14.剣で貫け
「こいつ一体狩るのに、君はどれくらい掛かりそうだッッッ!?」
俺たちは鉱山の中を走りながら、ワームから距離を取っていた。
こちらに気がついたワームは必死で背中を追いかけてきている。
「こんなにも巨大なワームとは戦ったことないんで、ちょっと分からないですね」
ただ、あえて言うなら。
「多く見積もって一分でしょうか」
相手がどれほどのものか分からないのだ。
ここは余分に取っておくのが吉だろう。
「……君は本気で言っているのかね?」
「え?」
急にリエトン伯爵が静かに聞いてきた物なので、俺は少し困惑してしまう。
変なことでも言っただろうか。
「否、気に入ったッッッ! ならば私は全力で支援しようッッッ!」
そう言うと、リエトン伯爵は立ち止まって踵を返す。
そして、ワームに向かって手を叩いた。
いや、ただ手を叩くのではない。
正面に向かって衝撃波を放ったのだ。
ワームは目を持っていない。
聴覚だけを頼りに動いている。
しかし今の衝撃波によって、聴覚が一時的に潰れた。
いわば一瞬にして暗闇を生成されたのと同じだ。
ワームの動きが鈍くなり、俺たちを追いかけようとする動きが止んだ。
やるなら今だ。
「ありがとうございます!」
「構わんさッッッ!」
俺はリエトン伯爵を追い越し、一気にワームへと急接近する。
拳をぐっと握りしめ、そのままワームの頭へと重い一撃をねじ込む。
「クソっ! 図体がでかいせいで一発じゃ無理か!」
一部分は弾き飛ばしたのだが、相手は未だ動いている。
なんなら、今の一撃で少し動きが活発化してきたようにも見える。
命の危機を感じたから、身を呈してでも俺から逃げようってことか。
「させねえ!」
俺は咄嗟の判断で剣を引き抜く。
「ぬッッッ! 筋肉を裏切った……いや違うッッッ!」
「結局は筋肉パワーだよ!」
俺は力任せに、剣をワームに向かって放り投げる。
作戦はこうだ。
筋力だけで剣を投げて、相手の内部を貫通させる!
「行けええ!」
ワームに向かって放たれた剣は、俺の想像通りの挙動をしてくれた。
内部を貫通していき、最果てに突き刺さった音が響く。
同時に、ワームの動きが完全に停止した。
任務完了……っと。
「ブラボーッッッ!!」
「うごっ!?」
突然体が浮き上がったと思うと、何か暑苦しいものに挟まれる。
あ、これ覚えてる。
胸筋だ。
ピクピク動いてるよ。
「ぜぇぜぇ……やっと追いついた……って上半身裸のリエトン伯爵がカイルに抱きついてる!?」
「あれヤバくないですか!? あれいいんですか!?」
女性陣の悲鳴が聞こえてくる。
俺はどうにか胸筋から腕を出してみせて、
「助けてくれ……」
と微かに声を上げた。