1.追放されて早十年、久々に健康診断を受けることにした
「カイル、お前のような無能は必要ないんだよ!」
「そ、そんな! 待ってくれよ! 俺は……!」
十年前、俺はとあるパーティを追放された。
理由は単純で、俺が無能だったからだ。
ステータスは平均以下でろくに戦えもしない。
だから、俺はパーティの汚れ仕事をしていたのだが、そんなのもいつかは不要になる。
パーティがSランクに昇格したと同時に、俺は追放を言い渡された。
「にしても……最近は力が有り余るなぁ」
それ以降、俺はソロで冒険者をしていた。
ソロでの活動当初はEランク程度の依頼をこなしていたのだが、十年後の今はなぜかSランクの依頼も任されるようになっていた。
正直、意味がわからない。
平均的に、冒険者の全盛期は二十五歳程度だと言われている。
それ以降はどんどん衰え、最終的に三十になれば引退していく者が多い。
俺は現在三十代ジャスト。
何故かオーガをワンパンしていた。
「これで依頼はクリアか」
オーガから、頼まれていた素材を剥ぎ取り、俺は帰路につく。
ちなみにオーガのランクはS。
通常のパーティでは到底討伐することのできない魔物である。
そんな魔物を俺はなぜかワンパンしていた。
自分でも意味が分からない。
年を重ねるに連れ、日を重ねるに連れ、俺はどんどん強くなっているような気がした。
「金は稼げてるけど……さすがに怖いなぁ」
自分の力が怖かった。
別に俺は特別な特訓をしているわけでもない。
強いて言えば、一日にスクワットと腕立てを百回している程度である。
それだけでSランクの魔物をワンパンできるようになるのか……?
普通はありえないと思うんだけどな。
「さすがに怖いから健康診断でも受けてみるか。変な呪いとかかけられていたら怖いし」
というわけで、齢三十にして俺は、少年時代ぶりに健康診断を受けることにした。
万が一【一時的に強くなる代わりに、最後には死にます】みたいなデバフを付与されてたら怖い。
前々から呪いかもしれないと思っていたのだ。
最近はパーティに勧誘されることも多かったが、呪いが怖くて『俺、いつ死ぬか分からないから』と断ってきた。
ずっとソロで活動するのも寂しいし、検査をするなら今だと思ったのだ。
そして迎えた健康診断当日。
俺は半ば緊張しながら待合室で待っていた。
全ての検査を終え、今は結果を待っているといった感じである。
どうしよう。これで余命宣告されたら。
正直そんなのされたらオッサン、みっともなく泣いちゃうかもしれない。
「怖いな……ガチで怖いな……」
俺は近場にある漫画を読みながら、貧乏ゆすりが止まらなかった。
漫画の内容なんて全く入ってこない。
そもそも俺は病院が嫌いなんだ。
こんな時間、耐えられるわけがない。
「うおおおお! 余命五ヶ月とか……僕は、僕はどうすればいいんだぁぁぁぁぁ!!」
「おおっ……」
診察室から青年が泣きながら飛び出してきた。
え、余命宣告されたの?
こんな小さな病院で? 嘘でしょ?
貧乏ゆすりが止まらない。
漫画なんて震えでしわくちゃになっていた。
「カイル様ぁ。診察室までお入りください」
「は、はい」
看護師さんが俺を呼ぶ。
怖いが仕方ない。俺は立ち向かわなければならない。
余命宣告されたらその時だ。
貯金はたくさんある。有り金を全て溶かして楽しい旅行でもしよう。
俺は震えながら診察室の扉を開く。
そして、医者の前に座る。
「ええと……カイルさん」
「はい……」
老医者が静かに紙を眺めている。
一体、俺は今から何を言われるのだろうか。
やはり余命宣告か、呪いか。
ツバを飲み込み、医者の声を待つ。
「あなたのステータス、平均値より大幅にオーバーしています。というか、こんなステータス見たことありません。まるで魔族の体を診察した気分ですよ」
「は、はい?」
俺に宣告されたのは、想像とは百八十度違うものだった。
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レベル 不明
攻撃力 15356
防御力 12352
魔法攻撃 13462
魔法防御 16423
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