表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/127

31.都合のいいときだけクソ医者を認めるなよ

「どうですか? やばいでしょう?」



 クソ医者が指を立てる。



「俺の魔法……壊れちゃってる……」



「あなたが壊れているんですよ」



 クソ医者が腰に手を当てて微笑を浮かべる。



「俺が壊れているのか……」



「やはり人権は適用されないってことになりますね」



 クソ医者がこちらに向かってダブルピースをしてくる。



「なあお前、嘗めてる? ふざけてるよね?」



「いやいや、ふざけてなんかいないですよ。ちょっとポーズを取っているだけです」



「それをふざけているって世間的に言うと思うんだけど、お前の中にある常識ぶっ壊れているんじゃないのか?」



「クソ医者ですから」



「都合のいいときだけクソ医者を認めるなよ」



「それが人間ですから」



「お前みたいなやつが人間判定になるなら、俺は人間じゃなくていいわ」



「なら人権は必要ないですね」



「それは別だ」



 そう言いながら、俺は大きく息を吐く。



「さっきの魔法、すごすぎるわよ!」



「岩が消滅しましたよ!?」



「ああ。俺もびっくりだ」



 嘆息しながらも、興奮している二人に笑顔を向ける。


 ともあれ、俺は一応魔法が扱えることが分かった。


 クソ医者にはムカつくが、感謝してもいいだろう。


 手に付いた汚れを払いながら、クソ医者を一瞥する。



「んで、報酬はなんだ?」



 もちろん俺はタダで依頼をこなすなんてことはしない。


 依頼というものは、報酬金があってこそ責任が発生するものだ。


 その辺りははっきりとしておきたい。



「もちろんあります。お金ではないのですが、豪華な特典を考えていますよ」



「ちなみに特典って?」



 尋ねると、クソ医者は満面の笑みで答える。



「診察料全額無料キャンペーンを――」



「いらねえ。帰るぞお前ら」



「冗談ですよ。そんなすぐ帰らないでくださいって」



「俺たちは暇じゃねえんだよ。な、二人とも」



「そうです! カイルさんを診察してくれるのは感謝していますが、わたしたちも立派な冒険者ですから!」



「そうだよ! そこら辺勘違いされると困るなぁ!



「すみませんって。冗談ですよ冗談」



 慌てながら、クソ医者が訂正してくる。


 全く、仕方がない人だ。



「本当の特典というのは、あなたたちに様々な情報を提供することです。こう見えて、私は様々な患者さんを相手していますし、色々と人脈がありますから、マル秘情報もたくさん入ってくるんですよ」



 そう言いながら、クソ医者は指を立てる。



「国王様が悩んでいることも知っています。大方、あなたは国王様の依頼をこなした実力者ですから、何か大きな頼み事でもされたんじゃないですか」



「……それは」



「当たりですね」



 なんだかな。


 このクソ医者は勘だけはいい。



「悪くないとは思いますが、いかがでしょうか」



「……分かった。引き受ける。二人もそれでいいか?」



「私は大丈夫! 目標のためなら頑張ろう!」



「わたしもです!」



「だそうだ。んじゃ、オーガ特殊個体の討伐は引き受ける。ちなみに、場所はどこなんだ」



「場所はリエトン伯爵領付近の森ですね」



「ああ……リエトン伯爵の近くか」



「挨拶に行きます?」



「余裕があったらな。なんせ……前回の遠征で俺の腰が破壊されたし」



 挨拶したい気持ちもあるが、前みたいに腰が破壊されている可能性がある。


 申し訳ないが、余裕があったらにしよう。



「挨拶と言えばだ。俺たち、まだギルドに依頼を達成したこと報告してないから、そっち優先しないと」



「あ、そうだったね! 完全に忘れてたよ!」



「早く行かないとですね!」



「おいおい! 待てって!」



 そう言いながら、二人は急ぎ足で町の方へと走っていく。


 一人――いや、一人とクソ医者のみ残された草原にて、俺は大きく息を吐いた。



「充実しているようで何よりです」



「……そりゃどうも」



 言いながら、彼女たちの背中を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ