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119.クソ医者からの電話

『ナイオスさんですか? 多分カイルさんたちもいるかと思うのですが、声の方は聞こえていますでしょうか』


「え……クソ医者? どうなってんだそれ」


 恐らく魔道具の一つだと思うのだが、こんな小型の通話型魔道具なんて見たことがない。これも魔界の技術力なのだろうが……驚きだな。


「ああ、人間界の町医者さんですか。カイルたちにも声は聞こえていますよ」


『そうですか。リエトン伯爵からカイルさんがナイオスさんの家にいると聞いていたのでご連絡させていただきました』


 クソ医者は丁寧な口調で言った後、すぐに声色を変えて感心したような声を出す。


『しかしダークハートさんからこの魔道具を借りたのですが、魔界の技術力はすさまじいですね。こんなにも薄型で、しかも持ち歩きのできる通話型魔道具が存在しているだなんて。私も魔道具には触れる機会が多いのですが、これが人間界でも使われるようになると思うと感慨深いですね』


 そう言い終えて、クソ医者はこほんと一つ咳払いをする。


「ところでカイルさん。どうやら魔界と人間界の境界で発生していた問題が解決したようです。安全確認も全て完了したので、人間界側に戻る許可が下りましたので、一度戻ってきていただければなと」


「そうなのか! なら……俺たちは一度首都に戻るよ。楽しかったよナイオス」


 俺が頭を下げると、エリサたちも倣うように頭を下げる。


「とても美味しかったよ! ごちそうさま!」


「お菓子最高でした!」


「いいんだよ。僕も君たちと話すことができて楽しかった。感謝するよ」


 ナイオスは立ち上がり、パンと手を叩く。


「それじゃあお別れだ。可能なら首都まで案内したいところなんだけど、僕は少しやることがあってね。簡単なお見送りしかできないことをまず謝らせてくれ」


「いいんだ。ナイオスにはよくしてもらったからな、気にするな」


「そうだよ!」


「ですです!」


「ふふ。君たちが優しくて助かるよ」


 俺たちも立ち上がり、ぐっと伸びをした後ナイオスに手を振る。


「じゃあな。また会おう」


「ええ。またいつか」



「ふふん! しかし私たちのファンができたって事実はめでたいことですなぁ!」


 首都へと向かう道中、エリサが嬉しげに鼻を鳴らす。


「全く……確かに嬉しいことではあるが……お前はもう少し落ち着いたらどうだ?」


「ええ!? もしかしてお説教タイム!?」


「いやな――」


「カイルが怒る! 怖いよユイ! このまま私たちめちゃくちゃにされるんじゃないのかな!? 怒ったオッサン、ひ弱で華奢で美しい少女二人……きゃーとんでもないことが起こっちゃうよー!」


「自分だけ盛り過ぎだろ。なんだよひ弱で華奢で美しいって」


「だって私可愛いから仕方ないよね! ねえユイ!」


「え、ええ……?」


「やめろよユイが困ってるだろ思春期脳内ピンクガールが」


「誰が思春期脳内ピンクガールだ! もっと良い感じに言ってよ!」


 早口でエリサがそんなことを言うものだから、俺たち二人は困惑してしまっていた。これが十代思春期女子の考えることか……オッサン怖くて泣いちゃいそうだ。


「まあいいや。ともあれ、人間界に戻った後は少し休憩できたらいいなぁ」


 俺は空を眺めながら、そんなことをぼやく。実際問題、ここ最近の俺たちはずっと仕事ばかりしていた。そりゃ勇者だから当然とも言えるが、普段よりも激動だったのは間違いない。


「それは確かに……せっかくならのんびりしたいかも……」


「ですねぇ……休暇とか……貰えないでしょうかねぇ……」


 休暇、か。もしも貰えたらどこか普段行かない場所とかに行ってみたいな。とはいえ、今からそんな期待をしてしまうと、貰えなかった時のショックが大きくなるから期待しすぎてもあれだが。


「んじゃあ期待しつつ、戻るとするか」


「そうだね! 期待しつつ! 儚い思いを抱きつつ!」


「ですね! 流れ星見かけたら祈っておくくらいの儚さで行きましょう!」


 なんてことを言いながら、俺たちは首都に戻った。


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