101.興味がないだけだ
正直無視しようかとも思ったが、さすがにそんなことはこの場ではなきない。
ため息をこぼしてしまいそうになりながら、俺は彼らの下へ行くことにした。
「……質問させてくれ。クソ医者、お前はどうしてここにいるんだよ。ああ……それとリエトン伯爵。どうして上半身裸なんですか」
「えっと……もうリエトン伯爵はスルーするけど……クソ医者さんはただの町医者……だよね?」
「ですよね?」
そもそも、クソ医者がこの場にいるのが意味が分からないでいた。
「え? なんか誘われましたから来ただけですよ」
「分かった。もういい。お前はもう底が知れないってことでいいわ」
「なんですか適当ですね」
「興味がないだけだ」
「ふむ、物事に対する興味の消失ですか。少し歳を取り過ぎたんじゃないですか?」
「うっせえ」
クソ医者はもういい。彼はなんやかんやで色々な情報を過去に持っているような話し方をしていた。詳しい事情は知らないが、ともあれ王族や貴族と繋がりを持っていてもおかしくはない。
「で……リエトン伯爵は……」
「うむ! どうやら魔族の皆様方は私の筋肉美が気になって仕方ないようでなッッッ! ここは一肌脱いでおいたわけだッッッ!」
「それで本当に一肌脱いだと……」
「むッッッ!? もしや私を変態か何かだと思っているなッッッ!?」
そう言って、リエトン伯爵が己の筋肉を震わせて少し悲しそうな姿を見せた。というか筋肉で感情を表現できる人間なんて初めて見た。多分リエトン伯爵だけだろう。
「かなり評判は良かったんだぞッッッ! なあそこの魔族さんッッッ!」
リエトン伯爵は先程まで囲っていた魔族を捕まえて目の前に突き出す。少し魔族は困った素振りを見せるが、確かにうんと頷いてリエトン伯爵の筋肉を触った。
「最高……でした……! あの筋肉美には皆さんうっとりしていましたよ!」
「だろうッッッ! そう言っているだろうカイルッッッ!」
「まあ問題にならないのなら俺はいいですけど……」
評判がいいのなら……別に構わないだろう。こんな大きなパーティ会場で上半身裸にさせるのもどうかとは思うが、まあそれも交流のきっかけになるなら問題ない……か。
「とりあえず服……着ようよ?」
「わたしも……そう思います」
「なにッッッ!? 二人はこの美しい筋肉を隠せと言うのかッッッ!?」
「少し……嫌……かな……」
「あの……あまりハッキリとは言いたくないのですが……その……ふ、不快かも……はは」
エリサとユイが微妙な反応を示すと、リエトン伯爵が膝から崩れ落ちた。拳を何度も地面に打ち付け、涙を浮かべている。
「鍛え方が足りなかったか……ならば更に筋肉美を追求し、誰もが見蕩れるような筋肉を目指すことにする……」
悲しそうにリエトンは上着を着て、涙を拭った。
いや……そういうわけではないと思うんだけどな。多分二人は普通に上半身裸のオッサンを見たくないだけだと思うの俺は。しかし伝えるにしても変な方向に曲解されそうだから仕方がないってことにしておこう。