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16.二度目の病院

「行きたくねえ……行きたくねえよ……」



「今更何を言ってるの? 行くって言ってたじゃん!」



「そうですよ! 別に病院くらい大丈夫ですって!」



 俺は病院前で駄々をこねていた。


 齢三十にして、少女たちに呆れられていました。


 だってよ、やっぱり病院は怖いんだもん。


 何されるか分からないんだぜ。


 医者なんてよ、平気で刃物を持って皮膚どころか肉も切り裂くんだぜ。


 怖くないわけないじゃん。


 それにここの病院は平気で余命五ヶ月とか宣告してくるんだ。


 よくよく考えてみたら頭おかしい。


 あの老医者も信用できねえ!



「いいから! 病院行くよ!」



「マジで嫌だ」



「今体どうなってると思います? 生まれた子鹿みたいになってますよ?」



「だってよ、ユイ。腰が」



「だからその腰をどうにかしに行くんですよ」



「だってよ……だってよ……」



 俺が弱音を吐いていると、急に腰を叩かれる。



「あがっ!?」



 あまりの衝撃に吐きそうになった。


 俺はガクガクになりながら腰を触り、叩いてきた方向を見る。



「行きましょう?」



「はい」



「うっわ……ユイを怒らせた」



 ユイが静かに俺を睨めつけていた。


 瞳には明らかな敵意というか、殺意がこもっていた。


 多分、人を殺す目をしていたと思う。


 俺は何度も頷き、病院の扉を開く。


 そしてカウンターにて受付を済ませて、近くの椅子に寝転んだ。


 座ろうとしたが、腰が痛すぎて無理だったのだ。 看護師さんに許可を貰い、ありがたく寝転がっている。



「エリサ、漫画持ってきてくれないか」



「いいわよ」



 両隣にユイとエリサがいる。


 が、怖くてユイには頼めなかった。


 エリサは快諾してくれて、俺に漫画を届けてくれる。



「……って震えてるじゃない」



「平常運転だ」



「いつも病院では漫画持ちながら震えてるの?」



「……平常運転だ」



「別にいいけどね。私はあなたのファンってのは変わらないし。ね、ユイ?」



「その通りです。こんなあなたもわたしたちは愛しますよ」



「エリサ……ユイ……!」



 俺は半ば感動しながら、二人に手を伸ばそうとする。


 瞬間。



「余命一ヶ月なんて――嘘だぁぁぁぁ!!」



 泣き叫ぶ少年が、廊下を駆け抜けていった。


 嘘だろ。また余命宣告されてるやついんのかよ。 やっぱこの病院ヤバいって。



「カイルさーん。お入りくださいー」



 脳裏によぎる文字は『死』。



「呼ばれてるわよ?」



「立てますか?」



「か、肩を貸してくれ」



 俺はどうにか立ち上がり、診察室に入る。



 そして医者の前に座った。

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