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123.無理すんなババア

「海まで大体一時間半じゃな! うーん……この行き先に向かう途中が一番ワクワクするんじゃよ!」


「確かにな。一番ワクワクが高まっていく瞬間だろう」


 俺も昔、どこかへ行く時に乗っていた馬車内で興奮しっぱなしだったのを覚えている。もちろん貴族の出でもないから、馬車内には他の人もいたので怒られていたが。懐かしい記憶だ。


「けどけど! ダークハートってかなり忙しいはずなのによく来られたね!」


 エリサが笑いながら尋ねる。


「うむ! 妾、カイルに会いたいがために頑張って許可を貰ったのじゃ! まあお主たちとは違って宿には行けないが、妾はカイルの水着姿を見られるなら問題ないの!」


 そう言って、俺の体をまじまじと見てくる。ひえ……なにこの子怖いんだけど。


「ふふん。カイルさんはわたしにぞっこんですから、そう簡単にはダークハートさんには揺らぎませんよ」


「へへ! 私も負けてないよ! なんたってカイルは私の膝枕を経験済みだからね!」


「のじゃ!? お主カイルに膝枕をしたのか!」


「そうだよ! もうカイルったらデレデレでね~!」


 いや、俺は決してデレデレにはなっていない。どちらかと言えば犯罪的な状況にヒヤヒヤしていた。あと大きかった。それだけだ。


「ふーん! ならば妾が寝取るだけじゃな! 来いカイル!」


「は――っ!?」


 ダークハートが意味わからんことを言ったかと思えば、かなりの力で俺の頭を掴み、そのまま自分の膝に振り下ろされた。首が逝くかと思い、俺はもう泣きそうになっていた。


 ああ~……膝枕されてる。


「どうじゃ妾の膝枕は! 最高じゃろう!」


「五百七歳の熟女はなぁ……」


「あん? お主ぶっ殺すぞ? 妾はロリじゃ」


「無理すんなババア」


「うっわ! そんなこと言うんじゃなお主は! でも……罵られるのも興奮するのじゃ……えへへ……」


 さすがは齢五百七のババアだ。レベルが違う。気持ち悪い。


「ねと……寝取られ……脳が破壊される……! カイル! この後私の膝枕もしっかり堪能してもらうからね!」


「うう……脳が破壊されて何も見えない……カイルさん……! わたしを見捨てないで……」


 ああ~……なんか今日は荒れそうだな。俺も覚悟をしなければならないかもしれない。下手すれば殺される可能性もあるなという考えが脳内を巡り、俺は息を吐いた。



 結局、俺は今ユイの膝で寝ている。ダークハート、エリサと膝枕をしていき、今はユイの番が回ってきた感じだ。なんかずっとユイが俺のことを朗らかな表情で見てきているので視線を逸らすので忙しい。さっき寝取られで脳が破壊されたとかよく分からないことを言っていたが、多分それが原因なのだろう。


 膝枕でたらい回しにされてどれくらいが経っただろうか。俺はもう意識を悠久の彼方へ放棄してしまっていたので、時間感覚が曖昧だ。それに、ずっと寝転んでいるから窓の外も見えない。


「わぁ~! 見えてきた!」


 エリサがどこか興奮気味に外を見ているので、俺は腰を上げて外に目を移す。


「海ですよカイルさん! 久々に見ました!」


「おお~綺麗だなぁ」


 少し離れた先に、海が見えている。水面が日の光に反射して、キラキラと輝いている姿はまるで星のようにも思えた。


 魔界の海と言っても、人間界と別に変わっているわけではない。水は水色だし、景色だって首都から離れているせいか田舎町が広がっている。なんなら人間界に近いかもしれない。


「ここが魔界の中で妾が特にお気に入りのシーサイドタウンじゃ。と言っても、観光客が多い人気な場所……と言うよりかは、知る人ぞ知る穴場の町といった感じじゃな」


「へぇ~そんな場所知ってるんだな。さすがはこの国を統べる魔王だ」


「あまり褒めるでない。妾、褒められるのは大好きなんじゃ。特にカイルに褒められるとデレデレになってしまう」


「お前……なんか今日は積極艇だな……」


「今日こそ本気を出すべきじゃろう? カイルを落とす良いチャンスじゃからな!」


 なんだか頭が痛くなるな。女性に積極的に来て貰うのは嫌じゃないのだが……こいつ五百七歳のババアだからな……。熟しているとかいう次元じゃないぞ。人間ならもうあれだ。腐るどころか土に還っている。


「私も負けないよ! ふふふ……カイルは私がおとぉーす!」


「それはどうでしょうね……! エリサやダークハートさんより、知的なわたしの方がカイルさんは好きだと思いますよ!」


「なんじゃてめえ?」


「戦争か? 私、ガキだって言われた?」


「いいですよ戦争。わたし、こう見えて争い事は得意なんです」


 俺を置いて女性陣がバチバチとしている。しかも争っている内容が、俺っていうのが色々とあれだ。しかし残念ながら、何度も言っているが俺は年上のお姉さんが好きなんだ。もっと言うなら、二十代前半のお姉さんがいい。え? 俺より年上じゃないかって? 違うんだよ。男はいつ何時も心にイマジナリーお姉さんを求めているんだよ。


 つまり、エリサやユイは範疇になく、ダークハートに関しては論外だ。


「……面倒くさそうだ」


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