19.世界レベル
「にしても、これからどうするのよ」
「余命宣告もされちゃって……わたし心配です」
俺たちは病院から出て、王都の広場にあるベンチに座っていた。
空は晴天。
晴れ渡っている空を見上げながら、俺は息を吐いた。
「聖女にたどりつくしかねえだろ。俺たちにできるのはよ」
正直、余命宣告されたのは未だに動揺している。
これからどうしようだとか、色々と脳裏に過るものがある。
だが、どうしようもない。
今更後悔したところで、どうしようもないのだから。
それに、後悔と言ったが俺は別に後悔なんてしていない。
あの時、魔族を撃退したのは間違いじゃなかったと思う。
「にしても聖女ね。世界レベルってそこまで有名なレベルになると、俺は俺で心当たりがあるんだよな」
というか、多分ほとんどの人が心当たりがあると思う。
なんせ、めちゃくちゃ有名なのだから。
だが、皆諦める。
「どうやったら辿り着けるだろう」
そもそも、彼女と接触できないからだ。
世界レベルともなれば、国家が絡んでくる。
国家が絡んできたら、一般人じゃどうしようもない。
「……難しい話よ。多分だけど、カイルが考えてるのってあの人だよね?」
「わたしたちの国、レイピア王国の専属聖女。ルルーシャさんですよね?」
「ああ。その人だ」
俺たちの国には、世界レベルで有名な聖女がいた。
名前はルルーシャ。
噂では、どんな呪いでも治癒ができるということだ。
「まあ、ひとまずギルドに戻ろう。情報収集するついでに、ギルドに依頼を達成したことを報告して、さっさとBランクに昇格しようぜ」
◆
「依頼完了ですね。おめでとうございます! これで皆さんはBランクパーティですよ!」
「ひとまずクリアね!」
「昇格! 嬉しいことですね!」
「やったな二人とも。まあ、状況が状況だけどさ」
俺は二人の頭を撫でてやる。
すると、二人は嬉しそうに口角をあげた。
「これでさらに多くの依頼を受けることができるようになりましたよ。頑張ってくださいね!」
そう言えば、ギルドはランクが上がれば上がるほど受けることができる依頼が増えるようになる。
彼女たちはBランクになったから、ある程度の依頼なら受けることができるだろう。
「……って待てよ」
俺はふと冷静になり、受付嬢さんに尋ねる。
「俺ってそう言えばソロではSランクでしたよね?」
受付嬢さんは小首を傾げて、
「はい、そうですよ! それがどうされました?」
俺は食い気味に顔をカウンターに出して、尋ねてみる。
Sランク。つまりはギルドで最高ランクなのだ。
しかもここは王都最大手。
数多くの依頼があるはずだ。
「もしかして、レイピア王国関係の依頼ってあったりします?」
「……? ありますが……急にどうされました?」
「受けます! 俺、ちょっとそれ受けたいです!」
「え、ええ!? でも急にどうされました? パーティは……」
「もちろんパーティメンバーは俺が保護します。確か、責任者がいれば格上の依頼でも受注可能でしたよね!?」
「確かにそうですが……つまり依頼を受けるんですか?」
「受けます!」
俺は声を大にして叫ぶ。
これは受けるしかねえ。
少しでも王国に接近しなければならない。
「え!? 私たちSランクの依頼受けるの!?」
「マジですか!?」
二人は確かに危ないかもしれないが、絶対俺が守る。
それに、俺は俺で死ぬかもしれないのだ。
死ぬ気でやらないといけない。
しかし、受付嬢さんは苦笑する。
「でも……馬鹿みたいに難易度の高い依頼しかないですよ」
そう言いながら、依頼者を見せてきた。
そこには依頼主の欄に『国王』と書かれていた。
ターゲットは『魔王軍幹部』。