22.国王との面会
「にしても、カイルさんはお強いんですよねぇ。なんでも、一撃で魔物を葬り去るとか」
「ええと、俺が強いわけじゃなくてユニークスキルが強いんです。俺は別にただのオッサンですよ」
「そんな謙遜しないでくださいよぉ。普通の冒険者なら三十で引退するのに、カイルさんは歳を取るたびに全盛期を塗り替えていく。素晴らしいですねぇ」
「いやいや……」
俺は別にすごくはない。
すごいのは俺が持つスキルで、俺に価値があるわけではない。
けれど、そう言ってくれるのは嬉しい。
この女性が誰かは知らないが、褒めの言葉はありがたく受け取っておく。
「ここが王の間。少し待ってくださいねぇ」
言いながら、お面の女性は軽くドアをノックする。
返事はないが、何か少し頷くとこちらに顔を向けた。
「大丈夫らしいですよぉ」
「え、返事ありました?」
「ありませんでしたが、問題ありませんよぉ」
「ええ……」
「だ、大丈夫なの?」
「大丈夫なんですか」
困惑していると、二人が耳打ちしてくる。
「いや、俺には判別できねえよ……」
もしかしたら彼女には何か感じるものがあったのかもしれないし。
俺は本当に何もいえない。
「準備はいいですかぁ? いいですねぇ」
言って、俺たちの返事も聞かずにお面の女性は扉を開く。
ギギギという擦れる音とともに、扉がゆっくりと動く。
綺羅びやかな内装に、部屋を照らす炎がゆらゆらと揺らめいていた。
「ようこそ。まさか、お主がこの依頼を受けるとはな」
玉座の上に座っている人物が俺を見て、薄く笑う。
「お、お主って俺を知っているんですか?」
「知っておる。お主のような人間を、国家が把握していないわけがないだろう」
「え、ええ……」
俺は頬をかきながら、苦笑を浮かべる。
「国王様に認知されてるの!?」
「すごくないですか!?」
「お前らは少し落ち着こうな……」
にしても、どうして国王様が俺のことを認知しているんだ。
俺は別にそこまで有名じゃないと思うんだけど。
「お主は高い能力を持っているのに、地位を求めない。幾度となく、お主に勇者になるよう勧めるようギルドに依頼していたが、全て断った。そんな人物を忘れるわけがないだろう」
「……?」
そんなことあったけ?
いや、待て。なんか今思い出せばあった気がする。
なんか受付嬢さんに勇者になりませんかとか言われてた気がする。
あの時は冗談で言っているのかなと思って、適当に流したような……。
「しかし……我は見てみたいものがある」
「それは?」
俺が聞いてみると、国王様は深く頷く。
「お主の実力をこの目で見てみたいのだ。お主の実力を見るのは、依頼を受けてくれた今しかないと思っている」
そう言いながら、国王は指を弾く。
すると、奥から武器と装備を身に着けた兵士たちが何十人も現れた。
ちょっと待て。俺、どうなんの?
「二人は危ないからこちらに来ましょうねぇ~」
「え、ちょっと!?」
「待ってください!?」
お面の女性に引きつられ、二人は遠くの方に避難していく。
「この兵士たちを倒してみろ。やれるな?」
「……マジでやるんですかって聞いても、俺は退けない理由があるしな」
俺は拳をぐっと握り、国王様を見る。
「それじゃあ、後で俺の話も聞いてもらっていいですか?」
「もちろんだ」
「それならやりましょう」
数多くの兵士を見て、ぐっと構えた。