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104.「「「あ?」」」

 だが俺も負けていない。なんたってこっちはステータスがぶっ壊れているんだよ!


「ぬあああ!? カイル、お主力が強すぎぬか!?」


 ダークハートを無理矢理引き剥がすと、彼女は驚いたような表情を浮かべる。


「妾も力に関しては魔族の中ではかなり自信がある方なのじゃが……マジでお主やばいの」


 しかしやっと彼女は大人しくなって、満面の笑みで俺の前に立つ。


「改めてパーティに参加してくれてありがとうなのじゃ。どうだ、楽しんでおるか」


「ああ。新しい友人もできたし、色々と楽しんでいるよ。まあ、エリサたちは大変そうだがな」


「そうか! それはよかった! じゃが、こうやって見ていると魔族も人間も仲良くできているようじゃな。少し安心してしまう」


 ダークハートは、どこか感慨深い様子で周囲を見ていた。確かにこの会場では、特にトラブルもなく交流はできている。お互いが未知の種族だからか、話のネタには尽きていないようだった。


「言い方は悪いが、この場にはある程度の立場を持った人がほとんどだからな。なかなか争いなんて起こせないさ」


「それはそうじゃ。一般市民に関して言えば、まだまだこれからと言った感じじゃしな」


 一般市民の動向はハッキリとは知らないのだが、一部から不満の声も上がっているとも聞いている。魔族と人間、共存するにはまだまだ時間が掛かりそうなのは確かだ。


「とはいえ、今こうして魔族と人間が話し合うことができているのは喜ぶべきだ。これもダークハートのおかげだな」


 俺はグラスに残ったお酒を飲み干し、そんなことを言う。少なくともダークハートがいなければ、和解という段階には行かなかったはずだ。彼女という異質な存在がいたからである。そりゃまあ異質って言い方もどうかと思うが、それはもう紛れもない事実であろう。


「何を言う! 全てカイルのおかげなのじゃ! カイルがいなければ、妾たちも和解しようだなんて思わなかったぞ」


「キッカケは作ったかもしれないが、判断したのはお前だよ」


「それはまあ……確かに?」


「ダークハートも素晴らしいことをしたんだから、あまり俺だけを褒めすぎるなよ。それにほら、褒められすぎると照れるからさ」


 なんて言うと、ダークハートはくすりと笑う。


「面白いことを言うな。やはり妾がお主と結婚しようとしたのは間違いではなかったようじゃ」


「結婚はしねえよ。お前はもう老婆とかいう次元を超えているからな」


 確かに好きだと言ってくれるのは嬉しいが……さすがに五百七歳はキャパを遙かに超えている。俺にはどうやっても彼女を異性として見ることができない。


「人間換算で言えばババアかもしれぬが、魔族換算で言うとそうでもないかもしれないかもしれないなのじゃ」


「かもしれないが二回入るくらいには自信がない様子だけどな」


 まあ、たとえ魔族換算では若かったとしても……俺は年齢が近い人がいいかな……いやまあ、俺の年齢からして選べるような立場じゃないのだが。はあ……なんか自分で言っていて悲しくなってきた。もう考えるのは辞めよう。


「そういえば、国王様やルルーシャさんとは会ったのか? どこかで挨拶をしたいと思っているんだけど……やっぱ忙しそうかな?」


「もちろん会ったぞ! ただやはり各地の貴族や著名人に挨拶するのに忙しそうじゃな。あまり国王とか聖女辺りは自ら挨拶しない者も多いのじゃが、人間たちは丁寧じゃの」


「なるほどな。国王様の性格とかその辺りは詳しく知らないんだけど、ルルーシャさんを見た感じだと丁寧そうだしな」


 彼女なら自ら進んで挨拶をしに言ったりはするだろう。少し癖の強い人物ではあるが、決して悪い人じゃないからな。


「それで……あ、エリサたちがこっちに向かってきてる」


 話の続きをしようとした瞬間、少し離れた場所からへろへろの状態でこちらに向かってきているエリサたちの姿が見えた。先程まで数多くの魔族に囲まれていたのだが、どうやら解放されたようだな。


 俺が彼女たちに手を振ると、二人はむすっとした表情を浮かべて勢いよくこちらに駆け寄ってきた。


「カイル! どうして助けてくれなかったの!?」


「めちゃくちゃ大変でしたよ!? 死ぬかと思いました!」


 もうめちゃくちゃ起こっている様子である。頬を膨らませて、地団駄を踏んでいる。


「ははは……逃げちゃった」


「逃げるってなに!? もう! ぷんぷんだよぷんぷん!」


「ぷんすかぷんです!」


「ごめんて……」


 怒る二人をなだめようと、俺は平謝りする。と言っても……やはり二人の怒りは収まらない様子だった。


「いーや許さないね! これはもう超絶苦しい罰ゲームをさせないとこの怒りは収まらないよ!」


「ですです! ……エリサさん!」


「うん! あれしかないよね!」


 二人は目を見合わせた後、何度も頷いて俺の方を見てきた。

 え……一体何を考えているんだ。しかし超絶苦しい罰ゲームって……俺は一体どうなるんだ? もしかして死ぬ?


「これはもう私たちにバックハグをするしかないね! 私、それくらいしてくれないと満足しないよ!」


「そうです! ずっとそうしましょうってエリサと話していたのです!」


 一瞬、彼女たちが何を言っているのか理解できず固まってしまった。ば、バックハグってあれだよな? もう名前のまんまのことを言っているんだよな。


 うーん……嫌すぎる。


「お前ら……一体誰にそれを言っているのか理解しているのか? こっちはアラサーのオッサンだぞ……」


 百歩……いや一億歩譲れば俺がまだめちゃくちゃ格好良い美少年だったのなら理解できる。俺だって若い頃は可愛い美少女には憧れだってあったしさ。だが致命的なのは、俺が普通のオッサンであることだ。別にイケオジなんてものじゃない。彼女たちの年齢からすると、本当にオッサンなのだ。


「へいへいお主ら……面白いことを言うのお……! その罰ゲーム、妾にも一枚噛ませてもらえぬか!」


 ダークハートはウキウキな様子で二人に混ざろうとする。


「はぁ?」


「なんですか?」


 しかしエリサたちは明らか敵意マシマシな表情をダークハートに向けていた。なんだか人を殺しそうな目をしている。なにそれオッサン怖いんだけど。


「カイルは私たちのものだよ? 途中からぬけぬけと入ってきたダークハートのものでは決してないのは忘れちゃダメだよ?」


「純愛至上主義のわたしたちにとって、あなたが混ざってきたら脳が腐ります」


「なんだぁてめぇ……妾が混ざったら純愛じゃなくなるというのかぁ?」


 ……なんか雰囲気悪くなってきたな。三人の様子を見ていると、なんだか今にも殴り合いが始まりそうな雰囲気がある。これは……止めた方がよさそうだな。


「あの……三人とも? 何やってんのか分からないけど……そろそろ落ち着いたら……」


「「「あ?」」」


「あ、はい……」


 とりつく島もないといった感じであった。仕方がない、ここはもう俺ではない第三者の力が入ることを信じるしかないだろう。誰でもいい、この状況を止めてくれ。


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