27.ちゅ
「なんと……まさか生け捕りに成功するとはな……!」
「素晴らしいですねぇ。これは想像以上の収穫ですよぉ」
俺たちは宮廷に帰還し、国王様に成果を報告していた。
ギアンの討伐が目的であったが、彼には罪を償う責任がある。
そして、国のためにも俺は生け捕りすることにした。
少し何か言われるかもしれないと身構えていたが、国王様たちは歓喜しているようだった。
「ちっ……! クソみたいな人間に捕獲されるなんて……屈辱だ」
「一応拘束魔法はかけていますが、ルルーシャさんからもお願いします」
確かに彼は現状動けないが、俺たちはまだまだ未熟。
拘束魔法も永続ではない。
しかしルルーシャさんなら違うだろう。
なんせ彼女は世界レベルの聖女さんなんだ。
「任せてねぇ。はい、拘束」
ルルーシャさんは手を突き出し、魔法陣を展開する。
すぐに効果は発揮し、明らかに強力な拘束魔法が付与されていた。
「さてと。それじゃあカイルさんにはお礼をしないとですねぇ」
「お礼って……ああ。呪いのことですか」
「ですですぅ。ってあれ? もしかして忘れちゃってました?」
「ははは……ちょっとギアンに必死で……」
「まあまあ。素晴らしいことじゃないですかぁ。ともあれ、自分のことも大切にしてくださいね」
そう言いながら、ルルーシャさんは俺に近づいてくる。
目の前に立って、俺のことをお面越しにじっと見てきた。
「一体どうやって解呪するんだろうね!」
「気になりますよね!」
エリサとユイの騒ぎ声が聞こえてくる。
全く、二人は少し落ち着いたら良いのに。
別に解呪ってのも普通のことをするだけだろうし。
普通に魔法陣を展開して、普通に呪いを解く。
ただそれだけだろう。
「よいしょ」
突然、ルルーシャさんがお面を外す。
翡翠色の綺麗な瞳が俺を覗き込んでくる。
というか……素顔、めちゃくちゃ美人だ。
でも、どうしてお面なんて外す必要があったんだ。
「ちゅ」
「……え?」
「は!?」
「ええええ!?」
何が起こったのか、俺には理解できなかった。
唇に柔らかい物が……え? 一体俺に何が起きたんだ?
「解呪成功です。これで呪いは解けましたよぉ」
「は、はあ」
「キスした!! ルルーシャさんがカイルにキスした!!」
「ええええ!? ちょっと待って下さい! それはダメですよ! 不健全です!!」
ああ。やっぱり俺、キスされたんだ。
キス……キス……。
キス!?
「ルルーシャさん!? 一体どうして俺にキスなんてことを!?」
俺は動揺しながら、ルルーシャさんに尋ねる。
「特に意味はありません。強いて言うなら、私の好みでしたからサービスをしてあげようかなぁと」
「は、はあ!?」
俺がルルーシャさんの好み!?
こんなオッサンがか!?
こんなオッサンでもいいのか!?
「俺は……俺は……」
「あらぁ」
頭の思考回路が完全にショートしたのが、なんとなく分かった。
オッサンには、ちょっと過激すぎるって。
キスに熱い想いを抱いた紳士たちは評価を入れましょう