11.圧倒的筋肉ッッッ!
「え――あれは」
「《視界封鎖》、安心してユイ。これで私たちは何も見えなくなったわ」
二人は速攻、対策をしたようだった。
ユイとエリサは自分の視界を奪い、アレを見えなくしたようだ。
「どうしたのかねッッッ! 急に魔法を使うなんて筋肉が不調なのかねッッッ!」
うわー……大胸筋がピクピク動いてる。
あれ動かせる人久しぶりに見たわ。
「ええと、失礼を承知でお聞きするといいますか、確認なんですけど、リエトン伯爵というのは……」
「私だッッッ! 待っていたぞッッッ!」
「えっと……貴族と言えば魔法とかが長けているイメージが……」
「詠唱かねッッッ!? そうか聞きたいのかッッッ!」
そう言って、机の上に足を乗せて腕にぐっと力を入れる。
「筋肉を愛しッッッ! 筋肉に愛された男ッッッ! リエトンであるッッッ!」
「それは詠唱ではなく……」
「詠唱だッッッ!」
「カイルさん、彼は一体何を言っているのでしょうか?」
「何も言っていないと思う」
「カイル、あれは関わって良い人種なの?」
「悪い人ではないと思う」
兵士たちが言っていた『会ったら分かる』とはこのことだったのか。
うん。確かにこれは会ったら分かる。
ヤバい人だ。
しかし逆に、この人が一人でワームを防いでいたって言われても納得してしまう。
うん、でもどちらにしてもヤバい人だ。
「と、とりあえず上着、着ませんか? 女の子もいるわけですし……」
「それもそうだなッッッ! 失礼したッッッ!」
リエトン伯爵はそう言って、やっと服を着てくれた。
しかしシャツ一枚……ムチムチである。
このムチムチは男にとっても女の子にとっても嬉しくないと思う……。
「とりあえず、視界は確保していいと思うよ」
「《解除》……ああ、ほんとびっくりした」
「なんだったんでしょうか……?」
いや、あれはびっくりする。
俺だってビビった。
女の子が到底耐えられるものとは思えない。
「それで、今回は直接俺に依頼をしてくださってありがとうございます。嬉しい限りですよ」
「うむッッッ! 君の噂は聞いていたからねッッッ! 一度会ってみたかったのだよッッッ!」
……暑苦しい人だな。
「しかしどんな魔物をもワンパンする男だと聞いていたから、さぞかし筋肉に愛された男だと思っていたのだが……細いな」
「あはは……俺がおかしいのはスキルの方なんで……」
というか、あからさまにテンション下がったよ。
本当に筋肉が好きな人なんだな。
「それで、ワームはどこに?」
「ああッッッ! ワームの件だがッッッ!」
そう言って、リエトン伯爵は再度机の上に足を乗せてポーズを取る。
これ、毎回やるのか。
「その前に君と手合わせしたいッッッ! だから直接指名をしたんだッッッ! ハッッッ!」
歯をキラリと見せて、俺の方を指さしてくる。
「え……俺とですか?」
「そうッッッ! 君とだッッッ!」
嘘……俺この人と戦うの?