3.ようこそ!
「体はいたって健康体……俺のユニークスキルがヤバい、か」
まさか俺のスキルが今更覚醒するなんてな。
いや、今更すぎるわ。
だから歳を重ねて、衰えを感じるどころか力が有り余っていたんだな。
人生、不思議なことがあるもんだ。
俺はギルドの扉を開き、依頼ボードにどんな物が貼り付けられているか確認しに行く。
その時のことだ。
「カイル! 今度こそ私たちのパーティに入ってもらうわよ!」
「お、お願いします!」
「……お前らか」
魔法使いのエリサに、弓使いのユイ。
この子たちはオッサンである俺に、何故かよく付きまとっていた。
俺が強いからって理由でパーティに誘う人間は多かったが、長い間断ってきたから今はこの二人だけである。
失礼かもしれないが、もの好きだなぁと思っていた。
なんせ、『いつ死ぬか分からないから』なんて言っているオッサンに絡み続けるなんて俺なら無理だ。
自分で言うのもなんだが、普通に面倒くさい。
「いいぞ。俺、お前らのパーティに入るわ。一応確認だけど……オッサンでもいいの?」
聞き返すと、急に二人が黙り込む。
え、やっぱりオッサンはダメだったかな。
「う、嘘……本当に入ってくれるの?」
「本当に言ってるんですか……?」
「ああ。前から言っていた死ぬかもしれない可能性がなくなったからな」
「うわぁぁぁぁぁぁあ!! ありがとう! 私、カイルのファンだったから本当に嬉しいよ!」
「これ、夢じゃないですよね! 夢だったらわたしを殴ってください!」
「え、ええ……」
何故か大はしゃぎする二人を見ながら、俺は苦笑するしかなかった。
俺のファンだなんて、本当にもの好きな子たちだなぁ。
「ねね! 早速依頼こなしに行こうよ!
「カイルさんの実力、この目で見てみたいです!」
「ああ……そんな面白いものじゃないけど、それでもいいのなら」
そう言って、俺はゴブリン退治に駆り出された。
依頼書にかかれていた場所までやってきた俺は、崖下にいるゴブリンを見据える。
「よっと」
「私がカイルにバフをかけるわね――え?」
「わたし、弓でアシストします――え?」
俺は崖から飛び降り、すっと拳を引く。
『ア?』
『アア?』
「ひゅううう……」
そして、着地すると同時に勢いを乗せたまま地面を思い切り殴った。
瞬間、爆発音が響き渡る。
地面は強く抉れ、衝撃波が周囲に轟いた。
近場にいたターゲットであるゴブリンは言葉を発することなく、跡形もなく消し飛ぶ。
俺は地面に刺さった拳を引き抜き、ふうと息を吐いた。
「あ、ええと……カイル」
「カイルさん……」
「あ、ごめん。依頼書にはゴブリンの殲滅だけって書いてたから、消し飛ばしちゃったけど大丈夫だよね?」
なんか深刻そうな表情で聞いてきたので、思わず聞き返してしまった。
もしかしたら、依頼書とは違うことをやらかしたかもしれないと思ったからだ。
若い子に実力を見せるなんて、なかなかなかったから少し張り切りすぎたかもしれない。
「すごすぎるよ!! なにあれ化け物!?」
「直接見たのは初めてです!! カイルさんのファンとして追っかけ続けてきてよかった……感激です……!」
「そっか。変なことしてないようでよかったわ」
何か下手なことをしたのかと思って、俺不安になっちゃったよ。
どうやら何事もないようで安心した。
「これからいっぱい頑張ろうね! 本当に入ってくれてありがとう! ええと……私たちCランクパーティだけど……」
「あまり強いパーティじゃないんですが……入ってくれてわたし、嬉しいです!」
「大丈夫大丈夫。パーティランクなんて、二人とも若いんだからすぐ上がるさ」
いやー、しかしソロ活動ばっかしてたから迷惑かけないようにしないとな。
ファンたちの期待に裏切らないよう、頑張るか。
「改めまして、ようこそ私たちのパーティ『英雄の証』へ!」