一、ハズレスキルは使いよう……って俺はクビ!? 七
「いやー、なんとも壮大! 緻密! 魔王様の覚えめでたく大出世間違いなし! 金も力も思いのまま! にっくいですね~この出世頭! まさに大将!」
自分を種族ごと滅ぼそうとする計画を聞かされてなお、タンは大将を盛りあげた。
「それで、私達はサレシカ市まであなた達を案内して終わりですか?」
「他の人間どもと同じように殺されてもいいし、魔王軍に加わってもいいぞ」
ニーの質問に、大将は無造作なほどあっさり答えた。
「今すぐ、ここで決断する必要がありますか?」
「いいや。明日の朝まで待ってやる」
「わかりました」
「よし。話は終わりだ」
大将がぱんぱんと手を叩いた。すぐにドアが開いた。
タン達は、きた道を逆にたどって最初の小屋にもどった。
「タンさん、ありがとうございます。ちゃんと約束を守ってくださって」
すっかり暗くなった室内で、ニーの感謝はよく聞こえた。
「いや、その……それより、わけがわからなさすぎる。魔王だの道案内だの、ニーはどこまで知ってるんだ?」
「まず、嘘をついていたのを謝ります。私がベザ村からきていたのは事実ですが、そこで農家をしていたのではありません。一時的に滞在していただけです。すみません」
怒るつもりにはまったくなれなかった。むしろ賢い。
「じゃあ、どこからきたんだ」
「サレシカ市です。私はサレシカ市の元老院に直属する調査機関の人間です。名前はニーのままで結構です。あ、議員ではありませんから」
「へー、都会っ子なんだな」
人口一万人。この地方でならかなりにぎわっている街だ。なにより、無敵の誉れ高いそびえたつ城壁がいかなる敵をも退けている。元老院は街をしきるが、規模の大きな街ならたいてい存在する。具体的には法律を作ったりよその街と交渉をしたりするのが役目である。元老院の議員はいちおう選挙できまるものの、候補者も投票者も資産か兵役か労役かのいずれかで厳しい制約を満たさないと資格をえられない。タンはまったく論外だった。
「タンさんは?」
「ずっと隅っこの田舎村だよ。ああ、ベザとは関係ないんで」
「そうなんですね……そのタイコ、なにか魔法でもかかっているのでしょうか?」
「い、いや。村の神殿で……神殿っていってもあずまやに小さな石像があるきりの代物でさ……。十五歳のとき、特技をもらうとかなんとかいう儀式で……」
「ああ……そうなんですね」
暗くてニーの表情がわからないのは救いというべきか。
「素敵な贈り物で、うらやましいです」
「なんだよ、嫌味か」
ふだんの劣等感も手伝って、つい恨み節がでた。
「ち、ちがいます。本気でいってるんです!」
思いもよらず、強い口調だった。しばらく二人とも沈黙した。
「俺、武具だの防具だのがよかったよ。そうすりゃ追放されずにすんだだろうし」
感情を交えず、タンはつぶやいた。
「あの……ごめんなさい。あなたの気も知らないで」
「いや、気にしないでくれ。愚痴を垂れてもはじまらん」
「でも、素敵なタイコだと思ったのは事実ですから」
「そりゃあ、助けられるきっかけにもなったんだし」
「それだけじゃないです。なにかこう……刃物や魔法を振りまわすのとはまるでかけはなれた力を感じるんです」
「大げさだろ、いくらなんでも」
「いえ。最初に助けてくださったとき、かすかに不死鳥が浮かんだでしょう?」
「不死鳥? ああ、タイコになにか鳥っぽいのがでてきたな」
「依頼された意匠なんかで職人さんが作ることはあっても、あんな形で目にするのはめったにないことですよ。神殿から授かったのならなおさらです」
「なら、神官が説明すべきだろう」
「たいていの神殿だと、神官は兼業で……失礼ですけどそこまで細かい知識を持っている人は多くないんです」
たしかに、タンのときもそうだった。とおりいっぺんの説明で話はさっさと終わっている。ちなみにその神官の本業はごく平凡な農家だった。




