法まで……」


 指を弾いた瞬間、巨大な炎の玉がオーガへと直進していく。


 地面をえぐり、空気を熱しながら進んでいく。


 勝負は一瞬だった。


 たとえ、相手は物理耐性を持っているだけのオーガ。


 魔法には弱い。


 俺が瞬きをする頃には、オーガたちの姿は跡形もなかった。


「素材回収は、別にしなくていいか。てか、残ってないしな」


 パチパチと焦げる音がする森の中、俺は手を払う。


「リエトン伯爵。ひとまず帰還しましょう」


「わ、分かった」


 さて、クソ医者は一体何を知っているんだ。


 このオーガたちはなんだったんだ。


 俺は歩きながら、そんなことを考えていた。

さて、これにて第三章完結です!ここまで連載することができたのも、読者の皆様のおかげです!

大きな謎が出てきましたね……!これからどうなるのか、お楽しみに!


また、次章も楽しみ!と思ってくださった読者様はぜひ評価の方していただけると励みになります!


【夜分からのお願いです】


・面白い!

・続きが読みたい!

・更新応援してる!


と、少しでも思ってくださった方は、


【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】


皆様の応援が夜分の原動力になります!

何卒よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ