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【書籍化・コミカライズ】久々に健康診断を受けたら最強ステータスになっていた ~追放されたオッサン冒険者、今更英雄を目指す~  作者: 夜分長文
第一部三章

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33.空を見上げれば

「馬車……自腹だな」


 王都の広場には、馬車が数多く集まる場所がある。


 そこにやってきた俺たちは、リエトン伯爵領へと移動する馬車を探していた。


 前回はギルドに用意してもらったが、今回はギルドからの依頼ではない。


 そのため、馬車は自分たちで手配しなければならなかった。


「完全に忘れてたわ。依頼が終わったらクソ医者に馬車代を請求しよう」


「こんだけお金があるからいいんじゃない!」


「ですです! カイルさんは気にしすぎですよ!」


「俺もさ、こんなことはしたくないよ。でもすまない。俺はあのクソ医者にサービスする意思は微塵もないんだ」


「そんなに嫌い?」


「嫌い」


「どう思ってるのです?」


「死ねばいいんじゃないかなと思ってる」


 そう言うと、二人は顔を見合わせて苦笑する。


 なんだ……俺が変なことを言っているみたいじゃないか。


 でもさ、余命宣告された時もだしさ。


 俺にオーガ討伐を頼む時もさ。


 めっちゃ酷かったじゃん?


 俺はヤバいと思うよあいつ。


 この二人は平気そうだけどさ、当事者は違うんだ。


 彼女たちもきっと分かる時が来る。


「……」


 何かこの子たちが軽い病気したら、あの病院に連れて行こう。


 そうすればきっと、あのクソ医者が『本物』だって理解するはずだ。


「あ! 見つけたよカイル!」


「御者さーん! わたしたち乗ります! 三人です!」


 二人が馬車に駆け寄り、お金を手渡す。


 支払いが終わったのか、こちらに向いて手を振ってきた。


「はいはい」


 俺は彼女たちに促されるまま、馬車に乗り込む。


「ここから二日か。一泊する場所はあるけど、また腰をやりそうだなぁ……」


 座る場所も堅い材質だし、全然オッサンに優しくない。


 想像するだけでため息が漏れる。


 馬車が動き出し、俺はガタガタと揺られる。


「ねえカイル! やっぱり腰、やっちゃいそう?」


「ああ……多分やるな。その時はお前に簡単な処置をしてもらうよ」


 答えると、エリサはふむと考える素振りを見せる。


「それじゃあさ! 私が膝枕してあげるから、寝転がったらいいじゃん!」


「は、はあ!?」


「何を言ってるんですかエリサさん!?」


 しかし、エリサは満面の笑みで後ろを見る。


「客席も二列あるし、お客さんは私たちだけ。ユイには申し訳ないけど、私たちは後ろの席に移動するね!」


「はぁ!? いや、ちょっと!?」


「エリサさん!? ええ!?」


 俺はエリサに手を引かれるまま、後ろの席に移動させられる。


 そして、俺は空を見上げることになった。


 頭には、柔らかい足が当たっている。


 いや、訂正しよう。


 俺は正しくは空を見ていない。


 見えるのは……胸だ。


 エリサって意外と胸があったんだなぁ……。


「って、オッサンに何してんだよお前! 本当に!」


「いいじゃん! これで腰はやらないでしょ?」


「いや、でもなぁ!」


「……嫌?」


 俺が起き上がり、彼女に説明しようとしていると、涙目でこちらを見てくる。


 そんな顔されると……俺、これ以上言えないじゃん。


「ユイ……お前は構わないか」


「……帰りはわたしがしてもいいのであれば」


「お前も何を言っているんだ?」


 オッサンを膝枕して何が楽しいんだ。


「ってことだから! カイルは私の膝枕でのんびりしましょうねぇ!」


「うぐっ!?」


 エリサに頭を思い切り掴まれ、強制的に膝枕の体勢になる。


 見えるのは……胸。


「……寝よう」


 オッサンは全てを諦めて寝ることにした。

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