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29.ふざけてるよねこの医者

「お前ら、ここは宿じゃないだろ」



「そうだね」



「ユイ、ここは病院って場所だと思うんだけど」



「そうですね」



「なぁ、お前ら怒ってる?」



「怒ってないよ」



「怒ってないです」



「絶対怒ってるよな!? なんで俺をわざわざ病院まで連れてきてんだよ! 解呪は成功したって言ってたろが!」



 俺は二人に向かって、泣きそうになりながら叫ぶ。


 確かに心の中で医者には感謝した。


 だからといって病院に行きたいわけではない。


 俺は変わらず病院は嫌いだし、これから先も嫌いだというのは変わらない。



「ほら、一応念のために検査してもらった方がいいと思うですよ。本当に解呪したのか分からないじゃないですか」



「そうそう。もしかしたらあの人はカイルにキスがしたかっただけかもしれないんだから」



「お、お前ら……」



 怖い。


 この二人の目が死んでいる。


 やっぱり不味かったかな。


 オッサンが美人な女性にデレデレするのは不味かったのかな。



「キスは……ダメだったのか?」



「アウトだね」



「たとえ世界レベルの聖女だとしても、カイルさんにキスをするのは神に反逆するレベルでダメですね」



「そんなに?」



「「そんなに」」



「え、ええ……」



 俺が困惑していると、二人が背中を押してくる。



「入ろうね」



「入りましょうね」



 あまりの圧に、俺は断ることもできずに病院の門をくぐった。





「おや。まだ生きてたんですね」



「まだ一週間も経ってねえよクソ――ちょっとやべえ医者」



「少しだけ私に対する言い方がマシになりましたね。何かいいことありました?」



「…………」



「ルルーシャさんのお面の下は美人らしいですね」



「…………」



「図星ですか。まあよかったです。無事解呪してもらえたようで」



 そう言いながら、医者は診断書に目を通す。



「確かに解呪はされてますね。うん、問題ないと思いますよ」



「はぁ……よかったです。だってよ二人とも、俺は大丈夫だそうだ」



「よかったですね! ちなみにカイルさんはルルーシャさんとキスをしましたよ!」



「それも熱いキスをしてたよね! うん、腹立つ!」



「おや……キスをしたのですか。いい歳したオッサンなのに幸せ者ですね」



「おい! 誰が言って良いつった! というかお前にはオッサンって言われたくねえよ!」



「若い女の子限定ですか? 拗らせてますね」



「……もう帰る。早く宿に戻ろう」



 普通にこんな場所にいたら精神が擦り減る。


 というか、この中に俺の味方はいない。


 さっさと帰りたい。



「あ、待ってください。少しお願いしたいことがあるんですよ」



「……はあ。俺、忙しいんですけど」



「いいじゃないですか。実質、私は命の恩人なんですからお願いは聞いておくべきですよ」



 確かにその通りではある。


 不満はあるが、一応聞いてみるか。


 俺は椅子に座り直して、医者の方を見る。



「実はどうしても手に入れたい素材があるのですが、それがとても希少で。かなり危険なもので、依頼を出してもこなせる冒険者がいないんですよ」



 そう言いながら、医者はニコリと笑う。



「オーガを五体ほど狩ってきてください」



「え?」



「はい?」



「よく笑顔で頼めますね、それ」



「それも物理耐性を持っている個体です」



「え……?」



「はい……?」



「よく平然と頼めますね、それ」



 オーガの個体ランクはS。


 普通なら軍隊が動くレベルの難易度である。


 それも物理耐性を持っていると来た。


 やっぱりこの医者、頭おかしいんじゃねえの?

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