20.宮廷へ
「本当にやるの?」
「マジでやるんですか?」
ギルド内にある酒場にて、俺たちは椅子に座って会話をしていた。
机の上には、先程受付嬢さんから貰った依頼書がある。
覚悟が決まったら、また再度お伝えくださいと言われた。
「やるしかないだろ。なんせ俺、やらないと死ぬんだから」
「それは……そうだけど」
「一週間も持たずに死ぬかもしれませんよ?」
「まあ、かもしれない」
なんせ相手は魔王軍幹部。
最近巷で話題によく上がっている魔族のボス、その一人である。
そんなやつを相手にするってことは、もちろん同時に死の危険も伴ってくる。
「一週間しか俺にはないから、別に一日早く死のうが関係ないさ」
俺はそう言いながら、依頼書を指で叩く。
「一応、二人を連れていける。でも、知っている通り死ぬ可能性もあるわけだ。だから無理して付いてこなくていい」
これは心の底から思っていることだ。
彼女たちはまだ若い。
それに、余命一週間を宣告されている俺と違ってまだまだ未来がある。
そんな彼女たちを巻き込んで、命の危機に追いやるのは本心ではない。
「どうする?」
聞くと、二人は口をつぐむ。
少し悩みながらも、ふうと深呼吸をして依頼書を指差した。
「私は行くよ。こう見えてカイルを思っている気持ちは誰にも負けないからね」
「わたしもです。役立たずになるかもしれませんが、カイルさんが連れて行ってくれるのなら、わたしは行きたいです」
「そっか。オッサン嬉しいよ」
俺は依頼書を握って立ち上がる。
「オッサンのために若い子たちが頑張るって言ってるんだ。俺は幸せ者だ」
そう言いながら、受付嬢の元へと歩く。
依頼書をカウンターの上に置き、受付嬢さんに受ける旨を伝えた。
「受けるんですね。分かりました、それでは受理させていただきます」
受付嬢さんは依頼書にサインを書いて、近くにあった本を開く。
パラパラとめくりながら、俺の方を見る。
「私はカイル様の目的は聞きません。ただ、あのカイル様が進んで国家関係の依頼を受けるということは、大方何がしたいのかくらいは察することができます」
言って、受付嬢さんはとあるページで止まる。
ページを少し眺めた後、端からビリっと破った。
そして、そのページを俺に渡してくる。
「これは……?」
「国王様との面会書です。この依頼を受ける方に向けて渡すよう、国家から指示を受けてましたから」
国王様との面会書。
つまりこれがあれば、この国を治めている者に会うことができるわけだ。
「きっと宮廷では本当にこの依頼を受けるに相応しいか、色々と試されるかと思います。まあ、カイルさんにそんな心配をするのは杞憂かもしれませんが」
そもそも、普通の人はこんな依頼受けることはできませんしねと付け加えて。
「受けるんですよね、カイルさん」
「もちろんです。受けますよ、どんなことでもやります」
「分かりました。それでは、期待しております!」
言って、受付嬢は後ろに控えている二人にも視線を送る。
「お二人さんも頑張ってくださいね?」
「は、はい!」
「ももも、もちろんです!」
相変わらず二人は緊張しているようだ。
ま、そりゃそうだよな。
「んじゃ、行こうか。宮廷に」