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118.ヴォルガンの死に場所

「ありがとうカイル。もう一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな」


「遠慮しないでいくらでも聞いてくれ。お茶代になるかどうかは分からないが、俺もお礼はしたいしな」


 言うと、ナイオスは笑顔を作る。


「それじゃ――ヴォルガンは一体どこで死んだんだい?」


「え? あ、ああ……」


 彼の質問に、俺は狼狽してしまう。まさかそんなことを聞かれるだなんて思ってもいなかったからだ。


「どうして……そんなことを聞くんだ? もちろん……答えることはできるが……意図を知りたい」


「僕の知的好奇心が知りたいって言っているんだ。別に悪用したりなんてしないよ。少しでも口外してしまうと墓荒らしが来ちゃうだろうからね。僕もそれは本望じゃない」


 もちろん、ナイオスのことは信用している。それに、ヴォルガンの死に場所を知ったからって何かできるわけでもないし、彼はそんなことを考えていないだろう。それに、一応ナイオスは魔界の貴族だ。立場もあるだろうし、そんなことはしないだろう。


「……だが、さすがに……な」


 ただ、万が一のことがあったら困る。大っぴらにしていることなら別に構わないだろうが、これに関しては国家も秘密にしていることだ。


「……嫌かい?」


 不安そうな目を俺にナイオスが向けてくる。彼が興味本位で聞いているのは分かっているのだが……しかし……。


「そんなに悩むこと? いいじゃん教えても」


 俺が悩んでいると、エリサが肩を叩いてきた。……確かにそこまで悩むことではない……のか。


「ユイはどう思う?」


「うーん……そうですね……特に大きな問題にはならないかと思いますが……」


 ユイもユイで少し迷ってしまっていると言った感じである。エリサはむむむと唸った後、俺の肩を叩く。


「全く! 二人は考えすぎだよ! せっかく私たちのファンが知りたがっているんだから、ここはしっかりファンサをしておかないとね!」


 そう言って、エリサは指をピンと立ててにやりと笑う。


「エネル草原だよ! 詳しい場所は……秘密だけどね!」


「おいおい……」


 ともあれ、エネル草原単体だと詳細なんて分からないだろうし、別に構わないか。万が一場所が分かったとしても異空間に入ることはできないだろうし。


「エネル草原……あんな場所だったのか。ふふふ……僕の知識が高まったような気がするよ! ありがとう!」


「まあ……これは秘密な」


「ああ! 約束するさ!」


 全く……エリサはテンションが上がると暴走気味になるのは今後注意した方がいいかもしれないな。元気なのはいいことだけれど……もっとオッサンとしては落ち着いて欲しい感があります。


「君と出会えて本当に良かったよ。僕の知識を更に深めることができた」


「ははは……勉強熱心なんだな」


「別に熱心なわけではないよ。なんていうのかな、知らないことがあると、僕はなんだか怖くなっちゃうんだ」


 怖くなる……か。


「それって未知の物を見たりすると怖がっちゃう生き物の性質的な感じなのか?」


 言うと、ナイオスは顎に手を当てて悩む。


「そうだね……言葉にするのは難しいね。たとえば……○○のパラドックス……といった具合の問題は数多くあるけれど。その証明や解説を見ていると、僕はすごく怖くなるんだ。自分の知らない不可解な現象が怖いってことだと思うのだけれど……うーん、ごめんね。あまり言葉にできないや」


 彼が苦笑を呈すると、ユイがどこか納得のいったような表情を浮かべる。


「なるほど……少し理解できた気がします」


「今ので分かったのユイ!?」


「いえ……もちろんナイオスさんの全てが分かったわけではないのですが、わたしも本を読んでいるとそんなことがあった気がするなって思って」


「すっげー! ユイってやっぱり頭いいんだね!」


 エリサが目を輝かせながらユイを見ている。端から見ればエリサの表情が馬鹿っぽくて笑ってしまう。もちろんそんなことを本人に言ってしまうと殺されるので間違っても言えないが。


「ユイさんがそう言ってくれて僕も嬉しいよ。なんとなくでも、誰かが自分の気持ちを分かってくれるのって嬉しいことだからね」


「本当にナイオスは知的だな。俺なんて馬鹿だから尊敬しちゃうよ」


「僕は君のことを頭のいい人間だと思っているし尊敬しているよ。カイルは謙遜しすぎだよ」


「ははは……謙遜しているわけじゃないんだが……でもありがとうな」


 俺はどこか照れてしまって恥ずかしい気持ちになっていた。オッサンは自分を落とすのは得意だが褒められるのはあまり得意じゃないんだ。


「ところでなんだけど――」


 ナイオスが何かを言いかけた瞬間のことだった。


 ――プルプル!


 何か変な音が周囲に響いた。警報音にも聞こえたそれに、俺たちは半ば警戒状態になっていたのだが、ナイオスは落ち着いた様子で自分の胸ポケットに手を伸ばす。


 ポケットから分厚い板のようなものを取り出したかと思えば、聞き覚えのある声が響いてきた。


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