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100/127

100.可能なら見たくなかった

「ここが最上階です。正面の扉の先がパーティ会場ですので、どうぞお楽しみください。それでは私はここで」


「ありがとうございました!」


 俺たちは一礼し、ふうと息を吐く。腕時計を見ると、開催時刻まであと少しと言った感じだった。確かに時間は押しているな。


「よし、せっかくのパーティなんだ。美味い飯でも食おうぜ」


 一応立食形式で食事が用意されていると聞いている。どんなものがあるかは知らないが、美味しいものには変わりないだろう。


「お肉あるかな! めちゃくちゃガッツリ食べたい気分!」


「ですです! パーティで美味しいご飯をたくさん食べるために朝食を抜いてきましたからね!」


「パーティって腹一杯飯を食うものなのか……?」


 俺が少し考えると、二人はぐっと顔を寄せて叫ぶ。


「残ったらもったいないじゃん!」


「そうですよカイルさん! なのでわたしたちがいっぱい食べないと!」


「まあ……それは確かに?」


 パーティとかって、なんか食べた分より残る分の方が多い気がするし……それなら食った方がいいのか? 


 マナー的に考えてどうなんだってところもあるが、詳しいことは俺も知らないんだよな。


 だって俺……最近色々と活動し始めたもんな……。そう考えてみると、なんだか急に不安になってきた。心なしかお腹が痛い気がする。


「……今から欠席ってできるかな」


「何言ってるのカイル!? ご飯食べようよ!?」


「そうですよ!?」


「冗談だって。てか、なんでお前ら一番最初に出てくるのがご飯なんだよ……」


 半ば呆れてしまいながらも、ともあれ時間も時間だ。


 俺は息を整えて扉を開くことにした。


「……わぁ! めっちゃ人がいる!」


「勇者の称号を貰った式典以上の人数ですよ!?」


「ははぁ……相当気合い入っている感じだな。まあ当然と言えるが」


 会場を見渡した感じ、人間と魔族半々と言った感じだろうか。


 多分、集まっているのは各側の王族や貴族、その他偉い人たちなのだろうが、それでもかなりの数がいる。


 そう考えてみると、一般人上がりの俺たちは少し浮いているかもしれないな。


「とりあえず知り合いでも探そうかな。国王様やルルーシャさんは……多分忙しいだろうな。リエトン伯爵辺りならどこかにいるかもしれないな」


 俺がそんなことを言うと、エリサが口を引きつらせる。


「……さすがに上半身裸じゃないよね?」


「……いや、さすがにないだろ。身内の宴会じゃあるまいし……」


 しかも今回のパーティはかなり重要なものだ。


 万が一上半身裸になんてなろうものなら国王様に首を切り落とされるだろう。


 ギロチン刑不可避である。


 まああの人は身長も大きいし、上半身裸じゃなくても探しやすいだろう。


「えっと……カイルさん……あれ……リエトン伯爵じゃないですか?」


 ユイが指さす方向を見てみれば、何かやけに肌色の面積が大きい人が大勢に囲まれていた。


 まさか上半身裸になっている野郎がいるってのか?


 全くリエトン伯爵じゃあるまいし、というかさっきも言ったがリエトン伯爵でもそんなことしないさ。


 呆れるな。


 きっとテンションが上がりすぎた若者か酒を飲み過ぎた愚か者だろう。うん。リエトン伯爵なわけがない。


「おお~すごいですねリエトンさん。肩に巨石が乗っていますね~さすがです。魔族の皆様もとても喜んでいますよ」


 なんだか聞いているだけでイライラする声も聞こえてきた気がする。


 なんかクソ医者に声が似ている気がするが……まああいつがこんなところにいるわけないしな。


 しかもリエトン伯爵といるわけが……。


「カイル……あれ……クソ医者じゃない……?」


「上半身裸のリエトン伯爵といますよ……?」


「嘘を吐くなってお前ら。あまり面白くないぜそれ。クソ医者がいるわけないだろうが。他人の空似だろ」


 さて。俺は今度こそリエトン伯爵を探すかな。


「おや、カイルさんじゃないですか。こちらですよ」


「おッッッ! カイルが来たのかッッッ! こっちだッッッ!」


 俺が踵を返そうとしていると、背後からそんな声が聞こえてきた。


 嫌な汗が額に滲む。


 恐る恐る声がした方向をちゃんと見てみると、そこには上半身裸のリエトン伯爵とクソ医者の姿があった。


 可能なら見たくなかった。


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