15.腰の終わり
「君の戦いは見事だったッッッ! 少しだが、依頼とは別での報酬金だッッッ!」
無事、筋肉に挟まれながら伯爵邸まで戻った俺たちはリエトン伯爵に麻袋を渡される。
中を覗いてみると、大量の金貨が入っていた。
「え、これ報酬金とは別なんですか? さすがにこれは、貰いすぎて怖いんですけど……」
「君の筋肉に渡しているんだッッッ! 遠慮するなッッッ!」
「筋肉……」
「いいじゃない! 貰おうよ!」
「お金! マネー!」
俺は少し困りながらも、受け取ることにした。
彼女たちの生活もあるし、貰っておいて損することはないだろう。
「飯は食っていくかッッッ!? それとも帰るかッッッ!?」
「ああー、食べて帰りたいところなんですけど」
俺は腰を押さえながら苦笑する。
「腰が……痛くて……」
生憎と、俺の腰は限界が来ていた。
エリサの魔法によって痛みを抑えてもらっていたのだが、さすがに効かなくなってきた。
これ以上無理をすると、いよいよ入院まで行くかもしれない。
それだけは嫌だ。
二十四時間病院でいるなんて死んでも嫌だ。
「それじゃあ俺たちは王都に戻ります。また何かあったら言ってください」
「ああッッッ! また会おう友人よッッッ!」
♦
馬車内にて、俺は揺られながら腰をさすっていた。
「本当に暑苦しい人だったなぁ」
「上半身裸の男の人、海以外で初めて見たわ……」
「なかなかに刺激的でしたね……」
「刺激的というか、なんというか」
俺は嘆息しながら、ぐっと伸びをする。
瞬間のことだ。
――ピキッ!
「あ」
腰が悲鳴を上げた。
心のうちにある何かが弾け飛んだ。
「俺……ごめん。もう無理だ」
「カイル!?」
「大丈夫ですか!?」
「だめ」
視界が涙でぼやける。
今、この瞬間に俺の腰が終わった。
「これヤバいですね。ギルドに寄る前に病院に行きますか」
「そうね……とりあえずギルド近くの病院でいいかな?」
「でもあそこかなり小さいですけど……まあ緊急ですし、場所は選べないですね」
小さな病院でギルド近く。
ああ、俺が彼女たちと仲間になる前。
ユニークスキル【晩成】が発覚した場所だ。
ああ……嫌だな。病院。
でも……。
「あ、ああ……」
この状態で、病院に行かないって選択肢はないよねぇ……。